上 下
5 / 44

4

しおりを挟む

 翌日、仕事を終えた由真は、桐生の店へとやって来た。
 完全予約制のこの日、顔パスにするという桐生の言葉を信じ、店があるビルへと来ると、人だかりが出来ている。
 僅か30人程の定員数に対し、50人は集まっていた。

「すいません!今日のショーのチケットもしあったら売ってくれませんか!」
「…………え!」

 由真がビルに近付くにつれ、声を掛けられては足止めを食らう。
 由真だけでは無い。チケットを持っているであろうカップルも声を掛けられたりしているのだ。

「ごめんなさい、私もチケット無いんだけど、取材で入れる許可を貰ってるだけだから」
「じゃ、じゃあ私も同僚って事で連れてって下さい!」
「わ、私の一存では無理よ……」

 1人許せば、それを聞いていた人間も由真に願い出る可能性もある。チケットを持った人達が入れなくなるのは、営業妨害になりかねない。

「お願いします!」
「ごめんなさい!………チケット次回頑張って取って下さい!」

 ビルのエレベーターに乗る前に、店のスタッフだろう、チケットを確認してから通されていて、由真も社名と自分の名前を言った事で、スムーズにエレベーターに乗る事が出来た。

「相変わらず、転売してくれって多いよね、桐生 翼のショー」
「やっと俺達も取れたしな、誰が売るかっての」

 エレベーターに一緒に乗ったカップルもチケットを取るのに必死だったのかもしれない。それなのに、由真は顔パスで申し訳無さが込み上げていた。

「ようこそ、板倉さん」
「多部さん、すいません今日はお邪魔します。盛況ですね」
「毎回ファンが増えてるんです」

 バーテンダーの多部が忙しい中、由真を待ち構えていた様で、エレベーター前で待っていた。

「オーナーがショーの前にお会いになりたい、と」
「終わってから取材させてもらう筈では………」
「それも予定にありますが、先にもお会いになりたい、と」
「分かりました。案内して貰えるんですか?」
「はい、ご案内します」

 すると、多部に案内された場所は店の扉ではなく非常階段の扉。だが、その非常階段を開けると、階段だけではなく別の扉があった。

「この扉を入ると直通エレベーターがあるんです。それに乗って10階に上がって下さい。そこにオーナーが居ます」
「わ、分かりました」

 ショーの前は忙しいのではないのか、とも思ったが、呼び出しなら応じなければならない、と由真は了承すると、非常階段の傍の扉の鍵を開けた多部。

「ショー迄少し時間あるので、時間15分前になったら、お呼び出ししますから」
「それは桐生さんは知ってるんですよね」
「はい。ですが、オーナーとお楽しみになるなら、時間を忘れそうなので」
「た、楽しむって………違いますから!取材なので!」
「…………プッ……」
「っ!」

 多部の冗談だと、知らずに真面目に答えてしまって、笑われた由真。

「分かってますって………でも、オーナーが自室に入れる人間は少ないので、俺も少々驚いてるんです」
「そう………なんですか?」
「えぇ、他意は無いとは思ってますが………では、俺も店の準備がありますので」
「ありがとうございます」

 多部が店に戻って行くと、由真は直通のエレベーターに乗った。
 開閉扉と上下ボタンしかない、コンパクトなエレベーターに乗ると、直ぐに扉が開く。開けば、もう其処はリビングダイニングの広々としたフロアだ。

「やぁ、いらっしゃい。由真」
「こ、こんばんは……この広い部屋に住んでるんですか?桐生さん」
「まぁね、店からこの部屋の間はスタジオなんだ」
「スタジオ?」
「そう、俺専用の撮影スタジオ」
「このビルで撮ってたんだ」
「由真も取材期間中、見せてやるよ」

 窓も大きく取ったビルの最上階は、桐生の住居だったとは思わなかった。殺風景で物が必要最小限しか無い様に見えて、店のアダルトグッズ塗れの内装の方が、人間味溢れている気がした。

「由真?」
「は、はい!」
「アンタも今日のショーに協力してくれないか」
「え?」

 そう一言言った桐生は、由真をいきなり抱き寄せて腰を掴んだ。

「い、いきなり何ですか!」

 例え、緊縛を由真が桐生にお願いしていたからと言っても、取材の域の事で、スキンシップは望んではいない。

「悪いね、こっちにもさ……メリットってもんが欲しいのさ………最近、創作意欲が薄れて来たから、新しいモデルも探してたんだよね」
「そ、それに私を、て言うんですか!」
「いや?いきなり過ぎるし、由真の身体確認してないのに、ショーには出す訳ないだろ」
「じゃ、じゃあ何なんですか!」
「………コレ、入れといてくんない?」
「………え!」

 桐生が持っていた物が、由真の履いていたスカートの中に弄ると、下着の上から振動が与えられた。

「緊縛ショー中に、俺はアンタがショーを見ながら、想像してんのを見たいのさ」
「へ、変態じゃないですか!」
「SMプレイする事自体変態じゃないか………振動はさせないから安心しな」
「んっ……ふっ……」

 尻から弄られたアダルトグッズは由真の秘蕾に押し当てられて、由真も感じてしまう。

「入れた事あるんだろ?ローター」
「っんっ……桐……う……さ……」
「………っ!……いい顔するじゃん、アンタ……普段眼鏡外してろよ」

 眼鏡越しの顔を、近距離で見る男は桐生が初めてだ。そんな事を男に言われた事も、抱き寄せられた事もない由真は心拍が上がる。

「………っ!……ド近視なんです!」
「コンタクトにしたら?」
「あ………合わな………くて……」
「………ふ~ん、そっか………なら仕方ないな………」
「っああっ!」

 雑談して気を紛らわす事も出来なくなる由真。
 桐生は、下着の中にローターを入れたのだ。
 そのローターは、クロッチの上から由真の秘壺に押し込まれてしまった。

「これで良し………と……」
「良し、じゃありません!取らせて下さい!」
「振動は止めるって」

 由真は、桐生から解放され、スカートの上から秘部に手を当て、屈んでしまった。

「っ………んっ……」
「ほらな?」

 幾ら振動が止められても、入っている感覚は常にある。

「ショーが終わる迄協力してくれ」
「…………そ、そんな……」
「特等席も用意してあるし、由真はVIP待遇なんだから」
 
 そう桐生が言うと、多部からの連絡だろうか、桐生のスマートフォンが鳴った。

「………分かった、今から板倉さんと降りる」
「………へ?」
「始まるってさ………ほら、行こうか……立って」
「ま、まだ抜いて……」
「時間無い」
「………そ、そんな……」

 桐生の確信犯的な行動で、由真は振り回されている。
 ショーに穴を開ける訳にはいかず、桐生は由真の腕を取り立ち上がらせると、自室から連れ出されてしまった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

社長の奴隷

星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~

taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。 お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥ えっちめシーンの話には♥マークを付けています。 ミックスド★バスの第5弾です。

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

【R18】かわいいペットの躾け方。

春宮ともみ
恋愛
ドS ‪✕ ‬ドM・主従関係カップルの夜事情。 彼氏兼ご主人様の命令を破った彼女がお仕置きに玩具で弄ばれ、ご褒美を貰うまでのお話。  *** ※タグを必ずご確認ください ※作者が読みたいだけの性癖を詰め込んだ書きなぐり短編です ※表紙はpixabay様よりお借りしました

【完結】Mにされた女はドS上司セックスに翻弄される

Lynx🐈‍⬛
恋愛
OLの小山内羽美は26歳の平凡な女だった。恋愛も多くはないが人並に経験を重ね、そろそろ落ち着きたいと思い始めた頃、支社から異動して来た森本律也と出会った。 律也は、支社での営業成績が良く、本社勤務に抜擢され係長として赴任して来た期待された逸材だった。そんな将来性のある律也を狙うOLは後を絶たない。羽美もその律也へ思いを寄せていたのだが………。 ✱♡はHシーンです。 ✱続編とは違いますが(主人公変わるので)、次回作にこの話のキャラ達を出す予定です。 ✱これはシリーズ化してますが、他を読んでなくても分かる様には書いてあると思います。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

サディストの飼主さんに飼われてるマゾの日記。

恋愛
サディストの飼主さんに飼われてるマゾヒストのペット日記。 飼主さんが大好きです。 グロ表現、 性的表現もあります。 行為は「鬼畜系」なので苦手な人は見ないでください。 基本的に苦痛系のみですが 飼主さんとペットの関係は甘々です。 マゾ目線Only。 フィクションです。 ※ノンフィクションの方にアップしてたけど、混乱させそうなので別にしました。

処理中です...