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ヴィオレット
しおりを挟むいくつもの勉強をアニースとジャミーラ、ヘルンで毎日熟してはいたが、数多くの講師達は、ジャミーラとヘルンに三行半を下していた。
だが、ジャミーラとヘルンを暇にさせると破天荒な事をされる為、勉強自体を参加させないという訳には行かなかった。
何度もウィンストン公爵から帰国を促してはいるものの、全くその行動に移さない。
その間、ウィンストン公爵も指を咥えて眺める訳でもなく、ボルゾイへの密偵は続けていた。
「ジャミーラ姫の元夫ですが、突然死の様です。ジャミーラ姫は残った遺産を受け取り、屋敷には住まず王宮には戻っていましたが、ジャミーラ姫が関与した証拠は見られませんでした。」
「関与したかどうかが分かると帰国すると思うか?」
「無理でしょうね、第一王子アラムと母の正妃が関与があったら揉み消すでしょうね。帰国は本人達が納得しなければ帰らないかもしれません。」
皇帝の執務室でウィンストン公爵の部下が調べた事を報告をするウィンストン公爵。
「何か糸口はないものか………。」
「全くです。」
その頃、王庭で侍女に連れられた、リュカリオンとナターシャの娘、ヴィオレットが散歩をしていた。
リュカリオンは執務、ナターシャはヴァン子爵の往診の為、ヴィオレットを連れ出した侍女と衛兵達。
アリシアから貰った編みぐるみを抱き締め歩くヴィオレット。
最近では走り回れるようになり、侍女達と追いかけっ子やかくれんぼをして遊んでいた。
「ヴィオ様、見つけました!」
「きゃっ!きゃっ!」
侍女に抱き上げられたヴィオレットは編みぐるみを落としてしまい、それを気が付かなかったヴィオレット。
暫くして1人の侍女がヴィオレットが編みぐるみを持ってないのに気付く。
「ヴィオ様、ぬいぐるみはどちらに?」
「…………あっ!どこ?………どこ?」
「探します、落とされたのですね?」
侍女や衛兵達が編みぐるみを探し回るのを、同じく王庭をふらふら歩くジャミーラが見ていた。
「騒がしいわねぇ………何これ………あら可愛いわね…………探してるのこれかしら………ま、落ちてる物貰ったって、これが探してる物かどうかなんて証拠ないものね、貰っちゃおっと。」
ヴィオレットの編みぐるみには、ヴィオレットの瞳の色に合わせた石が編みぐるみの目になっている。
ヴィオレットはアクアブルーの瞳の金髪の皇女。
ジャミーラはその編みぐるみの瞳の石が気に入ってしまった。
それを持って皇女宮へ戻ろうと、再び歩き出す。
その間に範囲を広げ探し回る侍女達。
衛兵も探していると、ジャミーラを見つけ、1人が声を掛けた。
「失礼致します。ジャミーラ姫様とお見受け致しますが、この辺りにヴィオレット様が落とされた編みぐるみを探しております。見かけてはおられないでしょうか?」
「……………知らないわよ、そんな物。」
ヴェールで隠すように持ち直すジャミーラだが、リュカリオンの指示もあり、ジャミーラとヘルンには注視するように言われている衛兵達。
「そうですか、失礼ですが手を隠されていらっしゃるので、お持ちかどうか確認させて頂いても宜しいでしょうか?」
「…………失礼でしょ!疑う訳!?」
「お断りの言葉は掛けさせて頂いております。お持ちでなければ問題にはなりません。他の場所を探すのみですから。」
「持ってない、て言ってるでしょ!」
編みぐるみを脇に挟み、手を衛兵に見せたジャミーラ。
しかし、その拍子で編みぐるみが脇から落ちる。
「ヴィオ様の編みぐるみ!!………ジャミーラ姫様!!これはどういう事でしょうか?」
この光景を見たヴィオレットは、暴れて侍女の手を離し、編みぐるみに駆け寄った。
「編みぐるみ!!ヴィオの!!」
「!!私のよ!!」
バチン!!
「!!……………わ~~~~ん!!」
「はっ!!」
「ヴィオ様!!」
「ヴィオ様大丈夫でらっしゃいますか!?」
「ジャミーラ姫様!!ヴィオ様がどなたのお子様かご存知ですか!?ヴィオ様は皇太子殿下のご息女!!この事は皇太子殿下、妃殿下にご報告させて頂きます!!」
「うっさいわね!たかがぬいぐるみ一つで泣き叫ぶんじゃないわよ!!落ちてたのを拾ってあげたんじゃない!」
「では、何故隠し持っていたんですか?」
「うるさいわね!!部屋に戻るから退きなさい!!」
流石に立場が悪いと分かったのか、その場から立ち去ろうとするジャミーラ。
ヴィオレットは頬が腫れ、痛そうに泣いており、冷やさなければならないが、編みぐるみはジャミーラの手にある。
「ジャミーラ姫様、編みぐるみをお返し下さい。」
「気に入ったの、私が貰うわ。拾った物だし、その子のだって証拠あるのかしら?」
「ありますわ、ジャミーラ様。」
「妃殿下!!」
往診が終わり、それを知らせようと王庭に出たナターシャが割って入る。
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