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閉栓

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 メイリーンが、ラノック公爵家の夜会からヒューマに貪られて、起きたのは翌日の午後だった。

「…………ん……んんっ……」
「おはようございます、メイリーン様」
「…………おはようございます……って……今は朝?」
「夕刻ですよ」

 ラビアン伯爵邸の侍女達が、メイリーンの起床により声を掛けて来る。

「え!………わ、わたくしそんなに寝ていたの?………えっと……ラノック公爵邸の夜会の翌日かしら?」
「はい………旦那様は、メイリーン様はお疲れだから、と起きる迄起こさない様に、と仰るのでそのままに……お食事もご入浴も直ぐにご準備出来ますよ?何方になさいます?」
「…………に、入浴で……あ、あの……薬湯にしてもらえるかしら?ひ、疲労度が半端なくて……」
「はい、薬湯をご用意しております」

 室内には侍女達しか居らず、ヒューマの姿は見当たらない。

「ヒューマ………ラビアン伯爵様は?」
「旦那様でしたら、登城しておりますよ」
「…………体力凄まじいわね……」
「獣人ですから……それでも、午前中は寝ていらっしゃいましたよ」
「そ、そうですか…………いたたたた………」
「お手をお貸し致します」
「あ、ありがとう」

 全裸にバスローブを羽織らせてもらい、よたよたと風呂場へと歩くメイリーンに、介助する侍女はメイリーンを抱き上げた。

「え!」
「私も獣人なので、遠慮要りません」
「じょ、女性の獣人でも、わたくしを軽々持ち上げて大丈夫なの?」
「大丈夫ですよ……人間の男性はちょっと流石に気が引けますけど」
「侍従は皆獣人なのかしら?」
「いいえ、メイリーン様の警護にあたれる侍従は獣人が控えてますけど、人間の侍従も居ますよ。執事のクロード様は人間ですし」
「…………そうなのね……知らなかったわ」
「足元お気を付け下さい、メイリーン様………髪を洗わせて頂きますね」
「私はマッサージしますね」

 数人の侍女に囲まれ、身体を清められ薬湯に浸かるメイリーン。

 ―――薬湯の効果凄いわ……

 再び、疲労が取れる様な心地よさで、じわじわと疲れも取れていくと、またウトウトと眠くなるぐらいだ。

「…………旦那様がお帰りになられる様ですね」
「…………え?分かるの?」
「私達は獣人ですから、嗅覚で旦那様が邸近くに来ると分かります」
「凄いわ………わたくしには分からない能力だから尊敬してしまうわね」

 入浴していると、本当にヒューマが帰宅した様で、直ぐに部屋に入って来るなり、風呂場に顔を出した。

「メイリーン」
「…………ヒューマ様……お帰りなさいませ」
「お前達は下がれ」
「………は?」

 風呂場に顔を出すなり、いきなりヒューマが脱ぎ始めたので、侍女達は直ぐに下がっていく。それを見たメイリーンは嫌そうな顔をヒューマに見せた。

「不服か?」
「当たり前ですわ!入浴させて下さいませ!」
「手間が掛からないだろ?」

 ヒューマは服を脱ぎ、メイリーンの前に浸かると濡れた手で頬を触る。

「身体は平気か?」
「…………起きられてお風呂ですわ」
「クククッ………」
「手加減して下さいませ」
「難しい願いだな」
「何故ですの?」
後で説明してやろう………食事はまだだろう?」
「はい………この後用意してくれるそうですわ」
「食事しながら、昨夜の夜会の事で話もしよう……気になっていたんじゃないか?」
「…………わたくしに教えて大丈夫なのですか?気にはしてましたが」
「君はに入ってるからな、幸か不幸か」
「不幸以外何がありまして?」

 メイリーンにとっては、ラノック公爵との事は、後悔しているから不幸としか思ってはいない。

俺と出会えた………違うか?」
「…………っ!………ですわ!ある意味!」
「………言ってみろ、何処が不幸か……」
「………ぜ、絶倫ですわ!」
「気持ち良くよがり啼いて強請るのにか?」
「くっ!………もう、諦めろと仰るのでしょ?どうせ…………上がりますわ!」
「メイ………」

 湯船から出ようと、足を出したメイリーンの後ろから、抱き締めたヒューマ。

「きゃ!」

 その拍子に体勢を崩し、ヒューマに倒れ込んでしまう。

とは言わん………メイリーンが俺を諦めなければ、俺は君の傍に居る………番いだと俺は思っているからな」
「っ!…………で、でしたら、絶倫行為も控えて頂けると嬉しいですけど!」
「その理由は後で話すと言っただろう?…………今だって、抱きたいのを我慢しているんだぞ?分からない訳ではあるまい?」
「…………鬼畜!」

 メイリーンの手に握らせるヒューマの巨根。倒れ込んでしまった時に、ヒューマはメイリーンの手に握らせていたのだ。

「…………………2回程、尻に挿入させてくれ………ん?」
「なっ!」

 抵抗しようにも、ヒューマの愛撫が既に始まり、約束通り2回ヒューマにメイリーンは尻孔に吐き出されたのは言うまでもない。

「メイリーン、食後に食うから

 そう言うと、先に風呂から上がったヒューマは、タオルをメイリーンに掛けたと同時に抱き締めた上、尻孔にを埋め込む。

「ひゃっ!」
だ………溢して、椅子汚さない様にな」
「な、何を入れてっ!………抜きますわ!」
「それでもいいが、俺ので栓して食事になるぞ?」
「な、何て事を!」
「食事の間だけだ」

 メイリーンの文句を受け入れるつもりも無いヒューマは、自分の事を後回しにしてメイリーンに下着を着させ、風呂場から部屋に追い出される。
 部屋には、食事を準備するクロードや侍女や料理人等居て、抜くに抜けなくなってしまう

 ―――な、何て意地悪な!

「メイリーン様、お座り下さい。食事の準備出来ましたから」
「え、えぇ………」
「お、今日も美味そうだ」
「…………ヒューマ様……恨みますわよ」
「恨みなら、ちゃんと後で返して貰うさ」
「っ!」

 その鬼畜さに恨みさえも感じてはいるが、好きになっている相手であるのもあり、結局は許してしまうかもしれないと思うメイリーンはとにかく大人しくしておいた方が、この埋め込まれたの事を気にしないだろうと、ヒューマが座る迄待った。

「昨夜、ラノック公爵邸に忍び込み、突き落とされた男の身元はまだ分からないんだが、持っていた地図は、君が持っていたオルゴールに描かれた地図と同じ諸島にある島だと分かった」
「やはり、其処にある、と?」
「オルゴールの方の島は、ジャイロの部下が調べに行っている」
「ラノック公爵様の何をお調べに?謀反を企てていらっしゃるのですか?ラノック公爵様は」
「一言で言えばな………ラノックは以前から人間との共存に異を唱えていた」
「…………え?……ラノック公爵様の奥様の中には人間の方いらした様な………」
「あいつには番いは居ないぞ………あの侍らせているのは、マーキングされた女達で、俺とメイリーンの様な関係だ」
「…………そうなのですか?数人は、以前から連れ添っていらっしゃる方も見受けましたが」

 メイリーンの記憶では、ラノック公爵が好きだった頃から、昨日迄のラノック公爵の周辺の女達を思い出し、相変わらず女達はラノック公爵にベタベタと着いて回っていた。

「その理由は、食後に話す事にも関係する……謀反の疑う点では、ラノックはそう漏らしていた。その事を陛下に報告もしていて、陛下自身獣人と人間の混血ではあるし、混血種の人間との共存を続けていかれる意思は強く、ラノックの考えには否定的だ。だから俺は個人的に調べていたら、ちょっと有力な情報が手に入ってな」
「何ですの?その情報は」
「メイリーンは、イパ島以外の大陸や島々の人間と獣人の関係性は知っているか?」
「…………えぇ、大陸では獣人が人間の奴隷となっている国が多いと……」
「逃げた獣人は獣人だけで島に移住し暮らしていると聞くが、イパ島は大陸からは一番遠く、気象的に大陸からの航路が危ういらしく、迫害に来られていても、イパ島の人間や獣人達は、ただの侵略だと思われていたから、協力しあい戦ってきた歴史があり全て返り討ちにしてきた」
「歴史ではそうですわね」
「ラノックは、獣人達が奴隷になっているのを許さないんだ、と常日頃から言っていたのでな………独自でラノックを調べたら、獣人を奴隷にする首輪を手に入れていた」
「奴隷にする首輪?」
「人間が何故、力に敵わない獣人を奴隷に出来るのか、不思議だったんだ………知能で獣人を捕まえ、首輪を付けさせられ、その首輪は獣人では外す事が出来ない金属で出来ていたのを、ラノックは持っていた」

 まだ、ラノック公爵が謀反を企ててそうな内容では無いのだが、獣人を奴隷にしてしまう程の首輪を、ラノック公爵が持っていたのが怪しいと思うのは、メイリーンも過ぎってしまった。
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