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あれから……②
しおりを挟むタクシーが止まり、由真と翼希が降りた所は教会ではなく桐生家。
「何で、父さん家?」
「呼び出されてたの」
「ふ~ん………」
「先に入ってて………私は買い物してから入るから」
何度か由真や翼希は籍を入れてから、朱雀の家に来ている。
だからだろうか、違和感は無いと思っての事だろうと思っていた由真。玄関先で由真は翼希と別れ教会へと向かった。
しかし、翼希は由真の行き先を知っていた、という事に由真は全く気が付いていない。
「帰って来たか、翼希」
「…………あぁ、父さん……今日は宜しく頼むよ」
「全く………サプライズ等しなくても……」
「騙された振りをしてあげようかな、て」
由真が考えていた結婚式は、実は翼希がそうさせたのだ。
仕事を詰めて詰めて、由真に気を遣わせ、スケジュールを調整させて、数日だけでも休みを取らさせて、由真に知らせずに周辺から、結婚式を薦めさせ、翼希にサプライズさせてみたら、と提案させていたのだ。
丁度空けておいた翼希の休日に、教会の予約を入れさせたのも、翼希が元々頼んでいた事であり、朱雀も一役かっている。
ウェディングドレスも栄生に、翼希の由真に着せたいドレスを予め薦めておいて、由真がその中で選んだ物を、レンタルではなく購入している。
「回りくどい事を………お前も準備しなさい」
「分かってるよ。由真はドレスに着替える準備に時間掛かるから間に合う」
翼希のアシスタントは先に教会に行かせていて、撮影準備もしている。勿論、プロの写真家、朱雀も居る為、朱雀のアシスタントも準備を先に教会に行っている筈だ。
由真は自分がサプライズをしていると完全に思っている様で、翼希に踊らされている等知る由もない。
「由真!準備するよ!」
「ごめん、お待たせ!」
由真が着替えて、メイクをしている間、翼希もタキシードに着替えて隠れていた。
「全く、オーナー………由真さんに怒られても知りませんからね」
「感動の間違いだろ」
「驚かせたかったのに、逆に驚かせられたと知ったら」
「まぁ、それはそれじゃないか………その代わり身体で謝る」
「はいはい」
由真が準備終えると、まだ時間に余裕がある、と思っていた。だが、翼希が到着したという話はまだ届いてはいない。
「もう着いたかな………」
「桐生さん?」
「そう………教えてくれる筈なんだけど」
「由真ぁ………可愛いぞ!」
「お兄ちゃん、さっきから煩いし、お父さん泣いてるし」
そんな会話を由真が控室でしていると、教会のシスターから式の始まりの知らせ。
「え………翼希さん、来たのかな……」
「じゃ、由真!参列してるから!」
「真尋行くわよ」
「え?お母さん?」
「ゔっ…………由真ぁ……」
「え…………お兄ちゃん?お母さん?行っちゃうの?まだ時間あるよね………え?」
由真が知る式の予定時間より1時間は早いのだ。
「由真、幸せになるんだぞ」
「お父さん?………ま、まだ翼希さん来たって聞いてない……」
「翼希君はもう来ているから始まるんだろ」
「え?………翼希さんが着いたら、私に会いに来る手筈じゃ………」
「さぁ、翼希君が待ってる」
如何なっているか訳が分からない由真だが、翼希が居るのならそれでいい、と思い父と共に、バージンロードを歩く為に、教会の祭壇のある扉の前に立った。
その姿を、翼希と共に海外から帰って来たアシスタントがスーツを着て、由真と由真の父の写真を撮っている。
「え?」
「由真さん、おめでとうございます」
翼希のアシスタントも翼希のハードスケジュールに合わせて、休んで欲しくて式の事は由真は頼んではいなかった。それが、撮影スタッフとしてウェディングフォトを撮っている。
由真は、朱雀に頼んでいたのだ。朱雀のアシスタントも居たのだが、彼等もカメラを持っているのを由真は教会に来てから見ている。
確認しようにも賛美歌が流れ始めて、扉が開かれると、祭壇の前にはもう翼希が立っていて、由真を見つめていた。
「如何なってるの?」
「…………由真、翼希君が由真に内緒にしていたんだよ」
「え?」
「由真と結婚式を挙げたい、と翼希君は自分は関わってない、と思わせる様に、由真のしたい結婚式をとね………準備、大変だったろう?翼希君の仕事を煩わせる事になるから、内緒で考えるのは」
「…………知ってた……て事?」
「翼希君は由真に便乗して、サプライズにサプライズしたんだよ」
「…………何それ……分かりにくいサプライズ……2人して考えてる事同じじゃないの」
コソコソと小声で父と話す由真だが、怒る気にもならず、翼希に微笑みだけを返した。
「っ!」
すると、翼希は由真から目を逸し、顔を隠す。
「?」
それが、近くに来るとその意味が分かった。
由真の姿に照れている、と。
「…………押し倒したい……」
「!」
ポソッと呟いた翼希の一言に、由真も顔を赤らめた。
「んんっ…」
「「!」」
神聖なる教会で煩悩の塊の発言に、神父は咳払いしたので、恐らく聞こえたのだろう。
由真は、翼希と目を合わせ苦笑いした。
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