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結婚♡
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しおりを挟む半年後、首都の大聖堂。
レイラはこれも後で知った事だが、大聖堂での式は公爵家以上の貴族しか、結婚式を挙げられないらしい。
それだけ、王族にとって神聖な場所らしく、オーヴェンス公爵家は次期国王になるエルリックの従兄であり、エルリックが最も信頼の置ける親族であるからか、予定を捩じ込んで、結婚式を挙げる事になったのだ。
---本当はもっと先だった、てエルリック殿下から聞かされた時には驚いたわ………
それでも、婚約から1年経つので、遅いとも早いとも思わないレイラ。
ロヴァニエ子爵領の復興が、思ったより順調だった、という事も、国王から結婚を許可された事も大きい事だと思われる。
「レイラ、綺麗だぞ」
「本当………素敵なドレスね」
控室では、レイラの両親、ロヴァニエ前子爵夫妻、マキシム、ライラ、トリスタン、セイラと勢揃いしていた。
両親も参列をレイラは許したのには、理由がある。
レイラの1回目の結婚式を参加していなかった、という事は後悔している、と言われたからだ。
結局、来なくて良かったのではないか、と思えた結婚式で、マキシムとライラから話を聞いていたのだろう。
幾ら愛情が疎かになった娘でも、片隅でも存在があったのだ、と分かったからという事もある。
レイラもこれからは、親になるだろうし、いつまでも両親には、貴方達の様にはならないと反面教師で居て欲しい、という戒めの意味も含まれている。
「レイラ、頼む………このドレス生地で商売させてくれないか!」
「そうね、貴方!この生地は絶対に成功するわよ!」
「レイラ!私にもこの生地でドレス作って!」
と、この3人は相変わらず、金への執着はすざまじく、全く変わらない。
「父上、事業をするのは駄目だと言われているでしょう?諦めましょう」
「そうだよ、父上。僕も来年度から寄宿学校に入るんだから、しっかり守って貰わないと」
マキシムは、寄宿学校で性根を叩き直され、最近では気になる令嬢が居るのか、趣味に没頭せずに、将来を見据えて、勉強を頑張っているらしい。
「俺、結婚考えてる令嬢が居るんだから、彼女の両親に顔向け出来なくなる事だけは止めてくれよ」
「え!お兄様!私より先に結婚しないでよ!」
「ライラも悔しかったら、良い男見つけろ」
「相変わらずだわ、お兄様とライラお姉様の喧嘩」
「久し振りに聞いたわね」
セイラも、かなり体力も付き、両親の心配も減ったからか、セイラに感ける事も減った様だった。
一緒に住んでいない、という事が大きいかもしれない。
『ロヴァニエ子爵、お時間になりますので、参列者様は聖堂へお越し下さい。父君は花嫁様と控室でお待ちを』
「いよいよねぇ、レイラ………転ばないでね」
「はい、お姉様……気を付けます」
「またな、レイラ」
「姉上、ヘマしないでよ」
「レイラお姉様………寂しい……」
「ちょっと、セイラ泣かないの!早いわよ」
皆で会うのが久し振りだからか、家族らしい家族に見えた。
皆で居ても、レイラに労いの言葉は無かった気がする。
「レイラ」
「はい、お父様」
「…………長年……申し訳無かった」
「私も謝るわ、レイラ」
「お母様………」
初めてではないだろうか。
レイラが両親の反省した顔を見るのは。
「お前が、リビングの家族の肖像画が嫌いだとは全く知らなかった……1人だけ笑顔でなかった事が儂には許せなくてな………理由があの時分かった時、何故話を聞いてやらなかったのか、と………他にもあった筈だ……あり過ぎて、どれを謝ったら良いかは分からんが、すまなかった………」
「笑顔になれなくて当然よね、怒られた後だもの………もう、時間は戻らないし、お父様もお母様も、変わる事が出来なくて迷惑掛けてるわね……それでも見放さずに居てくれてありがとう…………幸せになるのよ、今度こそ」
「…………はい……幸せになります」
謝罪をされて、それでもレイラは信用しきれていない。
信用したい部分と信用出来ない部分が紙一重なのだ。
だが、それで良い。
緊張感を持って、両親達とは付き合っていく事がレイラには必要なのだ。
「お母様も、参列者に並ばないと、私達が入場出来ませんよ?」
「そ、そうね…………席から見守ってるわ」
母も居なくなり、父と2人になったが、緊張でもう言葉は出なかった。
聖堂へと向かうレイラと父のぎこちなさから、レイラは父にこんな時に聞いて良いか如何か分からないが、気になった事を聞いた。
「お父様」
「何だ」
「お祖父様は本当に病で亡くなったんですか?」
「う、疑うのか!儂を!このめでたい日に!………気になっていたのか………遺言書があったから………」
「…………はい」
「病で亡くなったのは嘘ではない。儂はこんなだが、人を殺めようとした事は考えてはいなかった………結果的に、近かった事をしたがな……今でも、商売はしてない………お前が許さぬしな」
許したらまた始める気だな、と思えたレイラだが、もう結婚式が始まるので、其処には追求しなかった。
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