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【あらすじ 紗耶香&裕司視点】Mにされた女はドS上司に翻弄される
闇の中で
しおりを挟むある日の白河家、書斎。
「お祖父様、お呼びですか?」
祖父に呼び出された娘は書斎の入口に立つ。
「紗耶香、こちらに来なさい」
「……………はい」
紗耶香は、足重く祖父の座るソファの近くに来る。座る事は許されない。『座れ』と言われなければ。
「………速水物産、知っているな?」
「はい、名前は」
「そこの速水社長の次男、速水 律也を落とせ」
「落とせ、とはどういう意味でしょうか?」
「………そうか、お前は男を知らんな……この速水物産を乗っ取るつもりでいる……業務提携の条件に、お前とその男を結婚させ、ゆくゆくは速水物産を白河酒造の傘下に入れるつもりだ」
「…………結婚……お見合いをするのですか?」
「どんな手段を使っても構わん」
乗っ取る意図はいいが、何故次男なのか、と疑問も出る。長男は、次男を婿養子にするのか、その他諸々、紗耶香の脳裏に疑問が湧いた。
「身辺調査がコレだ……読めば理解する筈だ。お前ならな」
「…………はい……お預かりします」
テーブルの上に封筒がある。この家にある物は全て祖父の物だ。祖父の機嫌を損ねる言葉使い、態度をする事も許されない。
「駒の使用も許そう……何としてもこの男と結婚しろ……いいな、紗耶香……お前も駒だという事を忘れるな」
「………はい…………」
「行け」
「失礼します」
退出も、勝手に出来ない為、紗耶香は祖父の一言一句見逃せない。
書斎を退出し、部屋へと戻ろうと廊下を歩く。
「さ、紗耶香……」
「…………何?」
「お父さんは何の用だった?」
「………何でもいいでしょ!アンタはさっさと与えられた仕事でもしなさいよ!」
「紗耶香ちゃん、お父様になんて口の聞き方………」
「…………父親なら父親らしく、母親なら母親らしくしなさいよ!ビクビクビクビク、お祖父様のご機嫌取るしか出来ない能無し!」
完全に八つ当たりだった。
祖父は自分の息子より、経営の才がある紗耶香を見出すと、息子を邪険しただ社長の座に据え置くだけの人形にした。一心に紗耶香に教育をし、祖父の駒に仕立て挙げられ、紗耶香は表裏極端の娘に成長してしまったのだ。
その甲斐あり、紗耶香は両親に迄駒扱いをする様になり、それは紗耶香の心を疲弊して行ってしまう。逃げ出すタイミングが見付からなかったからだ。
「ふん!」
鼻で両親を嘲笑い、部屋へと入るとランプシェードの灯りだけで、身辺調査書を読み漁る。
―――森本?何故苗字を変えて仕事してるの?
速水物産、速水律也は森本と名乗り営業係長をしていた。兄、大河は常務をしており、離婚歴もある。
―――離婚歴があるから次男に?………あ……そういう事ね……バイセクシャルなら結婚しても子供出来ないからか………OK、覚えた………几帳面で真面目そうな男ね……でも性癖が………私にその相手させるの?お祖父様……
そして、下調べを綿密にし、律也と初めて会った日。
「紗耶香さん、誰かに言われて来ました?」
「…………ぇ、え?」
「……………いえ、そうでないならいいんです……お気を付けてお帰り下さい」
速水物産の常務室で初めて会った律也に帰り際に言われた言葉だ。一瞬何を言われたのか分からず戸惑ってしまったが、戸惑ってはいけなかったのだ。
入念に下調べし、律也の好み迄調べ、好きそうな服を選び会いに行った。それが初日に躓いたのだ、と気が付きもしなかったのだ。
おかしい、と思いながら不安と苛立ちが沸き起こる。
「よぉ、紗耶香」
「………裕司、店は?」
その夜、紗耶香がオーナーを勤めるクラブに来ていると、お目付け役の裕司が取り巻きとやって来た。
「んなもん、他の奴に任せてきたぜ」
「首になっても知らないから」
紗耶香の隣に平然と座り、タバコに火を着ける裕司。
裕司は紗耶香の駒だと、周囲に周知する為だ。
「要るか?」
「頂戴………切れたから」
裕司が吸いかけのタバコを紗耶香に咥えさせ、裕司は新たにタバコの火を紗耶香のタバコから貰う。
それが、唯一の裕司との触れ合える行為。そして、肩を抱く振りをして触れてはくれなかった。
「見合いしたんだって?紗耶香」
「…………もう聞いたの?」
「そりゃ、耳に入るさ……俺は紗耶香のお目付け役だからな」
「っ!」
泣きたくなる。でも泣けない紗耶香。好きな人に、知られたくなかった。
裕司はどう思うのか。紗耶香が結婚してしまったら、誰が裕司の事を理解出来るのか。裕司にとって、紗耶香の結婚は如何でもいいかもしれないと思うと辛かった。
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