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仕事を教え、キスは教えられ

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 紗耶香からキスをしろ、と言った裕司なのに、紗耶香にキスをしたので、紗耶香は呆然となった。

「こんなんじゃねぇぞ………俺が欲しいのは」
「………で、出来ないよ………キスも裕司が初めて……」
「んなもん、知ってる………仕事はお前から教わってるからな……エロい事は俺が教えてやるんだよ」

 頬を染めた紗耶香の前で、自分の唇に指に触れて、紗耶香に視線を向けさせる色艶のある目をする裕司。
 自分がどの部分に、どの仕草で女の興味を向けるか裕司はよく知っている。

「っ!………い、色っぽい目……しないで……」
「あ?紗耶香を煽ってんだろうが……ベルト外して、お前から来い」
「…………ここ……会社の駐車場よ?」
「関係ねぇ、今ここでキスしなきゃ、さっきの話無し」
「…………え?」
「毎日キス」
「…………い、意地悪っ!」
「そんな男に惚れたんだろうが」

 出発したいが、運転もしようとしない裕司。その裕司が会社の駐車場でキスをせがむ。キスを紗耶香からしなければ、このままで居るだろう。紗耶香も車を降りて、1人で行こうとは思い付かない程にパニックになっている。
 車から降りようものなら、裕司に止められるかもしれないが、逃げてはいけないと、紗耶香は思った。

 ―――今、しなきゃ……裕司と前に進めない……

 シートベルトに手を掛け、締めたのを外す。
 沈黙になってしまった車内で、紗耶香はずっと裕司に見られているだけだ。しかも裕司はわざと、腰をずらして運転手側のドアに凭れてしまった。
 僅か30cmも無い距離間なのに、遠く感じてしまう。シートの間のシフトレバーが境界線に見えて、大きな壁に感じた。

「…………」
「…………」

 紗耶香がシートベルトを外すと、裕司を見つめるが、直ぐに目線をずらす。

 ―――やべぇな……何だよ、この可愛い生き物……

 焦らしているのは自分なのに、焦らされている様に感じる裕司。赤面して裕司を見つめたり目を反らしたりする仕草にグッと来る。

「………時間、無くなるぞ?」
「っ!」

 ビクッと身体が跳ねた紗耶香は膝上に乗せた荷物を退かして、おずおずと運転席のシートに手を付いた。

「…………俺の舌吸え……絡めとって自分なりに弄んでみろ……息は鼻で吸うか、唇ずらしたタイミングで息しろ」
「………ハ、ハードル高いっ!」
「我慢させられた分、それだけ貰わねぇとな………紗耶香なりに終わったら、採点してやる」
「っ!」

 裕司に舌を出され、後に引けなくなった紗耶香は、身体を裕司に乗り出していく。
 
 ―――早く来い!紗耶香

 震えながら紗耶香の息が裕司に掛かる。唇が裕司の舌に触れて、力無く吸われたぎこちないキスが、裕司は久々に味わった。遠慮がちに舌を絡められ、緊張感が伝わっていた。

「っ!」
「!………あ、歯が当たっちゃった……」
「……………20点」
「だ……だって…………あっ!」

 紗耶香の首後ろから頭を抱えられ、引き寄せられた紗耶香。

「赤点だから、また同じキスな…………こうやるんだよ……俺に遠慮なんて要らね」
「んっ!」

 裕司の唇が重なると、食べられてしまいそうに強く吸われる紗耶香の舌。吸われている間にも、舌の筋を這われ、それが気持ちいい。上になっている紗耶香の唾液が次第に溜まり裕司の口に入っていく。

「んっん!」

 それが、申し訳なくて紗耶香は離れようと裕司を押すが、裕司の押さえ込む腕が強く、離れさせてはくれない。
 寧ろ、その唾液を飲み込む裕司の喉が鳴った。

 ―――唾迄………でも……気持ちいい……

 紗耶香の唾液を飲んだ裕司は紗耶香を離す。

「………こんなキスでエロい顔してんじゃねぇよ………まだ序の口なのに」
「……………っ!」
「ほら、出発するぞ」
「…………う、うん……」

 ―――お腹の辺り……キュンってなった……んだけど……

 無言になりシートベルトを改めて締め直すと、裕司は車を走らせた。

「………とりあえず1日1回な」
「………え?」
「キス」
「…………う……ん……」
「何だよ、したかったんだろ?」
「い、今みたいなキスするんだよね?」
「そうだけど?」

 キス前の火照った顔より更に赤くなっている紗耶香をチラ見する裕司。押し黙っている紗耶香に、裕司は気になった。

「如何かしたか?」
「…………わ、笑わない?」
「話による」
「………なら言わない」
「言えよ………さっきのキスの事なら教えねぇと困るだろ…………俺達2人の事だ」
「…………お腹の中がおかしくなった?……なんて言ったらいいか分かんない」
「…………へぇ~……」
「な、何?」
「良い傾向」
「な、何?良い傾向って」

 裕司はただニヤニヤして、上機嫌になる。

「教えてよ!気になるじゃない……聞いたからには答えて貰わないと」
「………感じたんだよ……感じると疼いて、セックスしたくなる」
「…………っ!」
「フッ………毎日疼く身体か……楽しみ増えたぜ」

 キスだけでセックスしたくなる身体になると、毎日セックスしたくなるのでは、と紗耶香は絶句するのだった。
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