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芽生える
しおりを挟む「入れなさい!私達はボルゾイから皇子妃になりに来たのよ!」
「未来の皇妃にひれ伏しなさい!」
王城門にレングストンの衛兵を挟み、ジャミーラとヘルン、タイタス、セシルとカイルが睨み合っている。
少し時間は遡り、予定に無いレングストンの馬車ではない馬車がやって来た。
「失礼だが、どちらの方でしょう?」
王宮門の衛兵が、その馬車の団体に声を掛けた。
「突っ切りなさい!」
「は、はい………。」
「な!!」
「追い掛けろ!!」
騎乗でいち早く先回りした衛兵が王城門の兵に阻止をしろ、と衛兵達が人の盾となり、ジャミーラとヘルンを入れないようにし、その騒ぎにタイタスが駆け付けた直後、セシルとカイルもやって来て今に至る。
「ヘルン姫、お帰りになられた筈。何用でございましょう。」
「何用?アンタが追い出したのではないの!」
セシルが腕を後ろに組み、威圧的にヘルンに物申すが、ヘルンは前で腕を組み威張るように動じる事なく言葉を返す。
「あぁ、そうそう…………あなたが奪って行った客間の調度品の請求書は、入れ違いになったでしょうが送っておりますので。」
「あんな物は迷惑料で私が頂いたのよ!いい?迷惑料!」
「相変わらず、下品な王女だな。」
男を悩殺するような服は着てはいても、下品な事と態度に、その場にいる男達は全くジャミーラやヘルンに興味も持たない。
それを代表し、カイルはヘルンをあざ笑う。
「何ですって!」
「下品だから下品だって言ったんですよ、ヘルン姫。レングストンは淑女を重んじる国。あなたの中に淑女の微塵も見られません………そう思いませんか?タイタス殿下。」
タイタスはカイルの横でジャミーラとヘルンに嫌悪感を滲ませながら立っている。
人盾を命じたのはタイタスだが、ジャミーラとヘルンを王城に入れる訳にはいかないと、直感で思ったのだ。
「あぁ………俺達4人の皇子、誰からもあなた達を妃に望むとは思えないな。」
「タ、タイタス殿下!?」
ジャミーラとヘルンは、タイタスに興味はなかった為、顔を覚えてもいなかった。
「淑女ですって?そんな物は、直ぐに熟知してやるわよ、ねぇ、ヘルン。」
「えぇ、ジャミーラ……………私達はボルゾイでも絶世の美女と言われた姉妹、そんな物は簡単よ!」
「ほほぅ………簡単と申されるか。」
「ジャミーラやヘルンには難しいと思うが?」
「!!……アニース!!」
遅れてやって来たアニースとウィンストン公爵。
ジャミーラとヘルンがアニースの姿を確認すると、更に険しい顔になりアニースを睨んでいる。
「何でアンタはレングストンにまだ居るのよ!お父様が心配されてる、て知らないの!」
「じゃあ、何でジャミーラやヘルンはレングストンに来ている?お父様に私をあなた達は会わせぬようといつも阻止していたじゃないか。」
「聞きづてならないわね、アンタがお父様の心配の種だからよ!私達を姉と認めない、お母様をお父様から奪った女の娘が、全く私達の言う事を聞かないからでしょ!」
「尊敬も出来ない女の言う事等、誰が聞く?」
ジャミーラとヘルンが代わる代わるアニースが関わると集中的に詰る。
「身分低い女は、身分上の者には敬って当然なのよ!尊敬出来ないんじゃなくて、するの!アンタは!」
「聞きづてならないな、ボルゾイの姫達。」
「タイタス?」
アニースとジャミーラ、ヘルンが言い合うのも見苦しいが、この状況に嫌気が差した者も多い中、タイタスがアニースを庇う様に前に出た。
「尊敬は命令するものではない。尊敬は自分に無いものを自分が手本にするかしないか、だ。アニースの中で、あなた達のその行動が手本にしたくないから、尊敬にならないだけだ。それではあなた達を姉とは言わぬだろう。それに、アニースは私の妃候補だ。侮辱する事も、詰る事も許さない。器量も気品もアニースに勝てないあなた達に言う資格等ないのだ。」
「…………タイタス………。」
「おいおい………あの2人、まとまるんじゃね?」
「………カイル、口を慎め。」
アニースはタイタスの言葉が嬉しく、頬を赤らめた。
しかし、それがまたジャミーラやヘルンから見えてしまい、更に憤慨するのだが、セシルやカイル、ウィンストン公爵にはそれが安心させた。
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