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結婚
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しおりを挟む「本当に帰られるのですか?お兄様方」
レイラは教会からロヴァニエ子爵家の馬車で、アマルディア伯爵家に到着する。
それは何故か。
レイラが兄と姉と話をし終え、教会を出るとアマルディア伯爵家の馬車が1台も無いのだ。
侍女も居らず、レイラは残されてしまった。
『陰湿ねぇ……』
『お前だって影でやるだろ?』
『お兄様、あからさまにしないのが、貴族令嬢の嗜みよ?私は美しくて嫉妬されやすいから、いつも注意しているの。だからこんな事はされないし、しないわよ。それだけ付け入る隙を与えない事が大事。分かった?レイラ』
『気を付けます………ですが、アマルディア伯爵家の侍従達の殆どが彼女の言いなりなので………』
『舐められてるな、レイラ』
『平民出自で、よくそんな高飛車に出来るものね……伯爵夫妻が放置しているから付け上がるのよ』
自分の事を棚に上げて、ティアナを貶すライラには呆れたが、本当にその通りだとレイラも思った。
「あぁ………あんな女が居る場所には居たくないし、早く父上に誤解を解きたいのだろ?」
「それは、はい」
「ならば、ロヴァニエ領の方の別荘探しは任せておけ………金は気に入ったら購入して入るんだよな?」
「そう思ってますが、話が何しろ通じない人達なので………」
「それはお前で何とかしろ。踏み倒されるなよ」
「…………はい……」
面倒くさいと思えた方は他人任せのマキシム。
そう要領は良くはない男ではあるが、逃げ腰だけは早い。
兄姉と別れ、アマルディア伯爵家に戻って来ると、侍従達からの冷ややかな目線がレイラに刺さった。
「カエアン様を放っておくなんて、どういう気かしらね」
「もう蔑ろにする気なんじゃない?」
「寂しいだろうから、てティアナ様がカエアン様に付き添ってみえたわ」
「カエアン様がお可哀想」
平民出自の女が、貴族の養女になれたから、平民風情の侍従達の憧れの的に勝手に祀り上げて、ティアナも調子が乗っているとしか思えない。
レイラから見れば、烏合の衆なだけだ。
離婚に向けて、動ける様になる迄は、レイラも大人しくしているつもりだった。
子供を1人でも産んでやれば、名分も立つだろう。
カエアンはレイラに愛情を向ける気配も無いのだから、離婚してお互い喜べる筈だ。
「ちょっと!何をしていたの!皆さん新郎新婦お待ちなのよ!」
「…………申し訳ありません、教会を出るとアマルディア伯爵家の馬車が1台も無かったので、これはもう虐められたものと思っております。遅れた理由を、そうお話して宜しいですか?エリーゼ夫人」
「っ!…………カエアンと結婚したのだから、お義母様とお呼びなさい!」
「呼ぶなと言われたり呼べと言われたり………今後、真逆な事を仰らなで下さい………私が居なくても、賑やかな様なので、上手く誤魔化されておられるのではないですか?お義母様」
もう、客人ではない。
次期伯爵夫人になったのだ。
言い返す権限もなければ、誰が自分を守るのだろう。
「っ!」
図星の様で、エリーゼ夫人はレイラに言い返せなかった。
「着替えて参ります。直ぐに顔を出しますので」
レイラは階段を上がり、自室に向かおうとすると、ティアナがレイラの部屋の前で待っていた。
「宴に出ないんですか?」
「…………いいでしょ、そんなの私の勝手よ」
「…………入れないので、退いて貰えます?着替えたいんで」
「せいぜい、楽しみなさい」
「……………」
ティアナが宴に出ない理由は分かっている。
貴族の集まりの宴に、ティアナは出られないからだ。
派手好きそうなティアナが出られないのはショックだっただろう。
無理を通してアマルディア伯爵夫妻が、宴に参加させれたとは思うが、結婚式であれだけ五月蝿いティアナが大人しく感じたのは、平民と貴族の壁が分厚く高くて、長いから。
列席者の中には不躾な質問をされる事も多く、ティアナの出自を聞かれて、蔑まれ貶されるのが、プライドの高いティアナには受け入れ難いのだ。
養女で平民出自と貴族名鑑に記載されているという事は、ティアナは一生平民扱い。
貴族にはなれない。
「…………本当……陰険……」
何故、ティアナがレイラの部屋に居たのかを理解したのは早かった。
宴に出るのに用意し、出していたドレスが切り刻まれているからだ。
「これ、着る予定じゃなかったから良かった」
これで、本当に宴に出なかったとしら、また言われるに決まっている。
切り刻まれているドレスの布地をまとめて、レイラは呟いた。
「もう、戦いは始まってる………これからは泣くもんか………」
『失礼致します、お着替えを手伝いに参りました』
「…………入って」
「は、はい………しつれ………な、何ですか!これ!」
「…………虐め?」
レイラ付きにさせれている侍女が入って来ると開口一番、この状況に驚いていた。
「っ!…………ひ、1人で戻ってきてしまい申し訳ございません………」
「貴女も虐められてほしくないから、私と付かず離れずで居てくれたらいいの」
侍女が酷い目に遭わない事を願っている。
それでも、レイラは彼女を信用してはいなかった。
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