【完結】プラトニックの恋が突然実ったら

Lynx🐈‍⬛

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誹謗中傷と脅迫

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 数日後、白河酒造への誹謗中傷がSNSに流れた。
 それは、白河酒造の跡取り、紗耶香の恋人が暴力事件を起こし、前科があるという内容だった。結婚前提に交際している、というのは、白河酒造では周知の仲で、結婚秒読みと言われた中での裕司の過去の流出は、社内だけでなく取引先や傘下のグループ企業や店舗にも影響が出始めていた。

「社長!小松を解雇して下さい!前科のある男等、白河酒造には不要です!」
「前科のある男だとは、入社当時から言っていたが?」
「そ、それでも紗耶香様の夫になるとは……」
「小松は暴力事件を起こしてはいるが、それには訳がある………小松自身の人となりを見て、私は紗耶香に合っていると思っている……経営の才は無いがな………サポート的な仕事は紗耶香の役に立つ」
「ですが、株の暴落や取引取消、店舗への影響が止まらなくなります!」
「…………それには手を売った……暫く様子を見る」
「「「社長!」」」

 だからといって、事態収拾には時間が要し、社外だけでなく、社内や店舗スタッフからは裕司は避けられる様になっていた。

「十中八九、優馬だろうな………これ」
「許せない、あの人……それでも店に居られる神経が信じられない」

 割烹料亭おさないが休みの日だったのもあり、裕司にバー白河に航を呼び出して貰った紗耶香。対策を練ろうとしたいのだろう。

「…………ぶん殴りゃいいじゃねぇか、優馬を」
「裕司、感情的になるんじゃねぇよ……お前の人生掛かってるんだ、そんな事したら優馬の思う壺だぞ………アイツは頭キレるんだから」
「知らねぇよ………10年以上会ってねぇし、アイツは殴りゃ大人しくなった事しか覚えてねぇ」
「………でも、護衛と運転手は怪我させられたのよ?鍛えてる彼等が打撲で済んだのは幸いで、鍛えてなかったらもっと大怪我してたと思うって言ってたわ」
「優馬も身体鍛えてる、て?」
「そう思う」
「確かに掴んだ腕は筋肉付いてたな」

 裕司が苛々してタバコに手を出す回数が多く、吸い終わってから直ぐにタバコに火を着けては吸っている。

「吸い過ぎよ、裕司」
「電子タバコあるぞ、裕司」
「電子タバコなんて吸いたくねぇよ!禁煙する気もねぇ!」
「肺ガンリスクまっしぐらだな、お前………早死して紗耶香ちゃん1人にする気か?」
「っ!」
「航さん!今そんな話してる場合じゃないです!」

 話が逸れそうで、紗耶香が話を戻そうとすると、裕司はまだ吸えるのに、タバコの火を消した。

「…………裕司の弱点は紗耶香ちゃんなのは知ってんだよ………で?優馬の意図は分かってんのか?裕司」
「…………金だと思う」
「裕司、何でお金だって知ってるの?」
「…………え?……紗耶香こそ何でそんな事分かるんだ?」
「言ったから………優馬さんが………裕司の全て奪う、て」
「…………俺の全て?」

 やはり、タバコに手を取る裕司は、先程の事を忘れ、火を着けて吸い始める。
 せっかく止めた紗耶香と航だが、優馬の事を話たいので止めもしない。

「お金も、立場も…………私も………」
「は?………紗耶香も奪うって、連れ去られそうになったのはそういう意味か!」
「優馬………えげつない事考える様になったな……昔はもう少し素直で可愛かったのに……小学生迄は……」
「あ?…………優馬は素直じゃねぇよ、かなり捻くれた性格してんだよ!あの両親のせいでな」
「そうなのか?」
「期待を一身に向けられて、プレッシャーに押しつぶされたんだよ、俺と違ってな………俺は、お前と馬鹿やってストレス発散出来たが優馬は違う………その内爆発するんじゃねぇか、とは思ってたが俺は捕まったしな………約10年のアイツは分からん」

 酒を飲んでも酔えない程冴えている3人。酔いたいから飲む訳ではなく、優馬の事を真剣に話ているから酔えないのだ。

「今日、私宛にコレが届いたわ………差出人は佐原 理佳」
「…………佐原 理佳だと!」
「中はまだ開けてないの………佐原、と言うからには優馬さんかと思ってるけど……」
「お袋だ………俺と優馬の」
「お母様?」
「貸せ」
「う、うん」

 大事に扱いたくないのだろう。裕司は一度透かして、危険な物が無いかを見る。

「心配しなくても中身は紙だけよ……剃刀でも入ってると思ってた?」
「分かんねぇだろ」
「会社に送られて来た物は調べてるわよ………お祖父様には敵が多かったから、調べる様になってるの」
「…………も送られて来てそうだな、白河酒造に」
「………あるだろうな……は俺宛に……」

 ビリッ、と封筒を破り中身を開く裕司。

「…………ふざけやがって!」
「何て書いてあるの?」
「…………俺に優馬の治療費全額請求、俺の解雇と紗耶香との結婚を俺ではなく優馬にし、優馬を婿養子にしろだとよ………俺の前科を盾に、優馬なら白河酒造の役に立つから、だと…………要は、白河の金目当てじゃねぇか……SNSの記事を今更消しても拡散してるんだ、俺を排除しなきゃ、白河酒造が潰れるだろう、て言ってやがる」
「おいおい!裕司!それ脅迫文なんだから証拠になるだろ!破るなよ!」

 手紙を握り締めてしまう裕司に航は手紙を離させようと、握り締めた手首を掴む。

「そうよ!裕司!その手紙返して!」
「…………あ………そうだな……紗耶香、悪ぃ………」
「これ、お父様にも見せなきゃ……弁護士に相談して名誉棄損で訴えられるかもしれない………でも、こんな脅迫文送って来たらあっちが分が悪いのに………」
「…………さぁな……優馬とお袋が2人でやってんのはこれで分かった、て事だ……対策しやすくなったかもな」

 裕司には無関心だった裕司の母だ。優馬はともかく、裕司の行動の予測が出来るとは、裕司は思ってはいなかった。
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