42 / 85
無能な証明
しおりを挟む客間でジャミーラとヘルンに前日に渡した勉強の成果を確認を始めようとしていたセシル。
「セシル、それ私もやっていいか?」
アニースもどれだけ覚えているかを知りたくなり、3人でする事になった。
ジャミーラとヘルンは嫌々ではあるが。
一応、目は通してあるような気配はあったようではある。
「では、離れてそれぞれお座り下さい。」
それぞれ、机やダイニングテーブルに分かれて座るとセシルは問題用紙を渡す。
「時間制限は設けておりませんが、書けなくなったりした場合は終わりとみなします。書き終わりましたら、私に渡しに来てください。覗き見は駄目ですよ。」
アニースはスラスラと書いていく中、ジャミーラやヘルンは全く手が進んでいない。
30分程経過した頃、アニースは書き終わり、セシルに渡した。
「……………7割程正解されてますね、真面目に殿下方からの勉強を受けていらっしゃるから無駄にされてませんね。」
「忘れてしまったのもあったから復習はしなければな。」
「努力は身になりますからね………:さて、ジャミーラ姫とヘルン姫、手が進んでませんが、終わりますか?」
ジャミーラとヘルンは、アニースを睨み付けていた。
「分かる訳ないでしょ!1日だけで!」
「そうよ!私達はレングストンの事を勉強してきた訳じゃないんだから!」
「では、ボルゾイの事も問題は出してますが、そちらは完璧なんでしょうね?完璧であれば、こちらも譲歩を考えても良いですが?」
セシルは、ヘルンの書いた答案を覗き、紙を持って行く。
「あ!」
「……………ボルゾイの事なら、分かるのではないのでは?半分も書いてないですね。アニース様はボルゾイとレングストンの国交に関しては完璧に答えてらっしゃいましたよ?」
「ま、まだ途中なのよ!」
「そうですか、では続きをお願いします。」
だが、それ以降全く、ペンが動く事は無く、そのまま終わらせたセシル。
「まぁ、予想通りでしたね。ジャミーラ姫、ヘルン姫、ボルゾイの侍女を数人交代で入室許可はさせます。そしてレングストンからお2人に講師を付けましょう。但し、1週間です。1週間で、今の問題以上の問題数を出題しますので、その結果次第で妃候補になれるかどうか、を見極めさせて頂きます。それ迄はこの客間意外自由はありませんのでご理解下さい。」
「私達をこの部屋から出しなさいよ!」
「無理です。レングストンの侍従達はあなた方を信用をしていないどころか、嫌っておりますし、貴族達もあなた方が妃候補にさえなるのも反対している始末ですから、あなた方ご自身で信用を勝ち取るしか道はありませんからね。」
「ボルゾイの事が嫌なら、アニースだってそうじゃない!」
ヘルンがアニースを指を指す。
何故自分の事を棚に上げ、アニースをヘルンやジャミーラと同等の位置にさせるのか、分かっていても解せないアニース。
「アニース様は、貴族方からの信用も侍従達からの信頼もご自身で悪くなったボルゾイの印象を良くされた。アニース様だけは違うのだ、とね。あなた方がアニース様のようになれれば、王宮内をご自由に動けるかもしれませんね。……………期待してませんが。」
「絶対にアンタは許さないわよ!」
「ジャミーラ、彼はリュカ殿下の腹心の部下だ。そんな態度だと、信頼も信用も持ってもらえないぞ?」
「だから何よ、そんなもの私が皇太子妃になったら、こんな奴首跳ねるだけだわ。」
「アニース様、私は彼女達に何を言われようが構いませんよ。どのみち彼女達は出来ませんから。」
「…………確かに。リュカ殿下が許さないだろうし。」
「……………さっきから、リュカ殿下、リュカ殿下、て何でアンタが名前呼びしてんのよ!私は許されなかったのに!」
アニースを詰るヘルンはかなり悔しそうな顔をする。
だが、アニースはもうヘルンにもジャミーラにも怯まない。
「あぁ、名前呼びで許しが出たからな。因みに、タイタスは呼び捨てしても怒られない。」
「そうだわ、ヘルン、アンタはタイタス殿下を狙いなさい。」
「は?嫌よ!私は皇太子妃になる、て言ってるでしょ!」
「アニースがタイタス殿下の妃候補なら、アンタが勝ち取ればいいのよ。」
本当に見苦しい2人。
「セシル、見苦しいだろう?私の義兄弟はあそこ迄ではないが、義姉妹はジャミーラ筆頭にあんな感じだ。」
「その中で、よくアニース様は真っ当に生きてらっしゃいましたね。」
「本当にそう思う………ジャミーラ、ヘルン、聞きたい事があるんだが、お父様のご病気はどうなんだ?」
「知らないわ。」
ジャミーラから信じられない言葉が返る。
「私も興味ないし。」
ヘルンも同様だった。
「……………あなた達の父親でもあるじゃないか!」
「死ぬ、て分かってるんだからどうでもいいわ。」
「私達は遊んで暮らせるだけの地位にあってそれが許されるの。お父様が死んだって、お兄様が王になるんだし、その前に同等かそれ以上の暮らしが出来る夫を見つける事が優先ね。」
「そうそう、前の夫からの遺産なんて大した事なかったのよ、だから私達がレングストンに来たんじゃない。」
「………………許さないぞ、それでも王女か!」
バチンッ!…………バチンッ!
アニースが今度はジャミーラとヘルンを平手打ちをした。
「アニース様!」
「何すんのよ!!」
「痛いわね!!」
「…………レングストンから出てけ!これ以上迷惑を掛けるな!」
情けない義姉達を平手打ちし、レングストンに申し訳無さすぎて、泣けてしまうアニースをジャミーラとヘルンから引き離すセシルは、客間からアニースを連れ急ぎ出た。
客間の中で、また発狂するジャミーラとヘルンだったが、それは客間から出さなければ済む事だった。
0
お気に入りに追加
68
あなたにおすすめの小説
稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています
水谷繭
ファンタジー
グレースは皆に悪女と罵られながら処刑された。しかし、確かに死んだはずが目を覚ますと森の中だった。その上、なぜか元の姿とは似ても似つかない幼女の姿になっている。
森を彷徨っていたグレースは、公爵様に見つかりお屋敷に引き取られることに。初めは戸惑っていたグレースだが、都合がいいので、かわい子ぶって公爵家の力を利用することに決める。
公爵様にシャーリーと名付けられ、溺愛されながら過ごすグレース。そんなある日、前世で自分を陥れたシスターと出くわす。公爵様に好意を持っているそのシスターは、シャーリーを世話するという口実で公爵に近づこうとする。シスターの目的を察したグレースは、彼女に復讐することを思いつき……。
◇画像はGirly Drop様からお借りしました
◆エール送ってくれた方ありがとうございます!
私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。
さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。
許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。
幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。
(ああ、もう、)
やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。
(ずるいよ……)
リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。
こんな私なんかのことを。
友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。
彼らが最後に選ぶ答えとは——?
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる