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 逃げる様に、スヴェンとベルイマンから離れて行ったシスリーだが、スヴェンは追い掛ける事はしなかった。

「ベル、君も冷たくないかい?」
「あの女はアレでいい………とんだ性悪女だと、お前は知らないのか?」
「だが、あの区間に入って行ったら危ないだろ………僕は追うよ」
「止めておけ、追い剥ぎに遭うぞ」
「女性1人で行く場所じゃないだろ」
「あの女は大丈夫なんだよ」
「…………ベル……君は何を知っているんだ?」

 シスリーがスヴェンから離れて行ったので、ルティア達も、スヴェンの方へ合流しに行く。

「お兄様!」
「え!………ルティア!な、何故此処に………君は登城する予定だったんじゃなかったのか?」
「後を追ってきたんです!お兄様が心配だったので」
「…………ま、まさか貴方様も居られるとは……」
「此処では話が出来ない………スヴェン卿、一緒に来てくれないか」
「…………今の事の話、という事なんですね?」
「そうだ」
「分かりました」

 登城出来る格好ではないルティアだが、王城に行くのなら、ルティアは着替えたい。

「リアン、私は帰った方が良いわよね?」
「何言ってんの?ティア………君も一緒だよ」
「で、でもこんな姿じゃお城に入れないでしょ?」
「大丈夫、大丈夫。俺も居るし」

 スヴェンの前で気さくにリアンと会話するルティアを見たスヴェンは驚いていた。

「ルティア………その口調を止めなさい」
「王城に着いたら敬語を使いますよ、お兄様」
「スヴェン卿、俺と話をする時のティアはこれで良い、と言っているから気にしないで欲しい。ティアは城では、敬語を使ってくれているから大丈夫だ」
「…………貴方様が宜しいのなら……でも、ルティア………父上にはバレないようにするんだよ?その辺りは厳しいから」
「分かってます」

 立ち止まっていた区画を離れ、馬車に乗り込んだルティア達。
 ルティアはリアンと。スヴェンはベルイマンと別の馬車を使った。

「…………で……城迄少し時間出来たから、ティアの疑問に答えてあげるよ」
「え…………疑問って……アレだのソレだの、て件?」
「そう」
「ね、閨事の事だから、今聞きたくないわ」
「何で?2人きりだから良いじゃないか」
「御者や警護に聞かれちゃうわよ」
「騒がなきゃ聞こえないって」
「っ!」

 隣で寄り添う様に座り直られて、ルティアの左側がリアンの右側に密着する。

「ち、近くに来なくても聞こえるわ」
じゃなくても、如何して事をシたのか説明するんだろ?」
「だ、だからって……」
「その内、ティアにもシて貰いたい事でもあるんだから、遅かれ早かれ知って損はないよ」
「っ!…………リ、リアン!」

 リアンはルティアの膝上に乗せていた手を掴むと、自身の太腿の上に置かせた。

「これだけで、顔赤らめちゃって可愛いなぁ」
「あ、赤くなるわよ………だ、だって……リアンの膝上に手を置いた事ないもの」
「うん、そうだねぇ………この手を左に運ぶと何がある?ティア」
「っ!………き、聞かなくても………」
「分かるよね、ティアなら………もう俺とシてるんだし………」
「ま、まさか………シスリー様から触った、とか?」
「ライナスが言うにはね………ベルゼウス伯爵令嬢の身体が見れなかったて事は、此処に顔を埋めた、て事だ」
「っ!…………それって……前にリアンも私にシて欲しいって言っていた……」
「だろうねぇ………それで、スヴェン卿をにさせちゃったんだろうなぁ……男なら据膳食わぬは男の恥、て言うしね」

 シスリーはスヴェンの準備をした上で、スヴェンも煽られて始めてしまった、という事なのだろう。

「で、でも………ベッドじゃなくても出来るもの?」
「出来るさ………俺達だって、ソファでシたじゃないか」
「っ!………で、でも……私は背凭れに手を付いたわ……」
「体位は数あるんだよ、ティア」
「そ、そうなの?」
「ライナスからの話じゃ、座位じゃないかなぁ………スヴェン卿の膝上に乗って、向かい合ってする方法もあるんだよ」
「…………っ!………だ、だからって観劇中にスる事?」

 ルティアはまさか最後迄シていたとは考えは及ばなかったが、考えれば座位の体位で出来そうだ、と自分に重ねてしまった。

「普通はシないよなぁ………羨ましい……」
「シ、シないからね!観劇中になんて!」
「…………観劇中じゃなきゃ、俺のを咥えて、俺の膝上に乗ってくれる?」
「…………く、咥え………わ、私には………そ、その……」
「咥えるのは、慣れてからで良いけど、座位ではシたいなぁ…………駄目?」
「駄目………じゃ……ない……」
「今からスる?」
「馬車は嫌っ!」

 城下街である街から王城は目と鼻の先なのだ。
 閨事等出来る時間等は無い。
 今迄も、時間があまり無い中で、身体を重ねているので、慌ただしいのはルティアも余韻に浸れはしないのだ。
 ルティアが知る恋愛小説の中の閨事は、リアンとシた様な慌ただしい物ではない。

「そうだよなぁ………毎回時間が無いからなぁ……早く夜通し、ティアを抱きたいよ」
「夜通し………?」
「1回じゃ、足りないんだって。ティアもそうじゃないのか?」
「わ、私はよく分からないわ………小説では何回も、て読むけど………朝迄ずっと、て言うのは想像出来ない……」
「う~ん………仮眠するぐらいの時間は取るとは思うけど、お互いに満足する迄貪り合ったら、夜明けて眠れなかった、て日もあるとは思うな」
「た、体力保たないわよ」
「頑張るよ、俺!」
「頑張るもの?」
「そりゃぁ、結婚したら直ぐに世継ぎを、て言われる立場になる訳だし」
「っ!」

 まだ皇王も若いので、退位はしないだろうが、リアンも18歳の性欲真っ盛りの年頃なのだから、世継ぎを望まれる事はまだ無いと思っていたルティアだ。
 避妊薬も飲んでいるのだし、子供を直ぐに欲しいとは思ってもいない。

「こ、子供はまだ早いわよ………だって、私はまだ成人してないし……」
「それは、ティアが欲しいと思った時期に合わせるよ、俺は…………でも、結婚したら圧は掛かると思っておいて、ティア」
「…………圧力で、世継ぎ産みたくないなぁ」
「だから、欲しくなったら俺は全力で頑張るから」
「…………」

 この時程、ルティアは子作りより、国政を頑張って欲しい、と思った事はなかった。
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