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すれ違った後は
しおりを挟む王都ボルテスから3週間、砂漠の中にある街を移動しながら、この日はオアシスにテントを貼り1夜を過ごす事になったアニース達。
侍女や兵士達が料理を作り、アニースもそれを手伝う。
「アニース様にお手伝い頂かなくても!」
「こういう旅は協力し合わなければ。行きは人数も足りたが、帰りは違う。やっと体力も回復したんだ、手伝わせてくれ。」
即位式後、ジャミーラ達の事が片付くのを待たず、アニース達はボルテスを出たのだ。
体力も戻らないまま、体力を消費する砂漠の旅をしていて、なかなか体力が戻らず、筋肉痛もあり手伝う事も出来なかったのだ。
アニースは今動きたくてやっている。
日を追うごとに、タイタスとの距離は近くなるどころか遠退いた。
アニースを労る言葉は毎日タイタスは掛けるが、身体にも触れる事もなく、あの夜の事も触れない。
(…………このま妃になっていいのか?)
とさえ思ってしまう。
かといって、自分からあの夜の事や、身体を求める行為も出来ずにいる。
(女から誘うなんて、レングストンではしない!)
水を汲みにアニースはオアシスの畔に来たが、考え込んでしまい時間が経っていた。
「アニース、飯出来たって…………アニース?」
「!!………あ、あぁ、ごめん今行く。」
「何かあったか?」
タイタスがアニースが汲んだ水樽を持つ。
「ううん、何も……。」
「そうか?言いたげだけど?」
タイタスの後ろに歩くアニースは立ち止まる。
「…………私、このままレングストンに行ってもいいのか?」
「当然だろ?」
タイタスもアニースが立ち止まるのを見て、自分も立ち止まった。
「私は、タイタスの妃になれるのか?」
「………嫌に……なったか?………あんな事したから。」
(………あ………違う……タイタスが悲しむ顔なんて見たくないのに………。)
落ち込んだ顔をするタイタスを見たら、アニースは言葉を出せない。
出せないから、腕を伸ばし、タイタスに触れようとするが、タイタスはそれを避けた。
「嫌なら嫌で仕方ないな………まだ婚約もしてないし、関係を白紙に戻そう………だけどあの件は償いぐらいさせてくれ。アニースがしたいように協力するから。」
水樽を持ち直し、タイタスは再び歩み始める。
「違う!!待ってくれ!!」
アニースは追い掛けて、後ろからタイタスに抱き着いた。
その拍子に水樽を落とし、肩に担いでいた為にアニースは頭から水が掛かる。
樽を投げ捨て、タイタスはアニースに振り返る。
その隙を狙い、タイタスの腕を掴んだアニース。
「だ、大丈夫か!!」
「………聞いて………私、タイタスとの事後悔してない……だから、タイタスが後ろめたさに落ち込ませてる事が心苦しいんだ……悲しむ顔なんて見たくない……でも、あれから避けられてる気がしたから、私から言い出せずにいたんだ………。」
「話は後だ!冷えてきた!とりあえずテントに入って着替えろ、アニース!」
「…………今聞いてよ!」
「阿呆!体力戻って間もないのに、風邪ひいたらどうする!」
「いいよ!ひいたって!要らないなら、邪魔になるなら、今ここで私を捨てて行けばいい!」
「出来る訳ないだろ!」
アニースはタイタスの腕を掴む力を込める。
「じゃあ、何で白紙にする!私は手順はどうであれ、嬉しかった!あれから体力を戻すのは大変だったが、ずっと寂しかった!タイタスは近くに居るのに、労ってくれるのに、触れて来る事もなく、寂しかったんだ!」
「…………アニース……。」
「私にはレングストンの女の貞淑さ等学んだ上辺だけ…………身についてもいないから分からないけど、私から誘うとタイタスは逃げる気がして怖かった………嫌われるかもしれないけど、触れて欲しかった!」
タイタスはアニースの手を振り解き、抱き締める。
「アニース………好きで……好き過ぎて……またあんな風に抱き潰したくなかったんだ………あんな風に女を抱いた事なんてなかった……本能に任せてまた触れたら、アニースが怖がると思って……。」
「タイタス迄濡れる………。」
「………俺も濡れたよ………今夜………アニースのテントに行くから……。」
「…………うん……。」
しかし、そうは問屋は下ろさない。
その後、セシルの監視により阻止された2人。
「何でだよ!いいだろ!結婚するんだから!」
「駄目です!」
「じゃあ、何でボルテスでアニースを俺に近づかせた!!」
「あれは、タイタス殿下を思っての事。今は緊急時ではありませんから。」
そんなやり取りが、アニースのテントの外で聞こえていた。
侍従達にバレていたのだろう。
しかし、アニースはタイタスが来ようとしてくれた事が嬉しくて、笑いが止まらなかった。
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