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竿師の仕事
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しおりを挟む風呂場に来た蝶子と月夜。
「蝶子、壁に手を点けろ」
「何を?」
「身体を洗うんだが」
鎖をつけ直し、蝶子を立たせたまま身体を洗うと言う月夜。誘導通りににする蝶子だが、月夜に足を開かされた。
「!!………つ、月夜さん?」
「…………知っているか?蝶子………男は、女のココ………『雌しべ』を舐めたがるのを……」
月夜は、蝶子の足の間から潜り込み、下から蝶子を見上げ、蜜口に息を吹き掛ける。見られない蝶子にはそれが効果的だった。
「そ、そんな所………汚いですよ!」
「…………そうだな……だが、舐めたがる男も居る事を覚えておけ…………特にお前の様な未通娘は、柔らかくしておかなければならない………旦那様が、解してくれるのかは分からんが、初めての夜伽は痛いと聞く………だから、解しは今はしないが、舐められる事も慣れておけ」
月夜は蝶子の太腿を掴み、秘部の割れ目に沿い舐め上げる。蜜が出ていた事を見ていたのもあり、先ずはその溢れた蜜だけを舐め取りたかっただけだった。
「…………ひっく……隼………人……様………」
「!!」
涙が、月夜の額に溢れ落ちる。許婚の名を呼ぶ蝶子の悲しそうな声に、月夜は舐めるのを止めた。
「蝶子…………鬼龍院隼人と結婚出来ないかもしれないんだぞ?いつまでも婚約破棄した男を想わない方がいい」
「……………た、例え……この身が汚れても………私の心は隼人様の物です!」
「!!…………っ」
余程、月夜に蜜口を舐められても、心は許さないという事だろう。
「…………慣れろ……今日は止めてやる………身体洗うからそのままで居ろ」
「……………ぐすっ………は、はい……」
泡立てた泡が、蝶子を纏う。優しく触れた手は相変わらず温かかった。そして、昨日と同様に、布で覆われた月夜の腰回り。先に入らせ、後で出させる月夜。月夜と鎖1本で、繋がれた様な気がしてならない蝶子。
「出るぞ」
「…………はい」
湯船から出て身体を拭かれるのも乾かすのも昨日と一緒だ。
「寝るぞ」
「………………はい……」
異性と同じ布団で一緒に寝る練習だとしても、やはり慣れない蝶子。だが、逃げ出せない様に抱き締められては、勘違いする女も居るのではないだろうか。
竿師と言うのであれば、女を扱う事に長けているだろう。優しい手つきや夜伽の練習で、口づけされ身体を洗ってくれて、髪を乾かし、同衾する行為を繰り返せば、純朴な女なら好意を持ってしまいそうになる。
だが、蝶子は幼い時に許婚となった隼人が好きだった。蝶子を常に気遣い、リードして家令達への信頼も厚かった。鬼龍院財閥を立ち上げた隼人の曽祖父から、百貨店を日本帝国内にいくつも持っていて、隼人も重役として次期社長となる為に日々努力を惜しまなかった。それなのに、忙しい間を縫っては蝶子に贈り物を欠かさず、会うようにしてくれた彼との婚姻を待っていた。
婚姻間近で、蝶子の父が事業に失敗しなければ、半年後には結婚していた筈だったのだ。それが、蝶子から破断を申し立てしたのに、未だに恋しくて堪らなかった。
月夜に抱き締められて、目線が気になり、目隠しで分からないのに、目を閉じて寝た振りをするしかなかったが、昨夜は不覚にも眠ってしまった。せめて、抱き締められた腕から開放し、月夜ではなく隼人を思って眠りに付きたかった蝶子はまたいつの間にか、月夜の腕の中が心地良く眠ってしまった。
「…………隼人……様……」
「…………蝶子………すまない……………」
頭の奥底に、隼人の声が聞こえた気がした蝶子は夢を見る。
『隼人様、お小姓の光君から、花を貰いました』
『……………え?何故貰うんだ!俺は蝶子に花をあげた事がないのに!』
『………隼人様から戴ける物ならば、何でも嬉しいですよ?………花の種類もいろいろですし……光君から貰ったのはシロツメクサですから、隼人様から別の花を戴けるなら、初めて貰う花ですよ』
別の花であれば、隼人から『初めて貰う花』だと主張する蝶子。『花』には拘ってはいない。後日、隼人から蘭を贈られ、手紙には『蝶子は蘭が好きだと聞いたから、蘭の温室を屋敷に作る事にした。またいつでも屋敷に来るといい』と書いてあり、鬼龍院家に行く口実を作ってくれたりした許婚が恋しくて堪らず、夢を見て泣いた蝶子。
「蝶子!」
「……………え?」
泣いていて、月夜に起こされた蝶子。
「どう………しました?」
「如何した、じゃない!泣いていたから起こした!辛い夢でも見たのか?」
「………………いえ……幸せな夢でした……隼人様の……大丈夫です……私は隼人様の存在がある限り、生きて高蔵寺家に帰りますから」
「………聞いていいか?どんな夢か」
蝶子は、隠す必要も無いので、月夜に話す。月夜は黙って聞いていた。
「そうか……………蘭が好きなのか」
「………はい……本当に、隼人様温室を作ってしまわれたんです!………嬉しくて………温室管理は私に任せる……………て………もう……行けない……ですね………」
「……………」
蝶子は、強く月夜に抱き締められた。
「……………悲しくなる夢は俺が食ってやるから………」
「つ、月夜………さん?」
「………………寝るんだ、蝶子」
「……………」
蝶子は月夜が気になるものの、何も聞けなかった。
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