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再び過去に戻るか否か

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 過去カチュアの強姦されたその夜、帰って来たバッシュとゴードンに気絶した全裸の姿で発見された過去カチュア。
 過去カチュアは意識が戻り、泣きじゃくった。
 だが、バッシュやゴードンがいくら相手の名を聞いても、過去カチュアは言えなかった。
 泣いてばかりで興奮している。
 侍女達が湯浴みを手伝うという申出も信用出来ない。
 鳥カチュアの姿はいつしか部屋から消えており、過去カチュアも余裕がなく気が付く事もなかった。

「カチュア………誰にヤラれたんだ………答えてくれ」
「ひっく………ひっく……」
「許さない……絶対に……」

 バッシュもゴードンも冷静さを保つ事が限界だった。

「カチュア、とりあえず湯浴みしよう。侍女達に見られたくないなら、俺達が手伝う」
「兄上、俺達にも見られたくないだろ……」
「そ、そうだな……連れてってやるから、ゆっくり入っておいで」

 侵入者は、バッシュ達が帰って来るギリギリ迄居たという。
 侍従達は、閉じ込められており、静寂な屋敷に不審がったバッシュとゴードンが、屋敷中確認して回ったが、証拠となるものはカチュアの身体に残された残骸のみ。
 だが、流してしまえば証拠は無いのだ。

「そういえば、カチュアの鳥は?」
「…………いつもならこの時間はカチュアから離れなかったのに」
「………あの子………助けようと………叩かれて………」
「叩かれた?でも居ないぞ?」
「…………そんな………筈は………」

          ✧✧✧✧✧

 鳥カチュアは、侵入者に叩かれて直ぐ、シャルゼにより連れ出されていた。
 コーウェンからジュームに知らされたのもあり、コーウェンの屋敷に集まっている。

「僕はバッシュの屋敷に行ってくるよ………多分、僕の予想通りなら、強姦したのはライナスだから、確認してくる」
「十中八九その通りだ………デュークの妻であった時も、結婚式後にカチュアを強姦して、息子を産ませてる………カチュアはデュークには言えないまま、10年我慢してた。だが、産まされた息子が王位継承の権利を持つと、カチュアの不貞を露呈させたライナスは、デュークの訴え虚しく、他の罪を擦り付けてデュークは処刑されたんだ………その後、その息子はライナス以上の残虐性を持ち、ライナスを殺すと、国や大陸を巻き込み海に沈めた………ライナスの息子は、カルディア様が封印した悪魔だったのさ」
「…………な……っ………んだって……」
「だから、カチュアはデュークの妻になるのを拒んだんだが……」

 シャルゼが、知らなかったカチュアの10年を話す。
 簡潔だが、充分理解出来る内容だった。

「………ライナス殿下は……」
「カチュア!!起きたか!!」
「…………?ねぇ!無事なの!?」

 意識を取り戻した鳥カチュアは、過去カチュアを心配し、辺りを見渡す。
 心配そうに見つめる精霊達とコーウェン。
 その表情で鳥カチュアも理解した。

「………助けられなかったのね……」
「………カチュア嬢、ライナスは何故君を狙うのか分かるかい?」
「…………コーウェン様……………はい……」

 鳥カチュアは、俯くとポツリポツリと語り始めた。

「ライナス殿下は、結婚適齢期の優秀な王族の男性の既婚者の妻に、ご自分の子を孕ませたいのだそうです………そうして産ませた子が男の子であれば、妻の不貞を訴えた後、子を自分の子として育てるのだと………次代の王になるには、その者の子が優秀でなければならないから、と………子は多ければ多い程いい、と………」
「………カチュア嬢……時を遡って、僕の妻になりなさい。僕なら匿ってあげられるかもしれない」
「………え?ですが、それは難しい、てシャルゼが………」
「…………ジューム、カルマ、アトモス……協力してくれるか?」
「…………他の精霊達も呼ばねばな」

 シャルゼが、自分以外の精霊達に確認をすると、ジュームから順に口を出した。

「やっぱり、そうなるのかな、と思ったわ」
「………気の毒過ぎて、今回だけだぞ、大目に見るの………だが、他の奴ら引っ張って来なきゃならねぇな」
「アトモス頼めるか?」
「…………面倒くせぇ奴居るけど何とか説得してやるよ」
「………皆………」
「………カチュア嬢、過去の君は僕の事を眼中に無かっただろう?そのままで良いんだが、を興味持たせられるのかな?」
「…………そ、それは私にも分かりませんけど………」
「大丈夫じゃないかしら?鳥の姿のこの子が居なかった時と比べたら、貴方はカチュアに興味を持ったんだから…………1000年毎に、カルディア様が生まれ変わるのには、カルディア様が末裔の中から選ばれ、生まれ変わった女が好きになる人が出来るかどうかだし」
「………好きになる人…」
「そうよ、毎回ね」

 カルマの言葉には、カチュアは勿論、コーウェンも驚いた。

「わ、私………精霊なんて見えなかったわよ?この姿になる迄」
「それでも、カルディア様が選んだのはカチュアだ。カルディア様が力を解放する時、カチュアも聖女としての役割が始まる」

 シャルゼは説明を続ける。

「聖女カルディアが力を解放したら、私は私で無くなるの?」
「無くならんぞ。カチュアの性格のままだ。カルディア様も、人間の時の名はあったしな。聖女の力こそがなのさ」
「…………よく分かんない」

 カチュアの理解力が追い付かない。

「まぁ、聖女の力が解放されたら分かるさ」

 と、精霊達は期待を込めてカチュアに言った。

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