【完結】プラトニックの恋が突然実ったら

Lynx🐈‍⬛

文字の大きさ
上 下
6 / 59
【あらすじ 紗耶香&裕司視点】Mにされた女はドS上司に翻弄される

任意同行

しおりを挟む

 警察沙汰になり、紗耶香は裕司を出してあげたかった。
 何故、裕司が航に暴行したのかは分からないが、はっきり分かっている事がある。裕司は紗耶香を決して裏切らないのだ。

 ―――何で、暴行事件を……私の為なの?これは……

 航が紗耶香を探しているとしたら店の事だが、取引は再開させた後で、用件は無い筈なのだ。
 警察に任意同行に連れて来られ、刑事に聞いた事を思い出す紗耶香。

『最近、会った筈だ………彼、小山内 航さんと』

 その刑事の話で、裕司と航が知り合いだと初めて知った。

『彼のお父さんが経営する割烹料亭の防犯カメラに貴方と小山内 航さんが映ってましてね………親しげに映ってましたな』
『あぁ……航ね………苗字なんて忘れたから誰かと思ったよ……数日前、思い出して顔見せに行ったわ』

 紗耶香は聞いてない、と思ったのだ。知り合いだったなら、話に出す筈だ。身辺調査書を読んだら、裕司でも分かる筈。それなのに『知らない』と言ったのだ。

 ―――小山内家を守りたかった?……まさか……

「お待たせしましたな」
「………私は何も知りませんよ……聞き付けて、着いたばかりだったんですから」
「………白河さん、あの小松 裕司には前科があるのはご存知で?」

 刑事との話が始まる。

「…………知ってます……以前も暴行事件を起こした、と」
「その以前の事件………小山内 航を庇う為の事件だったのも?」
「…………え?」
「あの2人、中学からよく攣るんでいたんですよ………親友と豪語し合う程にね………だが、小山内氏が実家の店を継ぐのに、素行の悪さが仇となり、真面目になった彼への恨みを小松氏は一気に受け入れたんですよ……それで逮捕、刑務所行きだ」
「…………」
「10年以上経って、お互いに接点が無くなっていた様だが、小松氏は小山内家へ出向いた………防犯カメラも確認したが、仲違いしそうな雰囲気でもない………小山内氏からは小松氏の話も出ない………あの店に行った理由も話さない……2人共に黙秘だ………何故だと思います?白河さん」
「わ、私には……裕司はよく知ってますが、小山内は最近名を知ったもので、知り合いだったと今日初めて知ったんですよ?」
「…………う~ん……最近……貴女の実家、白河酒造………小山内氏の店に干渉されたらしいじゃないですか」
「そ、それはもう止めてます!今は取引出来てますから!」

 立場が悪い。ボロが出そうだった紗耶香。次にもし、都合が悪い事を聞かれたら、と思うと、紗耶香は俯いてしまった。

「…………何?白河酒造の会長?」

 ―――お祖父様が何?

 刑事が紗耶香から離れて行くと、怒号が聞こえる。祖父の声だと気が付き、耳を研ぎ澄まして聞いているが、内容迄は聞こえて来ない。所々切れて聞こえてきたからだ。

「………白河さん、お帰り頂いて結構ですよ」
「…………ゆ、裕司は?」
「彼はです」
「っ!」
「お祖父様がお迎えに来られてますから、どうぞ」
「…………また、話する必要は?」
「その時は伺います」

 紗耶香は直接、暴行に加わっていない、と裕司も刑事に話していたのと、紗耶香がその時のアリバイが確認が取れたから、と帰る事が出来たのだが、紗耶香の地獄はこれから始まる。

 バシンッ!バシンッ!

「お義父様!もうお止め下さい!」
「お父さん!」
「煩い!この馬鹿娘が!の使い方をまた間違えおって!」

 杖で、紗耶香の身体を折檻する白河酒造の会長で、祖父だ。
 任意同行を余儀なくされ、白河会長が警察に圧力を掛け、紗耶香のアリバイも確認が取れた為帰れたのだ。
 紗耶香は恐怖に怯えながら、床に這いつくばる。

「謹慎せい!1歩も外に出すな!」
「うぅ………うっ…………」
「紗耶香………」
「っ!」

 パシッ!

 紗耶香に駆け寄る紗耶香の両親。だが、紗耶香はその両親を跳ね除けた。

「触らないで………アンタ達が、私に何が出来るのよ………役立たずの癖に……」

 紗耶香の両親への八つ当たり。
 部屋で手当てをメイドにして貰うが、紗耶香の背中は傷だらけだった。例え、メイドであろうと見られたくはない。
 手当てを終えると、部屋を真っ暗にする方が、紗耶香は落ち着いた。

「…………裕司………」

 紗耶香は祖父のでいるのも疲れ果ていた。闇から抜け出したい、ずっと思っていた。裕司と初めて会ってから、その思いが強くなっている。
 いつの間にか、紗耶香は眠ってしまい、家の中が騒がしく、それで目が覚めた紗耶香。
 慌てふためきながら、祖父と父が出て行く。

「何があったの?」
「何でも白河酒造の株が買占められている、と………」
「何ですって!私も出掛ける準備するわ!」

 いくら謹慎を命令されようが、会社の一大事に、紗耶香が何もしないのは、祖父はそちらの方に逆鱗に触れるだろう、と急ぎ会社へと向かった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

愛する貴方の心から消えた私は…

矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。 周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。  …彼は絶対に生きている。 そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。 だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。 「すまない、君を愛せない」 そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。 *設定はゆるいです。

俺は彼女に養われたい

のあはむら
恋愛
働かずに楽して生きる――それが主人公・桐崎霧の昔からの夢。幼い頃から貧しい家庭で育った霧は、「将来はお金持ちの女性と結婚してヒモになる」という不純極まりない目標を胸に抱いていた。だが、その夢を実現するためには、まず金持ちの女性と出会わなければならない。 そこで霧が目をつけたのは、大金持ちしか通えない超名門校「桜華院学園」。家庭の経済状況では到底通えないはずだったが、死に物狂いで勉強を重ね、特待生として入学を勝ち取った。 ところが、いざ入学してみるとそこはセレブだらけの異世界。性格のクセが強く一筋縄ではいかない相手ばかりだ。おまけに霧を敵視する女子も出現し、霧の前途は波乱だらけ! 「ヒモになるのも楽じゃない……!」 果たして桐崎はお金持ち女子と付き合い、夢のヒモライフを手に入れられるのか? ※他のサイトでも掲載しています。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

処理中です...