何故、私は愛人と住まわねばならないのでしょうか【完結】

Lynx🐈‍⬛

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復興

50 カエアンside

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 レイラの家族と、元夫の事の大まかな事は片が付いたので、夜会は再開された。
 カエアンはレイラ達が夜会参加中、処罰に関する説明と、離縁によって慰謝料請求額を見て、腰を抜かしたという。
 貴族から平民に落ちた以上、今迄の様な生活や金銭感覚では、ティアナと子供を養う事は出来ないだろう。
 夜会が終わってもまだカエアンは帰れず、首都のアマルディア伯爵家の邸に帰った頃、両親のアマルディア前伯爵から、現伯爵に戻った父が待っていた。

「待っていたぞ、カエアン」
「と、父さん………嘘だよな?お、俺を絶縁だって………」
「嘘ではない………アマルディア伯爵家は私の代に戻す……此処を出たら、お前は暮らせないと思うから、この邸の宅地権利はお前に譲渡してやろう。孫も産まれる事だしな………但し譲渡だけだ。管理維持費は平民の収入では難しいだろう。譲渡完了したら売るなり、レイラとの慰謝料代なり、お前が作った借金を払えば良い………ティアナと幸せに暮らせ」
「ま、待ってくれよ父さん!俺が絶縁されて生きていける訳ないだろ!」
「自業自得だ………邸の侍従達は、領地に連れて行くか、希望退職してこの邸には居ないからな………私達は近くに宿を取っている。商会の立て直しもあるからな………だが、私達を頼るなよ…………おい!行くぞ!エリーゼ!」

 言いたい事だけ言って、アマルディア伯爵はカエアンと絶縁する。

「待って下さい!貴方!ティアナが可哀想ではありませんか!もう直ぐ産まれるんですよ、私達の孫が………泣いて助けて、て………」
「それなら、お前が助けてやれ………そうなったらお前とは私は離縁する」
「お父様!薄情ではないですか!私はお父様の娘なのよ!」
「…………のな……エリーゼが頼み込むから養女にしたが、カエアンとこんな関係になった時点で直ぐに対処すべきだった……レイラは良い娘だったのに………お前達2人が………」
「さ、再婚するから!レイラと………な?父さん、それなら良いだろ?ティアナと別れる!今度こそレイラと上手くやるから………」
「カエアン!何を言い出すのよ!私を捨てるですって!」

 なんだか、骨肉の争いになりそうな展開になっているアマルディア伯爵家。

「あぁ!そうだよ!お前の口車に乗りさえしなければ、俺は遊び暮らせてたんだよ!」
「子供も産まれるのよ!どうやって私は生きろって言うの!」
「いい加減にしろ!お前達2人は勝手にやっていろ!エリーゼ、行くぞ…………離縁されたくないならな………」
「は、はい………カエアン……ティアナ……元気でね………」

 結局、アマルディア伯爵夫妻も自分の体裁が大事だった様だ。
 その後、ティアナは譲渡された邸で女の子を出産。
 しかし、出産直後娘を置き去りにしてカエアンの元から去っている。
 カエアンは子供の育て方を知らない上、同じく邸に残したまま、譲渡された邸を手放し、金を手にして以降、消息は不明となった。
 カエアンが行方不明になった事で、残された借金やレイラに支払う慰謝料を肩代わりさせられるアマルディア伯爵であったが、カエアンの親として、責任を果たした。
 邸に残された女の子は、両親を知らず養護院に預けられるが、祖父母であるアマルディア伯爵夫妻が引き取った。
 養女にもせず、子供の居なかった侍従の夫婦を親代わりにし、祖父母とも名乗れず、女の子はティアナには似ても似つかない、優しい子に育っていった。
 アマルディア伯爵家は持ち直し、再び首都にも邸を新たに建てていて、夫婦は貴族の親戚筋から養子を貰い、後継者を育てている。
 この事を、何処かでカエアンやティアナは耳に入れているだろう。
 時折、路上でティアナが身体を売り生活している、と見た者も居るらしく、貴族の生活に憧れていたティアナは以前の美しさは消えてしまっていた。

「パパ~!」
「如何した」
「あのおばちゃんがコレくれた~」
「…………え?……知らない人から物を貰うんじゃない!」
「えぇ!」
「返してくる………要りませんよ」
「…………ごめんね……お嬢ちゃんが娘に似てたから……」
「…………行くぞ」
「うん、バイバイ!」

 ティアナは、カエアンとティアナに似た顔立ちの子を見つけると、そうやってお菓子をあげる様になっていた。
 その後は如何なったかは、誰も知らない。
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