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しおりを挟むルティアとリアンの結婚式の日程が決まった。
コートヴァルとマスヴェルの戦を締結させる手筈が整った事が大きい。
そして、締結条約の日迄日も無い。
両国の国王が、シャリーア国に来国して来る。
締結条約の条件として、ベルゼウス伯爵の犯した事を本人の極刑で幕を下ろす事だ。
それも、締結条約を3国の統治者が、ベルゼウス伯爵の処刑を見守る事になっている。
おかげで、ルティアとリアンは、外交の手始めでおもてなしをしなければならず、大忙しだった。
「違う!やり直し!」
「は、はいっ!」
隣国と言えど、風習もしきたりも違う。
挨拶1つ違ったり、宗教の違いで、食べれない物もあったりする。
その為の勉強を、ルティアは皇妃直々に学んでいた。
「良いですか、ルティア………貴女は両国の王を迎え入れなければならないのです。不快な思いをさせない事が一番大事。ダンスもそうですよ」
ルティアは両国の王と、国の代表曲のダンスを踊らなければならないのだ。
リアンは王妃、若しくは王女と。
治安維持の為、王子は来国しては来ないのだが、王のパートナーとして、王妃や王女が来るのだ。
王妃なら有り難いが、王女が来るマスヴェル国は、リアンに会いたがっている、と不穏な空気を感じていた。
それがあるから、ルティアは気が気でなく、ダンスに気が入らなかった。
「が、頑張ります………」
「明日ですよ、来国されるのは………しっかりなさい!」
気鬱な時程、皇妃の声は辛いものだった。
「はははっ!何でそんなに不安なんだよ、ティア」
「え………王女様でしょう?しかも歳近いって言うし………」
「ヤキモチ?」
「ゔっ………」
「可愛いなぁ………もう今日も目一杯食べちゃう!」
「だ、駄目!今日は駄目!」
「何でだよ」
「明日の事もあるし………緊張して失敗しそうだから、充分睡眠で補充しておきたい」
「…………分かったよ………仕方ないなぁ……外交終わったら覚悟してね、ティア」
「う、うん………」
たった数日しか滞在しない人でも、リアンが相手しなければならないのはルティアは嫌だった。
そして、翌日。
マスヴェル国の国王と王女ローズが来国した。
出迎えたのは代表して、ルティアとリアンだ。
他国の国賓を迎えて、お祭り騒ぎにならない今回の来賓。
シャリーア国の民は、近隣諸国の戦が終わるのを喜び、歓迎の雰囲気ではあったが、当事者である国はまだ緊張感が解ける事は出来ない様だ。
「ようこそ、シャリーア国へ………マスヴェル国王陛下」
「…………これはこれは、皇太子殿下の出迎え、嬉しい限りですな………此方の方は?」
「婚約者のルティアです」
「初めてお目に掛かり光栄でございます。ジェスター皇太子殿下の婚約者、ルティア・フェリエでございます」
「ジェスターぁぁぁっ!」
「っと!………と………ローズ!びっくりするじゃないか………全くお転婆は相変わらずだな」
「ローズ!国賓として来ているのだ!礼儀は如何した」
「ごめんなさ~い」
馬車から降りて来た王女に駆け寄られ、挨拶を邪魔され、リアンは抱き着いて来たローズを支える様に抱き締めていた。
「大丈夫だった?ジェスター」
「…………あぁ……もう止めてくれよ……彼女が居るんだから」
「彼女?」
「婚約者だよ………名はルティア」
「ルティアと申します。ローズ王女殿下」
「…………初めまして、ローズよ。ルティアちゃん」
垢抜けた王女らしくない振る舞いのローズ。
礼儀を弁えなければならない出迎えの場で、あまりにも的外れな行動に困惑したルティア。
そのルティアを、ローズはじっと見つめていた。
「ねぇ………ジェスター……」
「な、何だ?………止めろよ?ローズ………絶対にヤダからな!」
リアンはルティアの横で後退りし、ルティアの背後に隠れ様とする。
「いやぁねぇ………ジェスターにはもう頼まないわよ」
「じゃ、じゃあ何だよ!」
「彼女貸して?」
「…………は?……っ!…絶対に貸さん!」
貸す貸さない、と人を挟んで、物でもあるまいし、リアンとローズが押し問答し始めた。
「止めんか、ローズ!こうなる事が分かっているから、お前を連れて来たくなかったんだ………すまない、ルティア妃」
「い、いえ………あの先程から、私を貸す貸さない、て何なのでしょうか……」
「ルティアちゃん!絵の被写体になって!」
「駄目だ!」
「え?」
「絶対に貸さん!駄目だったら駄目だ!」
「だって、ジェスターもう可愛くないんだもん!大人の男、て感じに変わっちゃってさ………変わらないでよね!」
「何でお前の被写体の為に、俺の美体を改造しなきゃならない!ティアも駄目だ!ティアの美体は俺だけの物だ!」
---いやいや………私の身体は私の物だから……
確かにリアンの為の身体ではあるのだろうが、その為にルティアが居る訳ではない。
「良いじゃない!ジェスターは女装しなくて済むんだし!」
「言うなぁ!」
「女装?」
「ゔあぁぁぁぁっ!」
このハチャメチャな出迎えは、直ぐに皇妃に知らされ、リアンは怒られていた。
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