何故、私は愛人と住まわねばならないのでしょうか【完結】

Lynx🐈‍⬛

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逃亡

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「ロ、ロヴァニエ子爵家が取り壊し……ってどういう意味何でしょう………」

 レイラには寝耳に水で、今迄家族の誰からも聞いた事は無い。

「知らなかったのか?………そうか……それなら、説明する………いつ頃かから忘れたが……あまりにもロヴァニエ子爵領の資金難と海賊の被害から、ロヴァニエ子爵はあらゆる貴族達に、融資を申し込んでいた………」
「はい、それは知っています」
「そうだろうな………そこで、国王陛下は、融資より海賊からの被害を最小限にし、防衛に力を入れよ、とロヴァニエ子爵には伝えて来た。援助金も防衛に回すなら、出してやると条件付きで何度か国からもロヴァニエ子爵へ渡っていたんだが、一向に良くはならなかった」

 ロヴァニエ子爵領周辺には、小島が多く、何処からか移民の隠れ場所となり、資金や物資が無いものだから、商船をよく襲ってきていた。
 レイラも何度も、海岸沖で船が襲われているのを見てきた。

「防衛に、父は何も手を打っては来なかったと思います………船や商品が奪われた事ばかりを嘆いてました……その度に、船を造り従業員達の労働時間が増し、その割には収入が減っていました………」
「そう、それは調べれば分かる事だった。度重なる説明を求めて来たが、もう陛下からの信用を得られない所まで来てしまっている。それでも、君はロヴァニエ子爵に隠れて、商品の輸出入の数や金額、質を変更していた………違うか?」
「…………何故それを……」
「もっと言おうか?例えば、船を作れ、と命令したロヴァニエ子爵の言葉を、従業員達に直せ、と言ったり………ロヴァニエ子爵は綺麗な船になっていたら、それが新品だと思い込んでいたらしいな」
「…………お、お恥ずかしい話です……父は、海で育った筈なのに、違いが分からない人でした……あれやこれやと趣味を変え、飽き性で……勤勉だった祖父とは真逆な人で………私は、父がアレでしたから、祖父母に領主のあり方を幼い時期に教えられました………民を大事にしなければ、領地は守れない、と」
「前ロヴァニエ子爵は、とても信頼の厚い方だと聞いている………その方の息子が、その信頼を無くしているんだ………国王陛下からね」

 国王の命令を蔑ろにして、信頼を無くしたのは理解出来た。
 それでロヴァニエ子爵家の取り壊し迄になるには、まだ理由があるのだろうか。

「信頼を無くしてしまうのは当然かと思います………でも、取り壊し……家族は如何なってしまうのですか?」
「平民落ちになるだろうな」
「…………そう……ですか………それなら私も、という事で…………て……それで家が取り壊しになるに私が閣下と婚約し、結婚を、という事なんですか!」
「家族を守りたいならそうだ………いや、守らなくても俺は良いと思ってる………あのロヴァニエ子爵に商売の才も、領主としての力も無い男に、任せてはいられないから、離縁したら君がロヴァニエ子爵を継承すれば良い」
「…………兄が居るのですが……女性領主なんて聞いた事もありませんし……」
「マキシム卿?無理だな、彼も………女性領主を置くのは反対意見も出ると思ってるから、一旦ロヴァニエ子爵領を国に変換し、俺があの領主となる………それを君がロヴァニエ子爵となって補佐する。領主は俺だから、君は領主の補佐となり、妻となって、領地を管理する………それなら反対は起きない」
「…………な、何も結婚迄………」

 確かにレイラにとって、この話は申し分ない事だ。
 ロヴァニエ子爵がこのまま、愚行を続けていけば、益々危なくなってしまう。
 それならば、仕事が出来る領主に任せた方が良い。
 平民落ちに、家族をさせてしまうのは嫌だが、今迄のレイラに対する行為を、許したいとも思っていない。
 家族で愛情があるから、捨てられない家族なのだ。
 何も、レイラに愛情が無く育ててくれた訳でもない。
 お互いに歩み寄れなかっただけだ。

「3ヶ月以内に、全て解決させるのなら、一気にやった方が良い………夜会で離縁からの婚約は俺も考えは無かったが、その方が円滑に出来そうだ。それに、特にロヴァニエ子爵領の事は急務でね………実は俺は5年前から調べていて、危ない領地だと言ってきた………3年ぐらい前、持ち直してきたと思ったら、君の結婚でまた酷くなったんで、絶対に君を領主に、と推したのもある………それが、アマルディア伯爵家に売られる様に結婚させられて、国王も計画が狂ったんで、君の離縁は乗り気でね………夜会で俺がきっかけを作り、ひと悶着あった後、もう1つのロヴァニエ子爵家の沙汰を出しても良い、ともう許可も貰っている」
「い、いつの間に………」
「君が言ったんだぞ?3ヶ月以内に離縁したい、て」
「…………い、言いました……ね……」
「その許可が取れたのは、あの夜会の翌日だから、もう準備は始まっているんだ」
「…………わ、私が返事を待って下さい、とお願いしていたのに、ですか?」
「俺は直感を大事にしている………必ず君は助けを求めるだろう、とね………結果良かったろ?」

 何から何までトントン拍子に進みそうで、レイラは楽しくなっていた。
 婚約の話以外は。

「で、でも………婚約のお話は………あ、姉では駄目なんですか?」
「冗談だろ?」
「へ?…………冗談では………」
「悪いが、ライラ嬢は好みではない。俺の好みは癒やしてくれる穏やかな性格の女だ………だが、知能が低いのは論外。公爵家の夫人というのは、賢くなければ勤まらないと思っている。視野も知識、そして所作………貴族達の頂点に立つのが公爵家で王族の血筋になるんだから、馬鹿な女では無理だ」
「アーロン…………素直に、レイラ嬢が好きだ、と言えば良いのに………あれこれと御託並べて理屈っぽい男の言葉は、女性に愛が伝わらないものよ?」
「っ!」
「えっ!」
「さて…………後は2人で話合ってね………もう直ぐ夕食の時間になるから、それ迄話はまとめる様に」

 最後、ケリー夫人の余計な一言で、レイラがアーロンに対し、恋心が芽生えるかは、後の話。
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