皇太子と結婚したくないので、他を探して下さい【完結】

Lynx🐈‍⬛

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35 *リアン視点

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 スヴェンとシスリーの件から、暫く経過した頃、シスリーはスヴェンには近付く事が無くなった。
 ベルゼウス伯爵の計画が変更になったのか、シスリーがスヴェンに見切りをつけたかは定かではなかったが、相変わらずベルゼウス伯爵の資産は右肩上がりで伸びていて、証拠らしい証拠も掴めないままだった。
 スヴェンの仮説は調べてはいるものの、ベルゼウス伯爵領地から収穫される穀物類の輸出を調べに密偵を送ってはいるが、思う様にはいかなかった。
 密偵達がと扱われ、粛清され始めていたからだった。

「…………こうも、立て続けに死体で見つかると、益々怪しいな………」
「そうですよね………腕の立つ者に行かせてる筈なんですが………」
「…………を本当にに仕立てて襲ってみるか……」

 リアンの執務室で、ライナスとベルイマンの3人で話をしている。

「危険では?」
だぞ?………目くじらを立てる程の警護をして輸出はしていない筈だ」
「輸出先に潜伏させた密偵もそろそろ知らせが来てもおかしくないんですが、其方から崩せませんかね?」
「そうなんだよなぁ………」

 難航している証拠集めに、スヴェンが加わり進展するかと思っていたリアンだが、他国を巻き込む事なので、移動距離や動きづらさからなかなか進まなかった。

「あぁぁぁっ!もう!」

 其処へ、クレイオが苛立ちながら執務室へと入って来る。

「如何した?クレイオ」
「如何したもこうしたも………シスリーの色仕掛けが本当に迷惑!」
「お前には興味無さそうだ、と言っていたんじゃなかったか?ベルゼウス伯爵令嬢は、皇太子妃を狙ってるんだぞ?」
「鞍替えしたんですかね?」

 ライナスも話に入ってくると、クレイオは益々ウンザリ顔を見せる。

「僕はオマケか?ライナス!」
「そうは申し上げてませんよ、クレイオ殿下」
「鞍替えなんて言われたら、僕なら簡単に落とせる、て言ってる様なものじゃないか!駐屯地の騎士達にもいい顔するシスリーを知らないフリするのも疲れるんだよ、僕は!兄上を直接落としに行けないからって、僕を使わないで欲しいね!」
「当初の予定では、お前がベルゼウス伯爵令嬢を落とす予定だったんだから、情報聞き出せよ」
「…………言わないよ……あの女」
「口が軽そうなのにですか?」
「自分や家の事は一切言わないね………徹底してるよ………まぁ、自慢話や人を貶す言葉は煩いぐらい聞かされるけど」
「…………クレイオ」
「何?兄上」
「…………お前さ………ベルゼウス伯爵の領地に行く気ないか?」
「殿下!何を仰るんですか!」

 先程、密偵達が死体で見つかる話をしていたばかりだ。
 そんな話をしていたので、クレイオをベルゼウス伯爵領へ行かせる事は危険が伴うかもしれない。

「クレイオには手出し出来ないから頼むんだろ」
「…………何?何?……僕に面白そうな事やらせてくれるの?」
「お前に危険な事はさせない。するのはお前に同行する密偵達だ」
「密偵達が動きやすくする為に、目を欺くって事?」
「そう」
「ベルゼウス伯爵領じゃなくても良い。ベルゼウス伯爵領から輸出していく外国に視察でもいいぞ。どっちがいい?予定捩じ込んでやる」
「…………ん~……兄上の婚約発表時迄帰って来られるとしたら、ベルゼウス伯爵領だよね」
「そうだな………が取れるなら何方でも構わない」
「…………いいよ、ベルゼウス伯爵領に行ってあげる」
「クレイオ殿下!よろしいのですか?」

 危険を伴いそうな事なのに、リアンの提案を受け入れたクレイオ。

「僕が行けば、密偵も動きやすいんだろ?」
「ベルゼウス伯爵は娘を皇族に入れたいんだから、お前に危害は加える事はしないだろう……まぁ、貞操の危機はあるかもしれないが、断罪する予定のベルゼウス伯爵の戯言なんぞ、捻り潰してやるから安心しろ」
「……………あはははっ!何?シスリーの手解き付きな訳?据膳食わぬは男の恥だね、もし責任取れ、て言われたら、捻り潰してくれるの?兄上」
「当たり前だ………ベルゼウス伯爵邸に居る間は、念の為に避妊薬飲んでおけよ………責任追及された所で、ベルゼウス伯爵令嬢にはがあるからな」
「……………あぁ、スヴェンですか」
「そういう事」

 ベルゼウス伯爵の断罪出来た時、クレイオと一夜を共にした、とか吐かした場合、純潔を奪われたから責任を、と言われかねない。
 シスリーが純潔でない事は、スヴェンだけでなく他の貴族令息も居る筈で、証人は立てられるのだ。
 何人もの男を腑抜けにし、カジノに連れ込み、金を巻き上げさせてきたであろうシスリーに、皇太子妃を望める訳はない。
 貴族達を破産に追い込み、近隣諸国へ武器を買わせ、その国を滅ぼそうと戦を助長させた罪は大きいのだ。
 そんな臣下は、シャリーア国には要らない、とリアンだけでなく皇族は思っている。

「じゃあ、ベルゼウス伯爵領に視察行ける様に手を回して来る」
「あぁ、俺もベルゼウス伯爵に話を通してやる」

 案の定、ベルゼウス伯爵同行の元、クレイオの視察は直ぐに可能となった。
 本当は必要は無かったが、シスリーもベルゼウス伯爵と共に、首都から領地へと急ぎ帰り、領地でクレイオを迎え入れる準備をするという。
 ルティアとリアンの婚約発表迄に、証拠を集める為、クレイオには頑張って貰わねばならなかった。
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