上 下
17 / 59
恋愛開始

人の恋路は面白い

しおりを挟む

 バー白河。

 ―――全く……俺を架け橋にするんじゃねぇよ……あいつ等…

 数日前、親友の航のギブスが取れた、と連絡が入り、裕司は紗耶香と食べに行けたのだが、彬良が航の料理食べた事が無く、航の料理を食べたいからと、店に行かずに裕司の店で食べる、と言われてしまったのだ。
 このバーでは料理らしい物は出せない。つまみは全て乾物なのだ。
 開店準備をしている時間はまだ混まないので、裕司1人で店に居た。

 カランカラン。と、店のドアが開き、裕司は入口を見る。

 ―――お、美人

「いらっしゃいませ」
「あの、待ち合わせで……」
「お相手は男性ですか?」
「はい」

 ―――だろうな、いい女が1人で来る訳ねぇし……

「…………今、1人で居る男性客居られないので、カウンターにどうぞ」

 裕司は女を目の前の席に座らせる。

「何か先に飲みます?」
「………来てからでいいです?」
「じゃ、冷出しますね」

 ―――男を立てる女だな……

 紗耶香という彼女が居ても、女に対する興味が無くなる訳ではない。仕事柄、人間観察は大事な事だ。

 ゚.*・。゚♬*゜

「………はい、バー白河………おぉ、彬良」

 店の電話が鳴り、女に氷水を出した後、電話に出た裕司。

「女性1人客?………あぁ、今来たぞ……分かった、伝えとく」

 ―――彬良の女か……落としたな?

 以前、好きな女が居ると言っていた女性だと気が付いた裕司。

「彬良と待ち合わせ?あと10分ぐらいで着くってさ」
「あ、はい………村雨君はよくこの店に来るんですか?」
「まぁね……高校からの腐れ縁で、俺がこのバーの雇われ店長になってから、ちょくちょく………俺、小松 裕司」
「………水木 茉穂です」
「へぇ~、アンタが……」
「私の話が村雨君から出てたんですか?」
「…………まぁね、たまにだけど」

 茉穂という女は不思議そうな顔をしている。

 カチャ。

「いらっしゃ………何だ、航か」
「あぁ?裕司が届けに来いって言ったから来てやったんじゃねぇか!裕司!週末だぞ!俺だって店あるんだから、抜け出して来たってのによ!」

 律儀に航は彬良のリクエストに応じるのが、友人を大事にして来た航らしい。

「彬良が頼んだんだよ、言うなら彬良に言え」
「うわぁ………やっぱりか……聞きたくねぇ名前出しやがったな……俺の料理食いたきゃ店に来いって言っとけや!」
「敷居高いんだとよ」
「………ちっ!気にしやがって……お前は来てんのによ」

 風呂敷には料理が詰まっている。彬良が女を口説きたい時は、必ず裕司や航に会わせていた。

「まぁまぁ……材料費はしっかり払わせるからよ……彬良はもう直ぐくるぜ?少し会ってけよ」
「………お前と音沙汰無い間、頻繁に会ってたよ、見なくていいや……店を親父に任せて、羽美も手伝ってるが、行かねぇと」
「そっか、仕方ねぇな……羽美は妊娠中なのに、働かせるなよな」

 最近、羽美が妊娠したと裕司は紗耶香から聞いていた。連絡を取り合っていて、紗耶香も仕事でピリピリした空気が無くなってきているので、羽美の存在は有り難い。

「アイツが好きでやってんだよ……じゃあな」

 だが、航は茉穂をチラ見するだけ見て、挨拶もしないのが気になった裕司だが、早々に立ち去られてしまう。

 カチャ。

 ―――何だよ、アイツ

「はい……どうぞ」
「…………え!?」

 重箱を開け、美味しそうな料理が詰められていて、裕司も食べたくなる。

 ―――美味そうだな、おい………

「彬良も俺も、今の男と長い付き合いでね、アイツは和食の料理人なのさ……彬良が店に行けないから、持って来させた」
「す、凄いですね………」
「食べていいよ」
「…………でも、村雨君来る迄待ってます」
「気にする奴じゃないよ、彬良は」

 裕司はそう言うと、日本酒を茉穂に出す。

「俺から1杯奢らせてくれ」
「そんな……悪いですよ………」
「彬良が女紹介するの、久々でね………ちょっと嬉しいんだ」
「そ、そうなんですか?」
本気マジ相手になると、俺達に会わせようとするからね」
「え!?」
「…………あれ?……付き合ってんじゃないの?」
「付き合ってないです!」
「…………ヤバ……〆られる……内緒ね!俺が言ったの」

 カチャ。

 バツが悪そうに、裕司は濁した所で、走って来たのだろうか、彬良が息荒く入って来た。

「裕司!てめぇ………余計な事言ってねぇだろうな?」
「…………いや?……今、航来てお前が頼んだもん持って来たから、俺達の関係話てた所」
「茉穂………本当か?」
「え!?………えっ………と……」

 ―――ヤベ、早とちりしちまった

 茉穂が慌てた様子を見て、裕司は焦る。

「………裕司、何言った……」
「暴れない事を約束したら言う」

 裕司は両手を掲げ、反抗心が無いアピールをしている。

「少し前に、この店で航と暴れて、親会社にこっぴどく怒られたからな……暴れんのは勘弁してくれ」
「んなものは、てめぇの都合だろうが!」
「り、料理食べない?美味しそうだなぁ!」

 ―――お、気が利くじゃん、この娘!

「ほらほら、茉穂ちゃんも居る事だし!な?」
付けするんじゃねぇよ!てめぇの彼女にチクるぞ!」
「あ、それは止めて………嫉妬心強いから」

 ―――冗談じゃねぇ!

「じゃ、言え」
「…………彬良の本気マジになる女は、俺や航に紹介する、て話をしたんだよ」
「なっ!」

 彬良の顔が急激に赤くなった。

「俺達の暗黙のルールだったろうが!マジの相手は紹介し合ってたろ!」
「航には、、て言ったのに、コイツに忘れた……」

 ―――そういう事ね

「茉穂………すまん……もう少し後で言いたかったが………俺……マジで茉穂を口説く事にしたから」
「…………!!」

 彬良も、本気になりそうな彼女が出来そうで、安心した裕司。あとは、親友の航だが、それが一番心配していると、航は知らない。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

無彩色なキミに恋をして。

氷萌
恋愛
『お嬢様  私に何なりと御用命ください』 紺色のスーツを身に纏い 眉目秀麗で優しい笑顔を持ち合わせる彼は 日本有するハイジュエリーブランド “Ripple crown”の代表取締役社長兼CEOであり わたしの父の秘書・執事でもある。 真白 燈冴(28歳) Togo Masiro 実は彼 仕事じゃ誰にでも優しく 澄んだ白い心を持つ王子のようなのに… 『何をご冗談を。  笑わせないでください。  俺が想っているのは緋奈星さま、貴女ただ1人。  なんなら、お望みとあれば  この気持ちをその体に刻んでも?』 漣 緋奈星(21歳) Hinase Sazanami わたしに向ける黒い笑顔は なぜか“男”だ。

お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~

ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。 2021/3/10 しおりを挟んでくださっている皆様へ。 こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。 しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗) 楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。 申しわけありません。 新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。 修正していないのと、若かりし頃の作品のため、 甘めに見てくださいm(__)m

サイファ ~少年と舞い降りた天使~

冴條玲
ファンタジー
今、勇者でも転生者でもない町人Sが邪神と相対する――!  **――*――** みんなは、イセカイテンセイって知ってる? 僕が住むこの世界は、二柱の神様のゲームの舞台だったんだって。 世界の命運を懸けて、光と闇のテンセイシャが試練を与えられて、僕はそのど真ん中で巻き込まれていたらしいんだけど。 僕がそれを知ることは、死ぬまで、なかったんだ。 知らないうちに、僕が二つの世界を救ってたなんてことも。 だけど、僕にとって大切なことは、僕のただ一人の女の子が、死が二人をわかつまで、ずっと、幸せそうな笑顔で僕の傍にいてくれたということ。 愛しい人達を、僕もまた助けてもらいながら、きちんと守れたということ。 僕は、みんな、大好きだったから。 たとえ、僕が町人Sっていう、モブキャラにすぎなかったとしても。 僕はこの世界に生まれて、みんなに出会えて、幸せだったし、楽しかったよ。 もしかしたら、あなたも、知らないうちに神様のゲームに巻き込まれて、知らないうちに世界を救っているかもしれないね。

処理中です...