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恋愛開始
友人の結婚式後
しおりを挟む「綺麗だったぁ……茉穂さん」
茉穂と彬良の結婚式と披露宴を終え、二次会へ行くかどうか、の話をしてる裕司と律也と航達と少し離れて紗耶香は羽美と一緒に居た。
「本当に……茉穂さんモデル並みのプロポーションしてるから、ドレスも映えてましたね」
「私は背が高くないから、茉穂さんみたいなドレスは似合わないんで羨ましいです」
「私も茉穂さんの様な体型じゃないから無理でしたよ………羨ましい」
茉穂のドレス姿を反芻する紗耶香と羽美は、うっとりとしていた。
「こら、紗耶香………二次会あるが行くか?」
「羽美さんは行きます?」
「私はこの子居るから……」
「そうそう、律也と羽美は帰るとさ」
茉穂と彬良の結婚式は、羽美が出産して3ヶ月後に挙げられた。
羽美の腕に抱かれて眠る息子はとても可愛いくて、紗耶香も恐る恐る抱かせてもらう事も出来、早く子供が欲しくなっていた。
「そうですよね、翔也君居ますもんね………また会いに伺ってもいいですか?」
「えぇ………裕司さんと遊びに来て下さい、紗耶香さん」
「如何する?紗耶香………行くなら俺も付き合うが」
「航さんは?」
「航は行くってよ」
「裕司が行きたいなら行こうかな」
「了解………家に連絡しとけよ」
スーツのポケットに手を突っ込む裕司は、航の方へと戻って行く。
「ふふふ………裕司さんが女性に優しくて本当に変わったわ」
「そうなんですか?」
「裕司さん、女性にはぶっきらぼうだったから」
羽美の記憶の中の裕司とは違うのが嬉しそうに見えた紗耶香。
「いつも私にはあんな感じですよ?いつも優しいし」
「…………いつも?……嘘………」
「羽美さんには冷たかったんですか?」
「私にはお兄ちゃんみたいに接してくれてたから、冷たくはないですけど、私が見てきた裕司さんの彼女さん達にはあんな態度じゃなかったですよ……すっごくクールな態度で、冷たくあしらって彼女が泣いても無視でしたし、泣く女は嫌いだから、て言ってました」
「……………え?………泣く女が嫌い?」
「えぇ、だから直ぐに別れてて、長く付き合ってた人居なかったんです」
紗耶香は何度裕司に泣き顔を晒して来たのだろう。苛つく事もなく、ただ黙って泣く紗耶香に差し出すハンカチにどれだけ助けられたかを思い出した。
「紗耶香さん?」
「…………っ!」
裕司の紗耶香へ対する扱いが特別に感じてしまう。セックス中の愛撫も特別だと言った裕司。その特別より、紗耶香はあの時から裕司の気持ちに触れていたのだと知る。
「裕司!」
「……………ん?どした?」
紗耶香は羽美と離れ、裕司のスーツの袖を掴むと、腕を引っ張り屈ませる。
「な、何だよ」
「…………今日………二次会終わったら、裕司のとこ泊まってっていい?」
「は?…………駄目に決まってんだろ!」
「お父様に何言われてもいい!怒られたって構わない!…………裕司が欲しいの………朝迄一緒に居たい」
「っ!」
紗耶香のお強請りが、裕司に刺さり、紗耶香の言葉の意味を察すると、顔を赤らめる裕司。
「はい、裕司さんと紗耶香さんは不参加、と………彬良、行きましょうか」
「そうだな…………裕司、なんなら泊まってっていいぞ………部屋用意してやる」
「は!?」
茉穂と彬良も裕司の近くに居たのだ。紗耶香の言葉も耳に入っていたのだろう。茉穂が気を利かせてくれた上に、彬良も自身の働くホテルの利用を紗耶香と裕司に促した。
「彬良!何言いやがる!」
「女に恥かかせんじゃねぇよ、裕司」
「そうそう、こういう時は女の願いを叶えてやりなよ、裕司君」
彬良に律也は同意見の様で、頷いていた。
「裕司の分迄飲んでおいてやるよ」
「わ、航迄言うか………コイツは門限あるんだよ!」
「あ?んなもん、門限なんて物は破る為にあるんだろうが………いい歳の大人がいつまでも親のレールに従う事はねぇ!」
「彬良…………レール外し捲った貴方が言うには説得力ないから」
「……………ぐっ……それを言われると…」
「…………紗耶香……」
「…………だ、駄目?」
裕司は彬良達の言葉に揺らぐ。紗耶香が掴むスーツにある手を包むと、紗耶香を見つめた。
「……………土下座して平謝りするんだぞ、一緒に」
「分かった」
「彬良………甘えていいか?」
「任せろ……スィートルーム空いてたら、其処に泊めてやるよ」
彬良がフロントに確認しに行ってくれる様で離れて行く。
「変わったなぁ、お前」
「あ?」
航が不思議そうに裕司を見つめてはいるが、何故か嬉しそうだ。
「お兄ちゃん、それはそうよ」
「羽美………何でだよ」
「だって、裕司さんが嫌いだった女性の涙を紗耶香さんなら許してるんだから」
「何だと!…………お前、泣く女程嫌いなもん無かったじゃねぇか!」
「ぐぇっ!」
航にも意外だった様で、裕司の胸倉を掴んで揺する。
「苦し……止めろ!航!」
「あ………思わず………悪い……へぇ~……お前がねぇ…………成長したなぁ」
「成長した言うな………紗耶香は特別なんだよ!」
「っ!」
「「「「ごちそうさま~」」」」
航、羽美、律也、茉穂がそれぞれ裕司の惚気に対し、ごちそうさまと揶揄う中で、裕司は紗耶香の手を離す事はなかった。
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