6 / 26
目隠しの意味は?
5
しおりを挟む 両腕をなくし、首をなくした魄皇鬼の身体が崩れ落ちる。
終わった。
最後まで、兄様に助けられた。
あの様子では、兄様も生きてはいないだろう。
止めどなく溢れる涙が視界を塞ぐ。
ふと、〈紅桜〉が私の手を引いた気がした。
涙で歪む視界に、白い闇が躍り出る!
「はっ」
身をひねる私の左眼に、魄皇鬼の首が牙を剥く。
「あぐぅっ!」
瞳を襲う、灼けるような痛みに視界が揺らいだ。
まだ動くのか?
駆け降りてくる首は禍々しく殺気を放つ。
視界が霞む。
構える〈紅桜〉に、何かが手を添えた気がした。
行け!
「忌まわし鬼よ。去れ!」
刀にある限りの霊力を乗せ、迫り来る魄皇鬼の首を一刀の元に斬り伏せる。
霞む視界に、紅い五芒星が確かに写って見えた。
今度こそ、魄皇鬼の首がチリとなり風に消えて逝く。
『紅、桜……』
魄皇鬼の声が夜の闇に消えた。
東の空に輝く太陽が、一日の始まりを告げる。
鮮やかな朱色の柱が立つ境内で、座り込んだまま夜が明けてしまった。
左眼の灼けるような痛みは引いたが、もはやこの瞳が物を映すことはないだろう。
手を離した〈紅桜〉は、鞘に収まったのだろう。
左手の中には、確かに熱く力の源を感じる。
魄皇鬼は滅んだのだろうか。
兄様。
あの時刀に添えられた手は……。
思考のまとまらない頭には、疑問ばかりが増えていく。
そして鬼の戯言と捨てていいのか。
魄皇鬼の残した言葉。
〈紅桜〉。お前はなぜ人に宿る。
終わった。
最後まで、兄様に助けられた。
あの様子では、兄様も生きてはいないだろう。
止めどなく溢れる涙が視界を塞ぐ。
ふと、〈紅桜〉が私の手を引いた気がした。
涙で歪む視界に、白い闇が躍り出る!
「はっ」
身をひねる私の左眼に、魄皇鬼の首が牙を剥く。
「あぐぅっ!」
瞳を襲う、灼けるような痛みに視界が揺らいだ。
まだ動くのか?
駆け降りてくる首は禍々しく殺気を放つ。
視界が霞む。
構える〈紅桜〉に、何かが手を添えた気がした。
行け!
「忌まわし鬼よ。去れ!」
刀にある限りの霊力を乗せ、迫り来る魄皇鬼の首を一刀の元に斬り伏せる。
霞む視界に、紅い五芒星が確かに写って見えた。
今度こそ、魄皇鬼の首がチリとなり風に消えて逝く。
『紅、桜……』
魄皇鬼の声が夜の闇に消えた。
東の空に輝く太陽が、一日の始まりを告げる。
鮮やかな朱色の柱が立つ境内で、座り込んだまま夜が明けてしまった。
左眼の灼けるような痛みは引いたが、もはやこの瞳が物を映すことはないだろう。
手を離した〈紅桜〉は、鞘に収まったのだろう。
左手の中には、確かに熱く力の源を感じる。
魄皇鬼は滅んだのだろうか。
兄様。
あの時刀に添えられた手は……。
思考のまとまらない頭には、疑問ばかりが増えていく。
そして鬼の戯言と捨てていいのか。
魄皇鬼の残した言葉。
〈紅桜〉。お前はなぜ人に宿る。
0
お気に入りに追加
84
あなたにおすすめの小説
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた
狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている
いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった
そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた
しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた
当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった
この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる