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57 *おまけエピ
しおりを挟む「知らないわよ!お父様の居場所なんて!」
此処は首都にあるベルゼウス伯爵邸。
断固登城を拒否するシスリーに、強制的に連れて行こうと、ライナスと部下達が囲っている。
しかも、シスリーは自室に閉じ籠もり、鍵が掛かっているので、シスリーの自室の窓の下と、繋がる扉全てに騎士が待機していた。
「任意で登城をしようとしない為、強制的に連行するぞ。貴女の母上はもう登城し、今皇太子殿下と皇妃陛下により、調べを受けている」
「そんな事をして許さないから!絶対にアンタ達に罰が落ちるわ!」
「…………はぁ……話にならん……扉をブチ破れ!」
「はっ!」
今更、爵位を気にして体裁を繕い、丁寧な扱い等出来る身分ではないだろう、ベルゼウス伯爵家だ。
ライナスも公爵公子であり、それでも相手が女だから、と丁寧に接してはいたが、シスリーの態度には我慢ならないらしい。
部下に命令し、扉をブチ破って、それでシスリーが怪我をしようと、生命があれば良しと判断した様だ。
扉越しで会話が無くなる事の方が問題となる。
幾ら、自害しそうにない女であろうと、感情的になる女程何をするか分からないからだ。
扉を開けると、入った騎士目掛け、シスリーが椅子を投げ付け、手当り次第物を投げ付けて来る。
なので、部屋中に香水が混ざったニオイで充満し、ライナスも掛かり捲った。
「臭いなぁ………ライナス」
「俺の部下達、皆同じニオイになって、鼻が腐りそうだ………気持ち悪い………風呂に入らせてくれ…………ケヴィンの時と言い、散々だ………」
シスリーを連行して乗せてきた馬車も、そのニオイが染み付いて取れないのだと、ライナスはボヤいていた。
護送し、今は別室に閉じ込めてはいるが、その部屋にもニオイは染み付くだろう。
今はリアンがシスリーの母親、マーガレットを取り調べ中で、終わってからシスリーに聞く事になる。
リアンの執務室で、鼻を摘むクレイオとベルイマンに思い切り笑われながら、ライナスは不機嫌だった。
「あはははっ!早く入って来いよ。駐屯地の風呂場なら何時でも入れるんだろ?」
「…………あぁ……あの女も香水がぶっ掛かってたから、また臭いまま取り調べするのは悲惨だがな」
「…………罪人用の着替えでも渡して、風呂に入って貰えばいいんじゃないの?」
「クレイオ殿下、そうしようとしましたがあの女は、こんな物着れるか、と投げ捨てまして……今は取り敢えず風呂に入らせてます………ですが、我儘言い放題で参りました……世話する侍女を寄越せだの、新しいドレスを出しておけだの」
「如何します?クレイオ殿下」
「要らないでしょ、渡す必要ある?着飾る必要も無いから、侍従用の制服を取り敢えず渡したら?」
「ですね………その様に………王城では皇妃陛下とティア以外、着飾る為の服は用意しませんから」
「…………風呂入ってくる……あぁ、臭い……」
「あぁ、行ってこい」
ライナスが数分執務室に居ただけなのに、もう香水のニオイが充満し、クレイオとベルイマンは窓を全開して、新鮮な空気を肺にめい一杯吸い込んで一息吐いた。
「はぁぁぁっ………自然な空気って美味かったんだな……」
「全くです………どれだけライナスは被ったんでしょうね」
「さぁね………シスリーの美への執着は結構な物だったからさ………所で、また義姉上をティアって言っちゃってるけど、兄上の前で本当に止めないとマズイでしょ、ベルイマン」
「また言ってました?………癖ですね、きっと……好意は無いんですよ、誤解されません様にお願いします」
「スヴェン卿は愛称呼びしてないんだから………僕も呼んでみようかな、て兄上に言ったら、凄い目で睨まれた………」
「善処します」
スヴェンはもうルティアを愛称呼びをしていないのだから、リアンが腹立つのは分かりきっている事だ。
長く続くと、心狭のリアンにいつか殺され兼ねない、殺意さえも感じていたクレイオとベルイマンだった。
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