上 下
33 / 51

久々に幼馴染と再会

しおりを挟む

「久しぶりだな、カチュア」
「本当にお久しぶりです、バッシュ様、ゴードン様」

 コーウェンの住む離宮に、バッシュとゴードン、デューク、グレゴリーが訪ねて来た。
 勿論、コーウェンも同席する席に、カチュアがお邪魔したのだが。
 婚約したものの、なかなか結婚の日取りを決めないコーウェンに、叱咤するという名目で、訪れたらしい、デューク達。

「コーウェン、結婚しないのか?」
「一緒に住んでいるんだろ?」

 デュークとグレゴリーが、コーウェンに聞くが、コーウェンは話を濁す。

「ライナスの動向が気になってねぇ……」
「………確かにな……俺も先月結婚はしたが、本当にいけ好かない奴だ……俺の行動に目を光らせている」

 デュークが足を組みふんぞり返る様は、鳥カチュアの記憶に鮮明に残っていた。
 房事に満足すると、その残骸の汚されたカチュアを眺めるのが日課だった。
 その様は、ライナスと兄弟だな、と思わざる得ない。
 窓際で、鳥カチュアは眺めている。

(…………バッシュ様もゴードン様もお元気そう……)

 コーウェンから、バッシュも結婚をしたと聞いて、鳥カチュアは屋敷に覗きに行くと、カチュアの記憶にあったように、バッシュは子種が無く、ゴードンと妻を共有した生活をしているらしい。
 過去カチュアにしていた様に結婚相手の令嬢は気の毒に思っていたが、デュークやバッシュ、グレゴリーの妻になった令嬢達も守らなければならない、と使命感に駆られて、シャルゼ達に妨害ぐらいは出来ないか、と相談してあった鳥カチュア。
 未だに、ライナスからの被害は無い様で、安心していた頃だった。

「カチュア、久しぶりに演奏を聞かせてくれないか?」
「………演奏ですか?」
「あ、僕も聞きたいな」
「……では、ヴァイオリン持ってきますね」

 過去カチュアは、応接室を出て行くと、男達は、コーウェンに詰め寄る。

「なぁ、コーウェン………まだカチュア嬢に手を出してないだろ!」
「そう見えるな」

 デュークとグレゴリーが興味津々だ。

「今は時期じゃないと思っているからね………でも、カチュアは誰にも渡さないよ、ゴードンにもライナスにもね」
「何でライナスが出てくる?」
「以前も言ったけど、ライナスが悪魔だからだよ………君達も妻達の動向を注視した方がいい。ライナスは強姦してまで、子供を孕ませかねないよ?」
「…………何だと?」
「ライナスに妻を寝取られないようにね」

 コーウェンの友人であるデューク達は顔を青褪めた。

「そ、それはお前にも言える事だろ?」
「僕はカチュアを隠してるからね、王宮では苛々した顔して、ライナスから睨まれてるよ」
「それでお前は何て返してる」
を匂わせてる。結婚式も未定、ただ婚約者としてカチュアとの関係を密に築いてる、とね」
「な、何でまた……」
「…………処女を奪えばあいつはやって来る。そして、妻の不貞を訴え、夫の管理不足を追求し、ライナスの子だと証明したら、ライナスの子として育てる。数多くの女を孕ませれば、それだけ王になる確率だって高くなる。男なら認知し、女は養女に出されるか、下賜される………」
「ライナスは去年結婚し、子供が産まれたばかりだぞ!」
「だから、だよ。結婚したから子供を作るのには問題にならない。だが、妻は年に何人も産めない。コルロフ王朝は多妻は持てないからね。既婚した令嬢を孕ませて息子を産ませるのが目的さ」
「はっ!馬鹿げてる!いくらライナスだってそんなバレる様な事するかよ!」

 グレゴリーが、コーウェンの話を信じようとしない。
 バッシュもゴードンも半信半疑だ。

「コーウェン………どうやって妻達は強姦されてるか知っているなら教えてくれ…………女等、子供を産ませる為の道具だ、その考えは俺は変わる事はない……父上がそうだったし、そう思ってる。だから、妻を残虐なライナスに俺の子供を殺させないように、会わせないようにはしているんだが、自分の妻以外の女を強姦というのはあまりにも安直な考えではないか?」
「そうだ、殺すの間違えじゃないのか!?」

 デュークは妻を守る為に、監禁していたのをカチュアは気付いていなかった。
 ただ、監禁していつでも抱くつもりなんだとばかり思っていたのだ。
 お互いに寄り添える前に、あの行動に起こされ、カチュアは完全に心を閉していたから、デュークの事を考える事もなかったのだ。

(…………しっかり話合えていたら、変わってたのかしら……)

 今更、デュークの妻になる事もないが、歪な愛情表現に翻弄されたデュークに同情する。

「証拠は見せられないけど、証明する人は居るよ………既に被害者は出てる……去年結婚した令嬢2人、一昨年に結婚し去年出産した令嬢1人」
「………は?」
「調べるさせるの苦労したよ、なかなか隙をみせない奴だから」
「!!」
「俺達の妻達も狙われると?」
「そう思っているよ………だから、僕はカチュアをまだ抱かないんだ。僕だけが求める訳にはいかないし、カチュアが僕を好きになってないからね」

 デュークやグレゴリーはそわそわしている。
 結婚した令嬢が好きになっているのかは分からないが、自分の女はという存在を取られていい気はしない。
 バッシュもまた然り。
 ゴードンは握り拳を膝の上で作っている。

「コーウェン………頼む………カチュアに手を出さないでくれ…………」
「出してないと言っているじゃないか」
「破談して、俺に譲ってくれ………カチュアを王になる可能性のある男に手を出されたくない!コーウェン、お前にもだ!ライナスはお前にも敵視している!結婚したら狙われるだろ!」
「…………カチュアはかい?ゴードン」
「!!」
「僕がに拘るのも、もし結婚して、カチュアがライナスに強姦されたら、証明出来るのもあるから、僕はライナスを排除する迄我慢してるんだ。その間、カチュアとの距離を詰めたいとも思っている。彼女には言ってないけど、僕は彼女を愛しいと思ってるよ」
(…………コ、コーウェン様……)

 コーウェンの告白に、デューク達は驚いた。
 花嫁探しの夜会の指名迄、結婚する気も無いと断言していたコーウェンが変わったのだ。
 窓辺から覗く鳥カチュアはコーウェンの言葉に射抜かれた衝撃が走った。
 すると、コーウェンは鳥カチュアが隠れている方へ目線を送ったのである。
 カチュアの精霊からの加護があると分かるオーラで、コーウェンにはカチュアが何処に居るかさえ、もう隠せない様だった。
 
 コンコン。

「…………し、失礼します……あ、あの私、今日調子が悪い様で、ヴァイオリンを披露するのはご勘弁願います………申し訳ありません……」

 過去カチュアは頭を下げながら、失礼な事だと思うのに、全くヴァイオリンを弾く気分になれず、逃げるように応接室の扉を締めた。

「………聞いてたな」
「あぁ、ばっちり」
「…………ヴァイオリンが聞けなくて残念」
「コーウェン、お前戻ってくるの見計らってわざと聞かせたな?」
「面向かって言うのは照れ臭いじゃないか」
(…………面向かって言ったじゃないの……)

 鳥カチュアも過去カチュアもドキドキが止まらない。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18】聖女のお役目【完結済】

ワシ蔵
恋愛
平凡なOLの加賀美紗香は、ある日入浴中に、突然異世界へ転移してしまう。 その国には、聖女が騎士たちに祝福を与えるという伝説があった。 紗香は、その聖女として召喚されたのだと言う。 祭壇に捧げられた聖女は、今日も騎士達に祝福を与える。 ※性描写有りは★マークです。 ※肉体的に複数と触れ合うため「逆ハーレム」タグをつけていますが、精神的にはほとんど1対1です。

【R18】純情聖女と護衛騎士〜聖なるおっぱいで太くて硬いものを挟むお仕事です〜

河津ミネ
恋愛
フウリ(23)は『眠り姫』と呼ばれる、もうすぐ引退の決まっている聖女だ。 身体に現れた聖紋から聖水晶に癒しの力を与え続けて13年、そろそろ聖女としての力も衰えてきたので引退後は悠々自適の生活をする予定だ。 フウリ付きの聖騎士キース(18)とはもう8年の付き合いでお別れするのが少しさみしいな……と思いつつ日課のお昼寝をしていると、なんだか胸のあたりに違和感が。 目を開けるとキースがフウリの白く豊満なおっぱいを見つめながらあやしい動きをしていて――!?

【R18】少年のフリした聖女は触手にアンアン喘がされ、ついでに後ろで想い人もアンアンしています

アマンダ
恋愛
女神さまからのご命令により、男のフリして聖女として召喚されたミコトは、世界を救う旅の途中、ダンジョン内のエロモンスターの餌食となる。 想い人の獣人騎士と共に。 彼の運命の番いに選ばれなかった聖女は必死で快楽を堪えようと耐えるが、その姿を見た獣人騎士が……? 連載中の『世界のピンチが救われるまで本能に従ってはいけません!!〜少年聖女と獣人騎士の攻防戦〜』のR18ver.となっています!本編を見なくてもわかるようになっています。前後編です!! ご好評につき続編『触手に犯される少年聖女を見て興奮した俺はヒトとして獣人として最低です』もUPしましたのでよかったらお読みください!!

【完結】竿師、娼婦に堕ちる月の夜

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 首輪をされた女が幌ぐらい部屋のベッドの上で、裸にされていた。その女を囲む上半身裸の男達。  誰が閑静な洋館の1部屋で、この様な事が行われるのか、外からは思いもよらなかった。何故なら、この女は新しくメイドとしてやって来た女だったからだ。  主人の身の回りの世話や家事等の求人情報を紹介され来ただけである。  時は大正、西洋文化に侵食され始めた恋物語―。

[R18] 18禁ゲームの世界に御招待! 王子とヤらなきゃゲームが進まない。そんなのお断りします。

ピエール
恋愛
R18 がっつりエロです。ご注意下さい えーー!! 転生したら、いきなり推しと リアルセッ○スの真っ最中!!! ここって、もしかしたら??? 18禁PCゲーム ラブキャッスル[愛と欲望の宮廷]の世界 私って悪役令嬢のカトリーヌに転生しちゃってるの??? カトリーヌって•••、あの、淫乱の••• マズイ、非常にマズイ、貞操の危機だ!!! 私、確か、彼氏とドライブ中に事故に遭い•••• 異世界転生って事は、絶対彼氏も転生しているはず! だって[ラノベ]ではそれがお約束! 彼を探して、一緒に こんな世界から逃げ出してやる! カトリーヌの身体に、男達のイヤラシイ魔の手が伸びる。 果たして、主人公は、数々のエロイベントを乗り切る事が出来るのか? ゲームはエンディングを迎える事が出来るのか? そして、彼氏の行方は••• 攻略対象別 オムニバスエロです。 完結しておりますので最後までお楽しみいただけます。 (攻略対象に変態もいます。ご注意下さい)   

皇帝陛下は皇妃を可愛がる~俺の可愛いお嫁さん、今日もいっぱい乱れてね?~

一ノ瀬 彩音
恋愛
ある国の皇帝である主人公は、とある理由から妻となったヒロインに毎日のように夜伽を命じる。 だが、彼女は恥ずかしいのか、いつも顔を真っ赤にして拒むのだ。 そんなある日、彼女はついに自分から求めるようになるのだが……。 ※この物語はフィクションです。 R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。

【R18】触手に犯された少年聖女を見て興奮した俺はヒトとして獣人として最低です

アマンダ
恋愛
獣人騎士のアルは、護衛対象である少年と共に、ダンジョンでエロモンスターに捕まってしまう。ヌルヌルの触手が与える快楽から逃れようと顔を上げると、顔を赤らめ恥じらう少年の痴態が――――。 連載中の『世界のピンチが救われるまで本能に従ってはいけません!!〜少年聖女と獣人騎士の攻防戦〜』のR18ver.となります。おなじく『男のフリした聖女は触手にアンアン喘がされ、ついでに想い人の獣人騎士も後ろでアンアンしています。』の続編・ヒーロー視点となっています。 本編は読まなくてもわかるようになってますがヒロイン視点を先に読んでから、お読みいただくのが作者のおすすめです! ヒーロー本人はBLだと思ってますが、残念、BLではありません。

大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました

扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!? *こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。 ―― ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。 そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。 その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。 結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。 が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。 彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。 しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。 どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。 そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。 ――もしかして、これは嫌がらせ? メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。 「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」 どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……? *WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。

処理中です...