放浪の花嫁【完結】

Lynx🐈‍⬛

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帰郷報告①

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 アニースは皇太子邸にやって来た。

「アニース様、タイタス殿下とご婚約おめでとうございます。」
「い、いや………私こそナターシャに祝辞を述べなければ……。」

 産まれたばかりの皇子、アスランを抱き、アニースを迎え入れたナターシャ。

「ボルゾイでは大変だったとか………。」
「確かに大変と言えば大変だったけど、最後に父に会えて良かった。」
「お父様の事お悔やみ申し上げますわ。」
「…………ナターシャ……ありがとう……あ!言葉使いも今迄の様では駄目だよな!申し訳ありません、妃殿下。」

 ナターシャは、アニースの言葉使いを変えた事に目を丸くする。

「ふふふ………公務以外の場では普段通りで構いませんわ、アニース様。わたくし、ラメイラにもそう伝えてありますのよ?そうでなければ気が休まる時等ありませんでしょう?」
「………ナターシャ………。」

 既に、皇太子妃としての重圧がのしかかっているナターシャからすれば、皇子妃になる令嬢に教える事は、伝えようと思っているのだろう。
 
「助言ついでに伺いたいのだが、昨日帰郷して皇妃が気になる事を言っていて………その………皇子達の性欲は………皆凄いのだろうか………。」
「…………せ、性欲……………アニース様もですか!?」
?」

 侍女が居る為、少し小声でナターシャはアニースに言う。

「ラメイラトーマス殿下との閨に悩みがありましたわ……。」
「………ラメイラ………。」
「…………あの兄弟…………ですから、あまり調子に乗らせては駄目ですわ………。」
「………やっぱり……。」
「しかも、タイタス殿下は媚薬を飲まされたとか……リュカ殿下はその媚薬が気になるようで、トーマス殿下と目論見、取り寄せるかもしれません。お気を付け下さいね………タイタス殿下にもがリュカ殿下やトーマス殿下から話があったら、タイタス殿下は断れず、また入手するかもしれません。」
「…………絶対に無理!!あんな激しいのは絶対に無理!!」
「…………そ、そんなに?」
「詳しく話すから、人払いを………。」

 アニースはそうナターシャに願うと、ニッコリと含み笑いをする。

「大丈夫ですわ、皇太子邸は。父には報告させません。」
「え?」
「各皇子に付く侍女が、宰相である父に報告しているのは知っています。皇太子邸ではセリナとライアが主に報告の任にはありますが、わたくしがと言った事は報告してませんわ………ね?セリナ、ライア?」
「…………はい……皇妃様からもキツイお言葉がありまして、妃殿下同士の内緒の話は、宰相様には報告はしておりません。」
「ナターシャは知っていたのか?宰相の部下だと。」
「えぇ、リュカ殿下はセリナとライアがだとは知りませんけど。トーマス殿下邸のマーニャ、タイタス殿下邸のトゥーイとアヤカ、コリン殿下付のユウリ……父の回した侍女ですわ。皇妃様にも居ますわよ?」
「だから、あんなに見てきたような事を言うのか………。」
「わたくしもウィンストン公爵家で育った者ですから、何となく分かるんです。父や兄達がわたくしやリュカ殿下に会いに来る時、目がセリナかライアに合わせ合図を送る所まで見てますわ。報告がある無い、迄見抜きましてよ?お父様はわたくしには教えないままなんて、酷いと思いません?」
「…………確かに……。」

 アニースは、行き場の無い状態になったセリナとライアを見ると、じどろもどろとしている。

「わたくしが知っている事を、セリナとライア、他の父からの回された侍女達に申しましたら、本当に楽になりましたわ。夫婦喧嘩迄知られていたのに、それを隠して貰えるようになって………ふふふ……。」
(…………私も使わせて貰おう……。)
「でも、侍女として彼女達はとても優秀で信頼の置ける人達ですから、助かってますわ。今もヴィオを任せていても安心しますし………それで?その媚薬はどれほどの効果が?」

 アニースは、自分の経験をナターシャにぶちまける。
 アニースにとって、幸せだったが止まらない行為は後で身体の事を思えば無謀な行為。
 耐えたくても耐えれなかった事迄もナターシャに告げると、ナターシャは同じリビングに居た、セリナとライアを呼ぶ。

「セリナ、ライア………今の聞きましたね?お父様に報告して頂戴。媚薬を取り寄せる等以ての外、と。翌日の公務に差し障る物は一切取り寄せさせないで、と報告を!」
「はい!」

 後日、リュカリオン、トーマス、タイタスがその媚薬を取り寄せようとしたのは言うまでもなく、それをウィンストン公爵が阻止したのは、妃同士の結託のおかげだった………。
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