放浪の花嫁【完結】

Lynx🐈‍⬛

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尊敬の捉え方

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 王城門から、梃子でも動こうとしないジャミーラとヘルン。
 ボルゾイの侍従達もウンザリした顔で、疲れからか何人かが倒れ込んでいるようだ。
 主人であるジャミーラやヘルンは、ピンピンしていて、血色も肌艶も良いのにこの差は何たる事か、と心配になる。

「マズイな………ボルゾイの侍従達の様子は心配だ。」
「父上、如何します?」
「私では判断出来かねる………まさか、頭が無いなりに、コレを見越したのではあるまいな………。」

 ウィンストン公爵とセシル、カイルが侍従達を心配していると、そこにカイルとトーマスがやって来た。

「宰相、お引き取り願えたか?」
「皇太子殿下………いえ………一向に。」
「きゃあ!皇太子殿下よ!私達、ボルゾイからあなたの妃になる為にやって来たんです!それなのに、何故入れて頂けませんの?」

 リュカリオンの姿を見つけるや否や、急に声色を変えたジャミーラ。

「皇太子殿下!私もあなたの事を忘れられません!どうか私を妃に!」

 ジャミーラに引き続き、ヘルンさえも媚びる。

「しつこいな………だが、これでは帰らないだろうし、仕事や公務に差し支える。」
「…………殿下、私に案があるのですが。」
「何だ?」
「陛下の許可も頂かなければなりませんが、一旦、をさせてみては、と………。」
「何だと?」
「講師には、殿下方以外の講師を付け、では妃になれない、と証明させれば良いのです。」
「……………それでは、ナターシャとラメイラの心が休まらないのでは?存在だけでも迷惑なのだぞ?」
「では、娘とラメイラ妃に離宮で静養させれば宜しいかと。」
「ちょっと待て、宰相!それは反対だ!」
「俺も反対………ラメイラと離れるのは堪えられん!只でさえアードラから帰ったばかりで…………。」
「俺だってそうだ!今悪阻で苦しんでいるのに。」

 ウィンストン公爵とカイル、トーマスが揉め始める。

「離宮に行かなくても良いのでは?」
「セシル?」

 セシルはウィンストン公爵の案を聞き、賛同するかの様に付け加えた。

「父の言う通り、食事や睡眠以外、暇なく勉強させれば良いんですよ、2人同時に。客間に押し込んでおいて、妃にはなれない、と言い放てば良い。ナターシャもラメイラ妃も今迄通りに過ごせる筈です。アニース姫とアリシア王女は今迄同様、殿下方からの勉強もそのまま出来ると思いますよ。」

 リュカリオンは門兵の向こうに居るジャミーラやヘルンの声を一切無視し、顎に手を当て考え込む。

「なるほどね………トーマス、父上に知らせて来てくれないか、それで了承を得たら、ジャミーラ姫とヘルン姫を客間に押し込もう。タイタス。」
「リュカ兄上、何だ?」
「お前は、ボルゾイの侍従達の体調が悪くなっている者達を、部下を使って医者に診せてやってくれ。流石に、彼らがかわいそうだ。」
「分かった。」
「兄上は宰相の案に乗るんだな?」
「自由にはさせるつもりはないぞ?トーマスだって、ラメイラの心配は俺以上だと思うしな。」

 リュカリオンの指示の元、トーマスは皇帝の執務室へ戻り、タイタスは部下に指示をし、ボルゾイの侍従達の手当をしに動こうとする。

「タイタス………あの、先程はありがとう。嬉しかったよ。」
「アニースは気にしなくていい。俺が許せなかっただけだ。義理とはいえ、姉に言われていい言葉じゃない。俺は、リュカ兄上もトーマス兄上も尊敬してやまないが、兄上達は俺にあんな事は言った事もないしね。」
「私だって、あなた達兄弟は尊敬する方達だよ。それに、私は彼女達には負けない自信をレングストンで付けたんだ。妃候補は譲らないし、尊敬するナターシャやラメイラの場を守ってみせるよ。」
「ははは………頼もしいな。一緒に頑張ろうぜ。」
「勿論!」

 アニースとタイタスの会話は戦友のような会話ではあったが、いいコンビだと見ていたリュカリオンは思った。

「なかなかお似合いですね、タイタス殿下とアニース姫。」
「そうだな………ナターシャとはだいぶタイプは違うが、アニースはタイタスを上手く扱えそうだ。タイタスが欲しいだろう言葉を掛けてる。」
「そのようですな。」

 リュカリオンとウィンストン公爵の会話は、アニースとタイタスには聞こえていない。
 ジャミーラとヘルンの声の方が大きかったからだ。

「宰相、あの姫達の対応、任せてしまってもいいか?私が言うのも構わないのだが、話が噛み合わないし、近くに寄りたくもない。」
「大丈夫です。私も殿下方をあの姫達に近付かせたくありませんから、私と息子達にお任を。」
「…………げっ!」
「………カイル………。」
「カイルは嫌そうだな………はははっ!」

 ウィンストン公爵は息子達を巻き込み、自分も極力相手にしたくないのが、その息子2人も分かるので、引き込まれたカイルがポーカーフェイスも作らずに嫌そうな顔を見せたのだった。

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