何故、私は愛人と住まわねばならないのでしょうか【完結】

Lynx🐈‍⬛

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断罪

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 人影からコソッと出て来たロヴァニエ子爵。
 他の家族に至っては、まだ人影に隠れていた。

「ロヴァニエ子爵」
「は、はぃぃっ!」
「…………其方、再三の私の登城の要請を何故に無視を続けた?」

 国王の威圧感が凄い。
 折角、楽しみにしていた夜会が、威圧感でピリピリとしていて、国王の横に立つエルリックも、ロヴァニエ子爵を威圧している。

「そ、それは末娘が病弱ゆえ、看病を………」
「それは其方が付きっきりでなければならぬのか?子爵夫人は末娘の看病もせぬのか?其方には息子娘、他に4人居るではないか。まぁ、1人は嫁いだ娘、レイラは無理だろう。それならば3人居て、邸には侍従が居て、何故其方が動けぬ」
「病弱で、心配でして………」
「レイラ………其方に聞こうか」
「は、はい、陛下………」
「如何だったのだ?ずっと、子爵が寝ずの看病を?」
「いえ…………ロヴァニエ子爵は、夫人に任せている事の方が多く、資金繰りに困り融資の申し込みに首都に赴いたり、事業の考察をしたり、としておりました………子爵が看病というよりでしょうか」
「レイラ!お前は何を言っている!」
「本当の事です」
「この…………親不孝娘が!」

 この場で喧嘩はしたくない。
 だが、事実だった。

「では、他の家族は如何だ?前に出て貰おう」
「い、嫌よ!な、何で怪しい雰囲気になっているの!」
「レイラ!何故俺達に恥を掛かかせる!」
「レイラ!良い娘だったじゃないの!」
「お姉様………」
「姉上、何で味方じゃないの?」

 レイラが見るに、マキシムと母はこの要請を知っている様だった。

「敵か味方か、は正直に話せば判明しますよ、ロヴァニエ子爵家の皆さん」
「アーロン様!何故レイラと婚約しようとなさるの?嫌よ!レイラになんて渡さないわ!」

 ライラはこんな時迄、自分の事だ。

「レイラ………お前が父上に愛情を求めているのは知っていたが、こんな形で愛情を求めるのは間違ってるぞ!」
「………ロヴァニエ子爵夫妻の愛情………私はお溢れで最後でした……マキシム卿」
「レイラ………貴女が寂しいのは分かってたわ!だって、ライラやセイラよりだったもの………」

 マキシムは長男らしい発言だが模範解答。
 母は何処迄も、レイラはと言う。

「姉上、僕には冷たくしないよね?」
「夫人、私が普通の子でなければ、お姉様の様に飾り立ててくれて、セイラの様に甘やかしてましたか?トリスタン、私は貴方の不用品回収係じゃないの」
「お、お姉様…………わ、私………いつも、病気してごめんなさい……」
「セイラ、帽子気に入ってくれた?可愛いわ………でも、もっと体力付けて頂戴」

 感情が爆発しそうだった。
 何故、セイラ以外は体裁を気にするのだろう。

「ロヴァニエ子爵家の言い分は分かった……だが、何故海賊の被害を報告しなかったり、防衛要請を怠った?前ロヴァニエ子爵は、随時報告を上げ、領民を守ってきた………信頼足る男であった………其方の父は……」
「お、怠った訳では………そ、そう!船を壊されその修理費で、首都へ行く資金も無く!」
「それはおかしいな………ロヴァニエ子爵……私は貴方に1年程前から2ヶ月に1度は面会を求められていたが?此処に居る貴族達もではないのか?」
「私も融資を頼まれぞ!」
「私もだ!共同出資しよう、と呼び掛けられた!」

 この中で、どれだけの貴族が挙手せず、黙っていたのだろう。
 ほぼ名のある貴族男性が融資や共同出資を申し出された、と伝え始めている。
 それだけロヴァニエ子爵は方々から金を借り、浪費し、事業に失敗してきたのか。

「あわわっ………ほ、本当に儲かる仕事をだな………」
「あ、貴方………私は知りませんでしたよ!こんなに大勢の方々に融資して貰っていたなんて!」
「お、お前こそ、セイラの治療費やら薬代やら、遠方から医者を招いていたり、ライラのドレス代や教養の教師を沢山付けていたり、マキシムの直ぐに飽きる趣味を応援して、必要経費だと言っては教師をコロコロ変えたり、トリスタンだって同じ事をしただろ!わ、儂は………レ、レイラにはいつも本を土産に買って帰って来たぐらいだぞ!よ、読めもしない外国の本だって嬉しそうに………」

 泣けてくる言い訳。
 金の問題ではないが、ロヴァニエ子爵の言葉には棘が何本も張り巡らせれていた。
 結局、を与えておけば喜ぶ娘だと思っている。
 外国語の本も、確かに読めなかった。
 内容も分からずに買って来た様にも見える。
 ロヴァニエ子爵はと言ったのはが読めないからだ。
 レイラが読めないと思っている。
 読めなかった外国語の本は、レイラが辞書を街で買って来て、必死に調べて読めて覚えたのだ。
 時間は掛かったが、辞書を使う事で見えない事、知らない言葉が理解出来たのだ。

「言いたい事はそれだけなんですか?ロヴァニエ子爵夫妻」
「レ、レイラ?」
「私は結局、序列の最後………いつも最後……選ばれるのが最後………誕生日さえも後回しでした………期待を何度もして裏切られる事に疲れてました………お姉様がアマルディア伯爵家には嫁ぎたくない、セイラは病弱だから駄目………ならばレイラが居る、と仰ったのを私は聞いてました………私は貴方達に金であんなどうしようもない愚者の妻にされたんです!」
「わ、儂だって………あ、あんな馬鹿な男だとは思って………」
「見なかったのでしょう?目先のお金しか………船だって修理すれば走れたのに廃棄して新品にし、残ったお金を浪費しましたよね?少しでも従業員達の給与に振り分けました?していませんよね?だから、今ロヴァニエ領から逃げて首都に居るのではないですか?」
「レイラ、落ち着け………」
「っ!」

 レイラはもう話しもしたくなかった。
 此処に来ても体裁ばかりの両親と、自分大事の兄姉弟。
 涙は堪えたが、ケリー夫人がレイラの傍へ来て、そっと抱き締めてくれたのだった。
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