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月夜の苦悩
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しおりを挟む蝶子の熱が下がり、満月から服を渡される。月夜が持って来た服だ。
「………服、着れるんですか?」
「また体調悪くなったら、調教進まないからね~………だけど、旦那様が来たら裸にしなきゃならないから、脱ぎ着しやすいのじゃないとねぇ………だから、巻きスカートの様なワンピースだけど…………下着は悪いわね……それは……」
「………服が着れるだけ、ありがたいです……着物の方が好きですけど」
「そうねぇ、蝶子は着物の方が似合うわね……浴衣姿も可愛かったし」
服を着るのを手伝ってもらい、ベッドに座ると、満月に食事を食べさせて貰う蝶子。下着が身に着けられないからか、足元からスースーするが文句は言えない。何故、下着が用意出来ないかと言うならば、月夜=隼人が用意したから。百貨店を経営する鬼龍院家の若き後継者隼人は、蝶子の好きそうな、似合いそうな服を部下に指示し用意させたが、下着迄は恥ずかしくて頼めなかったのだ。それが分かる、満月は起点を利かし、誤魔化した。
「このお料理、美味しいですね」
「あら、本当?嬉しいわ……私が作ってるから」
「そうなんですね……お粥も美味しかったけど………松の実も入ってたみたいで、薬膳粥ていうんですか?新月さんが言ってみえましたけど」
「そうそう、新月が育てた漢方で作った粥よ………私の仕事は健康管理だもの………ここの他の娼婦達のご飯も作ってるわよ」
他にも娼婦にさせた女が居た事に驚いたが、彼女達も月夜達が調教しているのだろうか。
「満月さん達は………他の娼婦達の調教もしているんですか?」
「……………してないわ……してるのは蝶子だけ……料理作れる、て言ったら、作れって言われたから私が作ってるだけよ………蝶子がここに来てから私達雇われたから、他の女達は知らないわ」
「………そうなんですね……」
「……………安心した?」
「………え?」
「なんか、ホッとした顔してる」
「…………そうでしたか?」
一瞬、蝶子はホッとした顔をしたのだ。それが満月に目ざとく見つかる。食膳を下げていた気配がしたので、表情等分からないと思っていた。何故、蝶子が安堵したか等、蝶子自身よく分かっていないが、調教が自分にだけ、と言われてホッとしたのなら、誰かに嫉妬している様に思ってしまう。
蝶子は、そんな事あってはならないのだ。破断にはしたものの、まだ蝶子は隼人の許婚で居たいからだった。もう、戻れないとしても。権藤に、純血を奪わたとしても。
「さぁ、指圧するわよ」
「服………着たのに……」
「そのままでいいわよ今日は………服皺になっちゃうけど、皺になったら着替えればいいし」
「…………ありがとうございます」
「始めるわよ」
「はい」
満月は三日月を呼び、背中を任せる。背筋から解されていく凝りは、毎日至福の時だ。熱があった時は、調整は休みにされて、5人から大事にされている様に勘違いさせられ始めている蝶子。もし、目隠しがなければ、その5人が誰か等分かる筈だ。声で分からないのは、蝶子が緊張と恐怖で、蝶子が知る5人と結び付かなかったから。
「スカートの中に手を入れるわね………いつもの太腿のツボよ」
「そ、そこ………変な……感じしますっ……」
「…………そうねぇ、濡れちゃうからねぇ……この後、新月と光月が始まるけど、久々だから疼いちゃうと思うわよ………月夜大変ねぇ」
「………つ、月夜さん……ですか?」
「満月………あまりそういう事を言うんじゃない」
「…………いいじゃないの……これぐらいなら」
「…………?」
三日月と満月が押す指圧は、全て性感帯を増進させるツボだ。何故そこ迄するのかは、権藤からの指示だ。蝶子を守る為に、1人や2人では足りないと思った月夜は、5人で権藤の屋敷に潜入したのだ。それならば、と蝶子を助け出した後、隼人との婚姻の為に、と調教をする事に決めただけ。
「凄いわ……久々だからかしら……」
「そ、そんなに……濡れて……ます?」
「…………やり過ぎでもいいや!もっと主人を喜ばせなきゃ」
「…………やっ!!………絶対に……わ、私は………隼人………様……」
「!!」
「満月!!お前、余計な事を言い過ぎだ!!」
蝶子がいきなり態勢を起こし、腕で防御をして三日月と満月から避ける。その三日月の声で、部屋の扉が開いた。
「如何した!!」
月夜と新月、光月が飛び込んでくる。
「………くっ………隼人様っ………会いたい……」
「っ!!」
「おい!三日月、満月何が!!」
月夜は、『ここに居る』と叫び抱き締めてやりたくなる衝動を必死で堪える。その表情で満月もまた苦悩を見せた。
「私が悪いのよ………言い過ぎだわ……蝶子は旦那様に抱かれたくないものね……私は、主の為に喜ぶ様に仕上げるつもりだったから……」
「…………満月………お前……誤解を招く言い方するな……」
新月に耳元で言われた満月。蝶子には聞かせられない。
ベッドで怯える様に震えて隼人の名を呼ぶ蝶子を、ベッド脇でただ見つめるしか出来なかった月夜。紛れもなく蝶子の蜜が、彼女の方へ引き摺る様に染みになって、線が描かれていた。
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