【完結】プラトニックの恋が突然実ったら

Lynx🐈‍⬛

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野獣を捨てた理由

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「すいません……白河 紗耶香と申します……私が言うのもなんですが、裕司に無関心だったと聞いてるんです………裕司からすればどんなにそれが悲しい事かご理解してますか?」
「紗耶香ちゃん……」

 紗耶香が裕司と裕司の父の間に入る筋合いは無い。まだ妻でもない立場で言った所で何も出来ないだろう。

「…………無関心ではあったんだろうね……次男が優秀で長男の裕司には目もくれなかったからね……気が付けば、裕司は荒れていて警察に厄介になる事が多くなり向き合う事がもう怖くて出来なくなってしまったんだ………引っ越したのも、裕司に関わっていた子達が、私達にも暴力振っていて次男を守らねば、と引っ越した………近所にも迷惑を掛けて来たからね………」
「次男さんですか……大事なのは……」
「……………くっ……」
「紗耶香ちゃん………貴女が問い正す事じゃないわよ」
「…………ですけど……裕司を闇に堕とした原因がこの人なんです!諸悪の根源なのに、裕司が助けを求めたい時に貴方は居なかったんじゃないですか!代わりに小山内さんご夫婦にご迷惑掛けておいて何も思わなかったんですか!」
「紗耶香ちゃん…………俺達の事はいいんだよ……ただ馬鹿息子が1人増えた所で何とも思わなかったからね」
「………た、大将……」
「紗耶香ちゃん、食べて待ってなさい」
「………すいません……口出しし過ぎました」

 航の母に背中を押され、カウンターに戻される紗耶香。

「小山内さん………申し訳ありません」
「…………向き合うには遅過ぎたかもしれませんけどね………裕司は根が優しい子だ……それも知らなかった小松さん家族は一生裕司に謝り続けなければならなくても、裕司は分かってくれますよ……言葉で許すとは言わなくてもね………ただそっとしておいて欲しい、とは思います………結婚する予定のお嬢さんの家に迷惑掛けたくはない筈ですからね、裕司は」
「…………裕司の逮捕歴はご存知ではないでしょう?」
「お嬢さんはご存知ですよ」
「…………いいんでしょうか……裕司と結婚して……」
「小松さん、貴方がを言う権利も反対する権利もありませんよ」
「…………そうですね……」

 一方、航に連れ出された裕司。

「何すんだよ!離せこら!」
「お前は知らねぇから教えてやる」

 襟刳りを掴まれた裕司を駐車場ではなく、店の裏口迄連れて来た航は、タバコを取り出し1本吸うと、タバコを裕司にも差し出す。

「何をだよ!」
「お前は、俺の為にやった行いの末路だよ!」
「…………」
「お前は、後悔してねぇだろうがよ………俺に対するの報復を、お前が一身に受けて刑務所に入った事は………だがな……そのお前が刑務所に入った事で、そのはお前の家族に行ったんだよ………」
「…………なっ!」
「彬良とも話してお前には言うのは、お前の様子見て言おうと決めたんだよ………負の連鎖って奴で、お前の家族がお前にしてきた事も、これでチャラにしてやろう、てな………だから、親父さん達に裕司の物を警察に預けて、この街から出てけと言ったのも俺と彬良……親父さんはともかく、お袋さんとお前の弟、優馬はお前に恨み辛み言って去っていったがな」
「何で今言うんだ!」

 裕司が航から受け取ったタバコに火を着けたのに、投げ捨てて航の胸ぐらを掴む裕司。

「なら、お前にいつ言うんだよ!10年も音沙汰無し!刑務所に面会に行っても俺に会わねぇ!会えてもその時に言えるかよ!10年振りに会ったお前はまだ闇ん中!やっと言えると思ったのがこの時じゃねぇか!…………いいか?……お前は親父さんやお袋さんに対しては恨みあるだろうが、優馬には違っただろ!お前が刑務所に入った後リンチされてアイツは片目失明してんだよ!あのままこの街に居たら死ぬと思うだろうが!」
「……………し、失明……だと……優馬が……?」
「…………分かったか……親父さん達にも事情があったんだよ……それ踏まえて考えるんだな………俺や彬良はお前に感謝しても仕切れねぇが、お前の家族は違う……それでも親父さんは複雑な気持ちで、この店に来てるんだ………俺には親父さんにあんな言葉言えねぇよ……あんな目に遭ったのに、てな………お前の家族からすりゃ、謝罪貰いたいのはなんだ………お前はそうなる事をしてきた報いの謝罪を親父さんに言わなきゃならねぇ」
「…………」

 航の胸倉を掴む手が緩み、呆然と立つ裕司の代わりにポイ捨てしたタバコを拾い、携帯灰皿に納めた航。

「裕司………」
「っ!」
「お前がこの前持ってた茶封筒……白河の紗耶香ちゃんの親父さんが調べてお前に渡した理由………親父さんがこの店に来てる事も調べてると思うぞ………多分、向き合えって言ってるんじゃね?」

 紗耶香の父は、裕司が要らないと言っていても、と言ったのはこういう意味なんだと、裕司にも伝わる。

「…………親父と話してくるわ……」
「おぅ、そうしろ」
「その前にタバコくれ」
「…………ちっ……2本返せよ」
「ワンカートンを熨斗着けて返してやるよ!」

 タバコを再び航から貰った裕司は、1本吸い切る迄、ただ航と寡黙に夜空を見上げていた。
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