35 / 59
恋愛開始
友人の結婚式後
しおりを挟む「綺麗だったぁ……茉穂さん」
茉穂と彬良の結婚式と披露宴を終え、二次会へ行くかどうか、の話をしてる裕司と律也と航達と少し離れて紗耶香は羽美と一緒に居た。
「本当に……茉穂さんモデル並みのプロポーションしてるから、ドレスも映えてましたね」
「私は背が高くないから、茉穂さんみたいなドレスは似合わないんで羨ましいです」
「私も茉穂さんの様な体型じゃないから無理でしたよ………羨ましい」
茉穂のドレス姿を反芻する紗耶香と羽美は、うっとりとしていた。
「こら、紗耶香………二次会あるが行くか?」
「羽美さんは行きます?」
「私はこの子居るから……」
「そうそう、律也と羽美は帰るとさ」
茉穂と彬良の結婚式は、羽美が出産して3ヶ月後に挙げられた。
羽美の腕に抱かれて眠る息子はとても可愛いくて、紗耶香も恐る恐る抱かせてもらう事も出来、早く子供が欲しくなっていた。
「そうですよね、翔也君居ますもんね………また会いに伺ってもいいですか?」
「えぇ………裕司さんと遊びに来て下さい、紗耶香さん」
「如何する?紗耶香………行くなら俺も付き合うが」
「航さんは?」
「航は行くってよ」
「裕司が行きたいなら行こうかな」
「了解………家に連絡しとけよ」
スーツのポケットに手を突っ込む裕司は、航の方へと戻って行く。
「ふふふ………裕司さんが女性に優しくて本当に変わったわ」
「そうなんですか?」
「裕司さん、女性にはぶっきらぼうだったから」
羽美の記憶の中の裕司とは違うのが嬉しそうに見えた紗耶香。
「いつも私にはあんな感じですよ?いつも優しいし」
「…………いつも?……嘘………」
「羽美さんには冷たかったんですか?」
「私にはお兄ちゃんみたいに接してくれてたから、冷たくはないですけど、私が見てきた裕司さんの彼女さん達にはあんな態度じゃなかったですよ……すっごくクールな態度で、冷たくあしらって彼女が泣いても無視でしたし、泣く女は嫌いだから、て言ってました」
「……………え?………泣く女が嫌い?」
「えぇ、だから直ぐに別れてて、長く付き合ってた人居なかったんです」
紗耶香は何度裕司に泣き顔を晒して来たのだろう。苛つく事もなく、ただ黙って泣く紗耶香に差し出すハンカチにどれだけ助けられたかを思い出した。
「紗耶香さん?」
「…………っ!」
裕司の紗耶香へ対する扱いが特別に感じてしまう。セックス中の愛撫も特別だと言った裕司。その特別より、紗耶香はあの時から裕司の気持ちに触れていたのだと知る。
「裕司!」
「……………ん?どした?」
紗耶香は羽美と離れ、裕司のスーツの袖を掴むと、腕を引っ張り屈ませる。
「な、何だよ」
「…………今日………二次会終わったら、裕司のとこ泊まってっていい?」
「は?…………駄目に決まってんだろ!」
「お父様に何言われてもいい!怒られたって構わない!…………裕司が欲しいの………朝迄一緒に居たい」
「っ!」
紗耶香のお強請りが、裕司に刺さり、紗耶香の言葉の意味を察すると、顔を赤らめる裕司。
「はい、裕司さんと紗耶香さんは不参加、と………彬良、行きましょうか」
「そうだな…………裕司、なんなら泊まってっていいぞ………部屋用意してやる」
「は!?」
茉穂と彬良も裕司の近くに居たのだ。紗耶香の言葉も耳に入っていたのだろう。茉穂が気を利かせてくれた上に、彬良も自身の働くホテルの利用を紗耶香と裕司に促した。
「彬良!何言いやがる!」
「女に恥かかせんじゃねぇよ、裕司」
「そうそう、こういう時は女の願いを叶えてやりなよ、裕司君」
彬良に律也は同意見の様で、頷いていた。
「裕司の分迄飲んでおいてやるよ」
「わ、航迄言うか………コイツは門限あるんだよ!」
「あ?んなもん、門限なんて物は破る為にあるんだろうが………いい歳の大人がいつまでも親のレールに従う事はねぇ!」
「彬良…………レール外し捲った貴方が言うには説得力ないから」
「……………ぐっ……それを言われると…」
「…………紗耶香……」
「…………だ、駄目?」
裕司は彬良達の言葉に揺らぐ。紗耶香が掴むスーツにある手を包むと、紗耶香を見つめた。
「……………土下座して平謝りするんだぞ、一緒に」
「分かった」
「彬良………甘えていいか?」
「任せろ……スィートルーム空いてたら、其処に泊めてやるよ」
彬良がフロントに確認しに行ってくれる様で離れて行く。
「変わったなぁ、お前」
「あ?」
航が不思議そうに裕司を見つめてはいるが、何故か嬉しそうだ。
「お兄ちゃん、それはそうよ」
「羽美………何でだよ」
「だって、裕司さんが嫌いだった女性の涙を紗耶香さんなら許してるんだから」
「何だと!…………お前、泣く女程嫌いなもん無かったじゃねぇか!」
「ぐぇっ!」
航にも意外だった様で、裕司の胸倉を掴んで揺する。
「苦し……止めろ!航!」
「あ………思わず………悪い……へぇ~……お前がねぇ…………成長したなぁ」
「成長した言うな………紗耶香は特別なんだよ!」
「っ!」
「「「「ごちそうさま~」」」」
航、羽美、律也、茉穂がそれぞれ裕司の惚気に対し、ごちそうさまと揶揄う中で、裕司は紗耶香の手を離す事はなかった。
0
お気に入りに追加
61
あなたにおすすめの小説
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。

アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる