放浪の花嫁【完結】

Lynx🐈‍⬛

文字の大きさ
上 下
58 / 85

ざまあみろ

しおりを挟む

 その夜、宿屋に部屋を取ったアニース達。
 大所帯の為、宿屋を3件に分け宿泊をする事になった。
 アニースはタイタスとセシルと同じ宿屋に案内され、ジャミーラとヘルンは別の宿屋。

「何でバラバラなのよ!」
「まとめた方が警備楽じゃない!」
「警備の心配して頂くとは思いませんで……その点は、私の部下がジャミーラ姫達の警備はしますのでご安心を。」
「…………分かったわ……いいでしょう。」

 ジャミーラとヘルンが何を言っても、セシルは取り合わない。
 アニースとタイタスの宿屋にジャミーラ達を入れる事は出来るのだが、セシルに告げ口した侍女達の言葉通りに動くなら阻止したいのだ。

「ジャミーラ、いいの!?」
「アニース!!アンタ部屋変わって!!」
「………は?私の部屋には一つしかベッドが無いらしいが?」
「アンタは、ヘルンと同じ部屋に入ればいいでしょ!」

 宿屋の安価な部屋に泊まりたくないと言ったジャミーラとヘルンの我儘で、高価な宿屋に部屋を取っているのだ。
 それをジャミーラは1人部屋に行くと言う。

「ジャミーラの意図は分からないが、ヘルンが私と一緒は嫌がる筈だ。」
「そうよ!ジャミーラ!!抜け駆けしないでくれる!?」
「…………抜け駆け?………ジャミーラ……。」
「何よ………私は気まぐれなのは知ってるわよね?」

 部屋を変えろ、と言うジャミーラの気まぐれさは、アニースも知っている。
 だが、宿屋の品質迄落としてそう言うとは思えない。

「タイタスもヘルンと交代する、と言うならいいぞ?」
「!!意味ないじゃないの!!」
「…………やっぱり……。」
「!!………な、何がやっぱりな訳!?」
「…………タイタス!!」

 タイタスは離れて自分の部下と居た為、アニースは呼ぶ。
 すると、タイタスはアニースの方にやって来る。

「如何した?」
「今夜気を付けてくれ、ジャミーラがタイタスの部屋に夜這いに行くらしい。」
「!!………アニース!声を控えたらどうなの!」

 いくら大胆な性格のジャミーラで、今は独身でも街中で夜の営みを想像させる言葉は控えたかったらしい。
 人並みに醜聞はあったようだ。

「ジャミーラ姫、ご自分を大切にしたらどうですか?」

 タイタスに迄言われてしまい、勘違いだと言わんばかりにジャミーラはタイタスに近寄って腕を絡め、胸を押し付ける。

「…………。」

 タイタスはジャミーラの胸の感触にデレデレする訳でもなく無表情。

「嫌ですわ、タイタス殿下……私は自分を大切にしてますわ。大切にしているからこそ、お慕いしているタイタス様に、私を知って頂こうと部屋を近くにしたかったのです。」
「放して頂こう、ジャミーラ姫。私はあなたより魅惑的な身体の女を抱いた事も、魅力的な性格の女を口説いた事もある。あなたは私の好きな性格でも好きな身体でも無い。部屋を変えるのは自由にしてもらって構わないし、夜間部屋に来るのは構わないが、命と引き換えになる覚悟があるならどうぞ。私は夜、睡眠を邪魔されると、機嫌が悪くなる。その白い肌に刃が突き刺されてよいのなら……。」
「……………んな!!」

 タイタスはジャミーラの腕を解き、セシルに伝える。

「セシル、部屋に見張り付けるつもりではあるんだろ?」
「勿論です、タイタス殿下。アニース様とジャミーラ姫、ヘルン姫の前の部屋にも。」
「そういう事だ、ジャミーラ姫。来て入る前に追い払われるので、無駄な事はお止め下さい。」

 セシル達にジャミーラやヘルンの思惑はバレている事にアニースは思わず笑った。
 どうやって、今後タイタスを口説き落とすのか、何故正攻法で行かないのかが不思議ではあるのだが、ジャミーラやヘルンはしか出来ないのかもしれない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています

水谷繭
ファンタジー
グレースは皆に悪女と罵られながら処刑された。しかし、確かに死んだはずが目を覚ますと森の中だった。その上、なぜか元の姿とは似ても似つかない幼女の姿になっている。 森を彷徨っていたグレースは、公爵様に見つかりお屋敷に引き取られることに。初めは戸惑っていたグレースだが、都合がいいので、かわい子ぶって公爵家の力を利用することに決める。 公爵様にシャーリーと名付けられ、溺愛されながら過ごすグレース。そんなある日、前世で自分を陥れたシスターと出くわす。公爵様に好意を持っているそのシスターは、シャーリーを世話するという口実で公爵に近づこうとする。シスターの目的を察したグレースは、彼女に復讐することを思いつき……。 ◇画像はGirly Drop様からお借りしました ◆エール送ってくれた方ありがとうございます!

私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。

さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。 許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。 幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。 (ああ、もう、) やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。 (ずるいよ……) リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。 こんな私なんかのことを。 友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。 彼らが最後に選ぶ答えとは——?

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

処理中です...