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恋愛開始
中年男から貰ってきた物
しおりを挟む後日、白河酒造にて新商品の試飲会が行われた。元々、日本酒の酒造会社から始まった白河酒造は、日本酒製造には強いが、洋酒に関してはまだまだ若輩者の会社だ。
この日、ワインの試飲会に参加した裕司と紗耶香。
店に置くか如何かを検討する為に、数日振りに顔を合わせた。
「なかなか今回の試飲会、良いのがあったな」
「オレンジワインも今流行ってるし、売れそうな物見つけられて良かったわ………バーにも近々入れるわね」
「あぁ」
「そうだ、今夜予定ある?裕司」
「いつもと一緒………社長の仕事終わったら、バー寄って帰る」
「…………明日、休み………よね?」
「……………来るか?」
「………うん……駄目?」
「門限迄には帰らせるぞ」
「分かってる」
外泊はさせられない裕司。そして紗耶香は外泊を禁止されている。結婚する迄は、という紗耶香の父からのお達しだった。
仕事を終え、紗耶香は試飲会で飲んで気に入ったワインを持ち帰って、裕司のマンションへと来る。
「飲む?」
「お、いいねぇ」
裕司もバーに顔を出してからの再会だが、まだ飲みたかったのか、紗耶香の差し入れには喜んだ。
「ツマミ、チーズでいいか?」
「あ、うん」
ブルーチーズやカマンベール等チーズを詰め合わせてグラスと共に、紗耶香の隣に座る裕司。
「そういえば、彬良さんから何渡されたの?」
「………っ!………ゲホッ!」
「な、何咽てるの?」
ワインを口に含み、飲み込む直前に紗耶香から言われ、裕司は咽る。
「い……いや………あの………」
「何なの?」
裕司がとても言い出しにくそうで、チーズで咽た喉をワインで流し込むと、裕司はベッド脇に置いていた紙袋を持って来た。
「………コレ………彬良が仕事で貰ってきたから、幾つか貰ってきた」
「……………なっ!」
紗耶香が紙袋を覗き込むと、出す事なく裕司の方に押し返す。
「やっぱり、何か分かるんだな」
「何て物を貰って来るのよ!」
「律也はこれ以上貰ってったぜ?」
「あ、あの人はこういうの好きなんだから当たり前でしょ?………う、羽美さん……こういうの付き合ってるの?」
拒絶反応を見せた紗耶香でも、他者達の性的趣向には興味がある様だ。
「みたいだな……ぺ○スサックをごっそり持っていきやがった」
「ぺ………な、何それ」
「嵌めて、突っ込むんだよ」
裕司が指で円を作り、もう片方の指を円に差し込む仕草をする。
「っ!」
紗耶香も想像した様で、ワイングラスを持って裕司に背を向けた。
「想像したか?」
「わ、私は絶対に嫌だからね!」
「貰ってねぇだろ?………紗耶香はまだ初心だから、ハードなセックスなんて無理だと分かってるし、俺はそんな玩具は使い慣れてねぇよ、女に」
裕司は指のポーズを解き、紗耶香を背中から緩く抱き締めた。
2人が初めて抱き合った夜から、あまり抱き合ってはいないのだ。日を跨ぐ前に帰宅を余儀なくされている紗耶香に、裕司は追い出す様に帰らせている。セックスを始めてしまえば、外泊させてしまうだろう。だからお互いに我慢しているのだ。
「でも、アダルトグッズ貰ってきたじゃないの」
「ローションは前使ったろ?あと、この電マやバイブは一般的な物だぞ?律也の貰ってったのは、ハード系のだ……羽美は妊娠中だし、使うのは無理だろうけど、航が居る前で平然と語るぐらいだから、羽美は付き合ってんじゃねぇかな………SMプレイを」
「…………律也さんがSMバーに通ってたのは知ってるけど………想像しちゃうから、もうこの話は終わり!」
「気にならね?コレ………どう動くか」
「っ!」
背後から、パッケージ毎紗耶香に見せたバイブや電マ。異性関係が乏しい紗耶香には、刺激が強いアダルトグッズ達。咄嗟に裕司の手にあるアダルトグッズ達を払った紗耶香。
「見せないでよ!」
「…………ちぇっ……」
ちょっと残念そうに、裕司は床に転がった玩具を拾い、紗耶香から離した場所に置いた。
「そんなに過剰に反応されると、落ち込むぜ」
「…………そうなの?」
「まぁな………2人で使うもんだしな」
「分からないわよ、私には」
「だから、初歩的なもんを貰ったんだろうが」
「…………こ、これが初歩なの?この前の手錠とかは?」
「拘束具にしては手錠は初歩だな」
手錠は裕司のマンションに置いていた紗耶香。裕司が何処にしまっておいたかは知らないが、捨ててはないだろうと思われる。
「SMの域は分からないわ、私」
「でも、役に立ったろ?手錠は」
「う………そ、それは………そうだけど………」
「…………なぁ……今日、泊まれないのか?」
「…………私だって泊まりたいけど……お父様が迎えを寄越すから………」
「…………はぁ………ジジィの影で、目立たねぇ親父だったのに、ジジィを隠居させてから干渉してきやがるな………」
「…………ごめん……お祖父様が関わってこない分、私が大人しくなったのもあって、父親らしい事したいんだと思う」
「なんだかんだと、あのジジィの血だな………経営の傾きもV字回復してきたしな」
♫•*¨*•.¸¸♪✧
0時になり、紗耶香のスマートフォンのアラームが鳴る。
「………帰らなきゃ……」
「…………あぁ……下迄送る」
迎えの車が裕司の住むマンションの前に待機している時間なのだ。シンデレラの様なかぼちゃの馬車でもないし、裕司は王子でもないが、結婚の了承を獲る迄は、セックスもなかなか出来る時間等取れない。それは裕司が紗耶香の父から出された条件にも入っていたからだ。
「そういえば、裕司」
「ん?」
「バイヤーの仕事も始めたって聞いたけど」
「経営は、紗耶香がやるだろ?俺はサポートに回る、て希望出してあったからな」
「いいの?それで」
「何がよ」
「経営したくないのかな、て」
「俺は柄じゃねぇよ………ほら、もう車乗れ」
「…………うん……明日、また来る」
「……………了解……久々にお家デートな」
「っ!」
外泊は出来ないが、休みが重なると裕司のマンションでお家デートしている。それでもまだ時間は足りないと思う2人は別れを惜しむのだった。
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