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義姉が皇女宮に
しおりを挟む「ここね?」
「…………はい。くれぐれも破天荒な事はお控え下さい。」
ジャミーラとヘルンが侍従達に自分達の荷物を持たせ、本人達は全く悪びれる事なく、少しも持たない。
目の前に建つ建物、それは皇女宮。
「ねぇ、ここに皇太子妃と第二皇子妃も居るんでしょ?」
「いいえ?皇太子妃は皇太子邸、第二皇子妃は第二皇子邸に居りますよ。因みに、殿下方の許可が無い者は一切入れません。この皇女宮には現在アニース様のみ。ジャミーラ姫とヘルン姫は3階をお使い下さい。4階は、先日迄おみえになっておられた、アードラ国アリシア王女がお使いになられてまして、まだ整えられておりませんので。」
「………あら?その王女、て妃候補じゃなかったの?」
「アリシア様は嫁ぎ先が決まりましたので、婚姻可能年齢迄アードラに帰郷されました。」
皇女宮を見上げたジャミーラ。
「ねぇ、一番上は?」
「5階の最上階はアニース様がお使いになられてますが?」
「私が5階使うわ。ヘルン、アンタ4階使いな。」
「は?ジャミーラ!今4階使えない、て言ってたじゃない!使うなら私も5階でしょ!」
「じゃあ、今すぐ4階を使えるようにしなさい!少しは待っててあげる。そうしたらヘルンが4階使えばいいじゃない。皇太子に通ってもらわなきゃならないし、5階だと上がるの大変だろうけど、皇太子との営みをヘルンは下で聞く耳立てればいいわ。」
何か勘違いしているようなジャミーラ。
そして、また我儘を言っている。
「さぁ、アンタ達、5階に私の荷物を運んで、ヘルンの物は4階よ!」
「衛兵!ジャミーラ姫を3階以上の階に上げるな!!」
「はっ!」
セシルがいち早く皇女宮の衛兵に声を掛け、脱兎の如く衛兵達は動く。
「何勝手に指示出してんのよ!」
「先程、破天荒の行動はお控えを、と申した筈。そして、勘違いされていらっしゃる様なので申し上げますが、この皇女宮は後宮ではありません。この宮は本来、皇帝の未婚のご息女がお使いになられる宮でございます。現皇帝にはご息女が居られないので、妃候補の方にお使い下さい、と空けているだけの事。原則、皇女が皇子宮に、皇子が皇女宮へ出入りはご兄弟姉妹のみ。皇帝が変われば居住者は入れ替わります。なので、現皇太子が皇帝になられたら、第一皇女ヴィオレット様が使います。それ迄の仮住まいなだけだという事ですから、勝手ではありません。レングストン王宮で決められた事に反する事をされようとしたジャミーラ姫が勝手なのです。その辺り肝に銘じておいて下さい。」
「うるさい!!私が皇太子妃になったら、そんな決まり無くしてやるわ!全部私の物にするのよ!」
「……………3階へ早くお入りを。侍従達は地面にあなたの荷を置けないでしょう?かわいそうではありませんか?」
「ふん!地面に置いて汚したらそれは要らないし、置いたヤツは罰与えてお終いよ!」
本当に自分本位の考えのジャミーラ。
ヘルンも同意見なのか笑っていた。
「セシル、私は構わないぞ、3階になっても。」
「アニース様。」
「5階に私が居ると、侍女達もジャミーラやヘルンの目に入るだろ?私の侍女はレングストンの者だ。5階に来る迄に何癖付けられては困るしな。」
騒がしかったのだろう、5階に居たアニースが窓を開けて、上から覗いていた。
「宜しいのですか?アニース様。」
「どの部屋だろうが、ジャミーラやヘルンが優位になる事はないからな。ただ、衛兵は一応中にも配置しておいて欲しい。侍女達の為に。」
「分かりました、事後報告に陛下とリュカ殿下、父には伝えましょう。許可致します。」
「セシル、ありがとう。今すぐ荷物を3階に移す。ジャミーラとヘルンの荷は暫く待っててもらえるか?直ぐに下りるから。でも良いのか?私が使っていた物を掃除もせず、ジャミーラやヘルンが使えるとは思っていないが?私なら、掃除してから荷を入れるがな。」
「アニースの癖に!義姉を何だと思ってるの!」
冷静に考えたら、人が使っていた部屋を空けろと言いつつ、直ぐに入って使いたいと思うのか、という事。
宿屋でさえ、掃除してから新たな客を入れるのだ。
ジャミーラとヘルンが嫌うアニースが使っていた物を素直に使いたいとは思えない。
(…………ジャミーラもヘルンも少し考えれば分かるだろうに、分からないという事は、相手にならないな。)
アニースは早々に侍女に指示し、私物が少ないアニースは直ぐに3階に下りたのだった。
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