放浪の花嫁【完結】

Lynx🐈‍⬛

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無能な証明

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 客間でジャミーラとヘルンに前日に渡した勉強の成果を確認を始めようとしていたセシル。

「セシル、それ私もやっていいか?」

 アニースもどれだけ覚えているかを知りたくなり、3人でする事になった。
 ジャミーラとヘルンは嫌々ではあるが。
 一応、目は通してあるような気配はあったようではある。

「では、離れてそれぞれお座り下さい。」

 それぞれ、机やダイニングテーブルに分かれて座るとセシルは問題用紙を渡す。

「時間制限は設けておりませんが、書けなくなったりした場合は終わりとみなします。書き終わりましたら、私に渡しに来てください。覗き見は駄目ですよ。」

 アニースはスラスラと書いていく中、ジャミーラやヘルンは全く手が進んでいない。
 30分程経過した頃、アニースは書き終わり、セシルに渡した。

「……………7割程正解されてますね、真面目に殿下方からの勉強を受けていらっしゃるから無駄にされてませんね。」
「忘れてしまったのもあったから復習はしなければな。」
「努力は身になりますからね………:さて、ジャミーラ姫とヘルン姫、手が進んでませんが、終わりますか?」

 ジャミーラとヘルンは、アニースを睨み付けていた。

「分かる訳ないでしょ!1日だけで!」
「そうよ!私達はレングストンの事を勉強してきた訳じゃないんだから!」
「では、ボルゾイの事も問題は出してますが、そちらは完璧なんでしょうね?完璧であれば、こちらも譲歩を考えても良いですが?」

 セシルは、ヘルンの書いた答案を覗き、紙を持って行く。

「あ!」
「……………ボルゾイの事なら、分かるのではないのでは?半分も書いてないですね。アニース様はボルゾイとレングストンの国交に関しては完璧に答えてらっしゃいましたよ?」
「ま、まだ途中なのよ!」
「そうですか、では続きをお願いします。」

 だが、それ以降全く、ペンが動く事は無く、そのまま終わらせたセシル。

「まぁ、予想通りでしたね。ジャミーラ姫、ヘルン姫、ボルゾイの侍女を数人交代で入室許可はさせます。そしてレングストンからお2人に講師を付けましょう。但し、1週間です。1週間で、今の問題以上の問題数を出題しますので、その結果次第でになれるかどうか、を見極めさせて頂きます。それ迄はこの客間意外自由はありませんのでご理解下さい。」
「私達をこの部屋から出しなさいよ!」
「無理です。レングストンの侍従達はあなた方を信用をしていないどころか、嫌っておりますし、貴族達もあなた方が妃候補にさえなるのも反対している始末ですから、あなた方ご自身で信用を勝ち取るしか道はありませんからね。」
「ボルゾイの事が嫌なら、アニースだってそうじゃない!」

 ヘルンがアニースを指を指す。
 何故自分の事を棚に上げ、アニースをヘルンやジャミーラと同等の位置にさせるのか、分かっていても解せないアニース。

「アニース様は、貴族方からの信用も侍従達からの信頼もご自身で悪くなったボルゾイの印象を良くされた。アニース様は違うのだ、とね。あなた方がアニース様のようになれれば、王宮内をご自由に動けるかもしれませんね。……………期待してませんが。」
「絶対にアンタは許さないわよ!」
「ジャミーラ、彼はリュカ殿下の腹心の部下だ。そんな態度だと、信頼も信用も持ってもらえないぞ?」
「だから何よ、そんなもの私が皇太子妃になったら、こんな奴首跳ねるだけだわ。」
「アニース様、私は彼女達に何を言われようが構いませんよ。どのみち彼女達は出来ませんから。」
「…………確かに。リュカ殿下が許さないだろうし。」
「……………さっきから、リュカ殿下、リュカ殿下、て何でアンタが名前呼びしてんのよ!私は許されなかったのに!」

 アニースを詰るヘルンはかなり悔しそうな顔をする。
 だが、アニースはもうヘルンにもジャミーラにも怯まない。

「あぁ、名前呼びで許しが出たからな。因みに、タイタスは呼び捨てしても怒られない。」
「そうだわ、ヘルン、アンタはタイタス殿下を狙いなさい。」
「は?嫌よ!私は皇太子妃になる、て言ってるでしょ!」
「アニースがタイタス殿下の妃候補なら、アンタが勝ち取ればいいのよ。」

 本当に見苦しい2人。
 
「セシル、見苦しいだろう?私の義兄弟はあそこ迄ではないが、義姉妹はジャミーラ筆頭にあんな感じだ。」
「その中で、よくアニース様は真っ当に生きてらっしゃいましたね。」
「本当にそう思う………ジャミーラ、ヘルン、聞きたい事があるんだが、お父様のご病気はどうなんだ?」
「知らないわ。」

 ジャミーラから信じられない言葉が返る。

「私も興味ないし。」

 ヘルンも同様だった。

「……………あなた達の父親でもあるじゃないか!」
「死ぬ、て分かってるんだからどうでもいいわ。」
「私達は遊んで暮らせるだけの地位にあってそれが許されるの。お父様が死んだって、お兄様が王になるんだし、その前に同等かそれ以上の暮らしが出来る夫を見つける事が優先ね。」
「そうそう、前の夫からの遺産なんて大した事なかったのよ、だから私達がレングストンに来たんじゃない。」
「………………許さないぞ、それでも王女か!」

 バチンッ!…………バチンッ!

 アニースが今度はジャミーラとヘルンを平手打ちをした。

「アニース様!」
「何すんのよ!!」
「痛いわね!!」
「…………レングストンから出てけ!これ以上迷惑を掛けるな!」

 情けない義姉達を平手打ちし、レングストンに申し訳無さすぎて、泣けてしまうアニースをジャミーラとヘルンから引き離すセシルは、客間からアニースを連れ急ぎ出た。
 客間の中で、また発狂するジャミーラとヘルンだったが、それは客間から出さなければ済む事だった。
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