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夜這い計画
しおりを挟む「ジャミーラ姫様、ヘルン姫様………。」
少しの休息なのに、わざわざテントを張らせ、大きな扇を持たせた侍女に、風を扇がせているジャミーラとヘルンは酒と果物を口に含んでいる。
「如何だった?来てくれたんでしょうね。」
「あら、居ないわよ。」
「も、申し訳ありません。タイタス殿下は既に出発準備に行かれてしまい、後程時間を作る、と申されまして……………ひっ!!」
「きゃっ!!」
ガシャーン!!
ビチャッ!!
ジャミーラから酒が、ヘルンから果物が侍女に投げられる。
「お、お許しを………。」
「申し訳ありません………。」
土下座し、謝るが侍女は何も悪くない。
「絶対に連れて来い、て言ったわよね!」
「ほら、連れて来い!!ボルゾイ絶世の美女が呼んでるのよ!!青臭さそうな皇子の中で冴えない皇子を相手してあげようとしてるんだから、早く連れて来い!!」
「アンタ達!何て呼び出したの!!」
怯えた声で、侍女達は恐る恐る話す。
「…………お、お話がある、とだけ………。」
「………ちっ!」
「使えない!!」
大きな声と大きな物音がしたのもあり、出発準備が整ったので、出発をしようと伝えに来たレングストンの兵士が、ジャミーラとヘルンが荒れていると、セシルを呼びに行く。
その知らせを受け、セシルが駆け付けた。
「これはこれは………何を騒いでいるんです。もう行きますよ、テントを片付けて下さいね。何故そこ迄テントを張るんです?長居の休息はしない、とお話しましたよね?」
「………………知るか!」
「そうだった?聞いてないわね。」
「では、部下に片付け手伝わせましょう、あなた達の物を盗むかもしれませんが……。」
「!!誰が触らせるものか!早く片付けなさい!!」
「は、はい!」
「邪魔よ!馬車に戻るわ!」
ジャミーラとヘルンはさっさと馬車に乗り込むのを見ると、セシルはボルゾイの侍従達に声を掛けた。
「我儘な振る舞いに嫌気が射したら、私に言いに来なさい。止めに来ますから。」
「…………ありがとうございます……。」
一方、馬車に乗り込んだジャミーラとヘルン。
「苛々するわ!あの男!」
「本当に鬱陶しい!!」
「ボルゾイに入ったんだから、私達の方が地の利が分かっている………あの男をどうにかしなきゃ………。」
「どうする訳?」
「………兵士に襲わせよう。明らかに文官のあの男なら、直ぐに倒せるわ!その隙に、タイタスが宿泊する部屋に潜り込むのよ!見張りは侍女達をけしかければ、兵士も簡単よ。」
「いいわね………既成事実さえ作っちゃえば、あんな青臭さい女を知らなさそうな男、直ぐ骨抜きよ。」
ジャミーラやヘルンは知らない。
タイタスは女に慣れている。
しかも、レングストンでは悪女と言われた今は投獄されているロレイラに、女を教わったのを。
ジャミーラやヘルンがどんな風にタイタスを骨抜きにするかは未だ不明だが、そう上手く行くかどうか………。
そして、その計画はこの夜に実行させるつもりでいたジャミーラとヘルン。
しかし、ここは馬車の中。
密室ではない。
外には侍従達が出発準備をしているのだ。
「……………知らせた方が………。」
「勿論、知らせなきゃ………もう、あの2人の我儘は嫌……。」
それを慌ててセシルに知らせに行く侍従達。
「ありがとう、伝えに来てくれて。気を付けよう………まぁ、一介の無階級の兵士に負けると思われているとは、ジャミーラ姫達は人を見る目が無いですね、分かりきってましたが………。」
「え?」
「あぁ、いえこちらの話です。あなた達は持ち場に戻りなさい。」
セシルもウィンストン公爵家嫡男。
文官と言えど、鍛えている事を知らないボルゾイの面々だった。
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