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結婚
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しおりを挟むベッドの脇で、座ってカエアンは上半身裸で、ティアナは胸元を開けて艶っぽく、レイラと見合っている。
見るからに始めようとしていたに違いない、その場にレイラが居るのは場違いだ。
「本当に分からないのか?………どれだけ馬鹿なんだろうな」
「非常識だと言っているんです」
「非常識?そうか?ティアナ」
「馬鹿には分からないんでしょ?………説明してあげる、お馬鹿さん」
「…………聞きますが、貴方達のしている事は、許されない行為だと言う事をお忘れなく」
「…………何処がだよ」
本当に常識が分かっていない。
結婚した男女が、愛人を持つ事は、非難の的なのだ。
これで、この件で離縁となったら、家の恥となる。
隠しておきたくても、レイラなら絶対に暴露すると思われた。
「世間に知られたら、恥を掛かれる事になるのに、それを念頭にないのでしょうか」
「知られる訳ないじゃない」
「なぁ、誰にも言わなきゃな」
「…………私が隠すとお思いですか?」
「…………あ……ど、如何しよう!ティアナ!」
「落ち着いてよ、カエアン………出来る訳ないじゃないの………そんな事をしたら、実家は終わっちゃうわよ?お父様が放置しない………お金借りてるんでしょう?直ぐに返せる?」
やはり、カエアンは無能だ。
知恵をティアナから授かり、ティアナの言いなりだった。
「直ぐには無理です………ですが、離縁する為に必ずお返しします」
「は?…………お父様は巨額なお金を貸したのに、耳揃えて返すのが筋じゃないかしら?」
「そうですね、私もそう思います。一気に返せたらもう貴方達に会わずに済みますし………それでも、我慢してカエアン様と結婚したんじゃないですか」
「我慢ですって!カエアンの何処が不服よ!」
「全てです」
「何だと!」
「それで、そんな話をする為に私は此処に案内させたんですか?恥になろうとも、カエアン様の愛人に成り下がろうとも、私には如何でも良い事なのですが………私の代わりに、カエアン様に抱かれてくださりありがとうございます。初めてティアナ様に感謝します」
リアナはどう離縁に持ち込むかが決まらない。
それでも、腹の立つこの怒りをぶちまけなければ、レイラは心に閉じ込めて壊れてしまう。
「な、何故か腹が立つわ………カエアン……」
「俺もだ………絶対にあんな女、好きになれん」
「嫌よ!私以外の女を好きになっちゃ駄目!」
「あぁ………愛しているのはティアナだけだ………興奮すると、胎教に悪いぞ」
「あの………何ですか、胎教って………まさか妊娠されてるんですか?」
「…………ふふふ………そうよ、妊娠してるわ……カエアンの子をね」
「…………それはお気の毒に……」
「…………は?今何て言った!」
子は親を選べない。
この2人が親になったら、子が可哀想だと思ってしまう。
「カエアン…………あの事を言わなきゃ」
「あの事?何だっけ」
「この子が産まれたら、その女に育児を任せる、て話よ」
「……………は?」
「あぁ!忘れてた……そうだ、お前はティアナの妊娠周期に合わせて体型も変えて、俺と社交場に出るんだ」
「な、何を言って………冗談じゃありません!嫌に決まっているでしょう!」
「お前は断れないぞ。お前は今、俺と離縁したいと言ったが、俺は離縁しないからな」
「……………え……ち、ちょっと待って……今……離縁しない、と言いました?」
サラッとリアナはカエアンと離縁する為に金を返すと言った事を、他人の話を聞いてなさそうなカエアンは覚えていた。
「お前は一生、ティアナの為の操り人形だ」
「嫌です!」
「あら、即答………断れないわよ?だって、離縁する為のお金返せないんでしょう?」
「っ!」
「そういう事だ。お前は俺達の子を、お前が産んだ子として、お前が育てるんだ」
「だから、嫌だと言っているじゃないですか!」
「その為に、お前との初夜が必要で、妊娠しているティアナの身体に鞭打って、閨の証明をこのベッドに残さなきなならない」
「……………な、な……」
この馬鹿な2人の計画に、リアナが巻き込まれているのは理解した。
そして、更に馬鹿な計画の為に、何故この馬鹿な2人の抱き合う空間に、リアナが居なければならないのか。
レイラは言葉が出ない。
「お前は其処のソファで寝ろ。俺達は証拠を残さなきゃならないからな」
「寝れるかしらねぇ?ふふふ………カエアン」
「刺激が強いよな、きっと………」
カエアンとティアナは、レイラの了承も得ぬまま、始めてしまった。
レイラは見たくもないし、聞きたくもない。
ティアナの大胆で大きな下品な声と、カエアンが呼ぶティアナの名。
抱く相手をレイラにしたのなら、呼ぶ名はレイラである筈だ。
恐らく、部屋の外には侍女達が待機していて、レイラを部屋から出さない様にしていると思われ、レイラは出るに出れない。
彼女達は、先程こそレイラの言う事で大人しくなりはしたが、根本的にティアナの腰巾着だ。
どの様にも言い逃れするだろう。
---聞きたくない!五月蝿い!下品な言葉ばっかり!
レイラの知る閨作法とは違う過激な情事だった。
卑猥な言葉を言い合って、ティアナはカエアンを強請る声も気持ち悪い。
妊娠をしている、と聞いていたのに激しい様だが、大丈夫なのだろうか、と少しだけ心配になった。
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