放浪の花嫁【完結】

Lynx🐈‍⬛

文字の大きさ
上 下
75 / 85

婚約発表

しおりを挟む

 王都に着いたアニース達。
 リュカリオンに世継ぎ誕生での祝いで賑やかなのかと思っていた。
 2ヶ月程産まれてから経つ筈なのに、何処もかしこもお祭り騒ぎなのだ。

「こんなに賑やかだったか?」
「いや?………皇子誕生を祝うにしても長いな………。」

 不思議に思うアニースとタイタス。

「本当に、ここ最近はおめでたい事続きだな。」
「皇太子殿下ご成婚、第二皇子ご成婚、皇女誕生に、第二皇子の双子のお子様誕生に、皇太子殿下のお世継ぎ誕生に、第三皇子婚約………この2、3年でめでたい事づくしだ!」
「……………え?もう発表されてる?」
「……みたい……だな……。」
「ど、如何して?」
「セシルが隠してた事と関係あるとか?」

 訳が分からず、戸惑っていると馬車は王宮に着いた。

「お帰りなさいませ、タイタス殿下、アニース様。」

 馬車を降りると、カイルが出迎える。

「ただいま…………なぁ、何でもう発表されてるんだ?」
「兄から聞いていませんか?」
「聞いてないから、カイルに聞いてる。」
「えっと…………ここでは……陛下がお待ちなので、先ずは謁見の間へ………。」

 衛兵や、他の貴族達の目もあり、カイルも言葉を濁す。
 謁見の間には、既に皇帝、皇妃、リュカリオン、トーマス、コリン、ウィンストン公爵が待っていた。

「父上、ただいま帰りました。」
「うむ、ボルゾイの長旅ご苦労だった。報告は既にセシルからの手紙で知っている。ジャミーラ、ヘルン両姫の件に関しては申し分ない結果であった。サマーン王は非常に残念だったが、アラム王にかの姫達の処分に満足と共に、期待している、と私からも書面を送っておいた。」
「…………はい。」
「………しかし、だ………タイタス。」
「…………?」

 何やら言いにくそうな皇帝に、苦笑いするリュカリオンやトーマス、そして困った顔の皇妃やウィンストン公爵。

「何故、ヘルン姫から渡された飲み物を飲んだ?」
「!!………そ、それは……。」
「セシルの判断は正しい………とは思う………アニース姫も大変だったろう……しかし、全裸で部屋を出て、廊下でセシルに詰め寄り騒ぎを起こすとは………それにより、お前は全責任を持って、アニース姫を早く娶らねばならなくなったのだという事は分かるか?」
「……………は……はい。」
「ボルゾイならず、レングストンの侍従達もお前がアニース姫との仲を、そう思っておる。国内外、しかも即位式があるボルゾイには、諸外国の要人も居たのだ………だから、お前達が居る部屋に、誰も近づかぬようセシルが居たというのに………お前はアニース姫の品格を落としたと思わぬか?」
「……………。」
「あ、あの!私が、全部受け止める、とセシルに入れて貰ったのです!タイタス殿下だけのせいではありません!あの時、私が寝てなければ、タイタス殿下を全裸で廊下に等出させませんでした!」

 言葉に詰まるタイタスに、アニースはフォローをする。

「アニース姫も、タイタスに嫁ぐと決められた事に感謝する。しかし、其方も無謀と言えば無謀………セシルに唆されたのだとは分かるが、もし結婚前に子が出来たらどうするつもりだったのだ?レングストンはそういう事を好まない風習なのだ………其方自身の身もこの馬鹿な息子から守らねばならぬ。」
「………申し訳ありません………避妊はしてくれましたから、妊娠の兆候はありませんので、ご安心下さい。」

 アニースも言いたくないだろう、性の話。

「陛下、それぐらいになさいませ。」
「ユリア?」

 皇妃が皇帝の咎める言葉を遮る。

「アニース姫………気にする事はありません。レングストンの、特にこの王族の男達は、性欲が強い様なので、アニース姫が妊娠したとしても、咎める事はありませんわ。」
「皇妃様………。」
「母上!!」
「ユリア!!」
「リュカなんて、ナターシャ妃の結婚式迄待てませんでしたし、トーマスだってトリスタンで閨のしきたり等という事を婚約前にしてしまいましたから、同じようなものです。」
「…………母上………。」
「あれ程宰相が注意深くしていても、それを掻い潜る悪知恵が働く息子達ですもの、まだそれを思えば、媚薬を酔い覚ましの飲み物だと騙されたタイタスは可愛いものですわ。」

 リュカリオンとトーマスは本当の事なので言い訳も出来ない。
 皇妃のこの言葉に、ウィンストン公爵は珍しく笑っていたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています

水谷繭
ファンタジー
グレースは皆に悪女と罵られながら処刑された。しかし、確かに死んだはずが目を覚ますと森の中だった。その上、なぜか元の姿とは似ても似つかない幼女の姿になっている。 森を彷徨っていたグレースは、公爵様に見つかりお屋敷に引き取られることに。初めは戸惑っていたグレースだが、都合がいいので、かわい子ぶって公爵家の力を利用することに決める。 公爵様にシャーリーと名付けられ、溺愛されながら過ごすグレース。そんなある日、前世で自分を陥れたシスターと出くわす。公爵様に好意を持っているそのシスターは、シャーリーを世話するという口実で公爵に近づこうとする。シスターの目的を察したグレースは、彼女に復讐することを思いつき……。 ◇画像はGirly Drop様からお借りしました ◆エール送ってくれた方ありがとうございます!

私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。

さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。 許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。 幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。 (ああ、もう、) やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。 (ずるいよ……) リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。 こんな私なんかのことを。 友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。 彼らが最後に選ぶ答えとは——?

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

処理中です...