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砂嵐現る
しおりを挟むリュカリオンと共にアニースは皇帝の執務室にやって来た。
そこには、皇帝、ウィンストン公爵、トーマス、コリンが既に待機し、リュカリオンは状況を把握する。
「どうして、ボルゾイの姫達が!」
「申し訳ありません、皇太子殿下。」
「宰相が謝る必要はないが?」
ウィンストン公爵が一礼する。
「ヘルン姫帰国直後、密偵を送っておりました。しかし、王宮にジャミーラ姫が戻っており、ヘルン姫帰国早々、ジャミーラ姫と共に直ぐに出発。先回りして密偵が帰って来たのは今朝なのです。状況確認をしておりましたら、既に王宮へ。ご報告遅くなりまして申し訳ありません。」
「ちょっと待て、宰相の密偵はそんなに遅い行動はしていないだろ?」
「はい…………ジャミーラ姫達は、ほぼ休みなく移動して来たそうです。姫2人以外、疲れきった様子です。」
休憩無しで来たというのに驚いた。
ヘルンがレングストンから帰国したのが約4ヶ月程前。
少なくとも2ヶ月以上掛けての旅路な筈なボルゾイなのだが、帰って直ぐ戻って来る根性に度肝を抜かれた。
「侍従達を何だと………。」
アニースは怒りが込み上げていた。
「アニース姫にはお伝えしてませんでしたが、ヘルン姫は侍女が気に食わず、腕を落とそうと、客間内で行おうとしておりました。そして、客間の調度品も奪われ………。」
ウィンストン公爵がアニースに告げる。
その言葉に絶句する、アニース。
「………ヘルンならやります……侍従達は道具、と常に言っていたので。ジャミーラは更に残虐です………未亡人になった、と聞きましたが、夫となった男の死因を調べた方がいいかもしれません。」
「………でしょうな。密偵に行かせたのは一人だけではありません。後に調べて報告もあるでしょう。」
「私、王城門に行かせてもらってもいいでしょうか。」
「…………宰相、付き添いを。」
「御意………アニース姫、ご案内致します。」
皇帝は、セシルやカイルの対応に信頼はしてはいるが、真意をジャミーラやヘルンに素直に言うとは思えず、アニースが行く事を許可をした。
皇子2人は行かせられない。
「如何します?父上。」
「…………そのまま帰ればよし、帰らねば姫達は如何するのか、それが問題だ。真意はやはり、皇子妃の座であろうが、リュカもトーマスも既に既婚………あの姫達がタイタスの妃で満足はしないだろうし、タイタスにあの姫達は合わん………帰ればいいがな……。」
「タダでは帰らないと………先程アニース姫も言ってましたが、ジャミーラ姫の元夫の死因は早く調べた方がいいと思います。」
「そうだな。」
リュカリオンからしても、ジャミーラとヘルンは招かれざる客でしかない。
それに、妃達は懐妊中なのだ。
残虐な性格なら、懐妊を知られて何を起すか分からない。
特に、ラメイラは絶対安静にしていなければならない双子なのだ。
「父上、私も行きましょう。」
「リュカ?」
「兄上も行きます?俺も行こうかと。」
「トーマス迄………行ってどうする…………ジャミーラ姫とヘルン姫に言い寄られるだけでは?」
「分かりません………ですが、このままでは、ナターシャもラメイラの胎教に悪いかと。」
「…………うむ……そうだな、其方達に任す。」
「失礼します。」
リュカリオンとトーマスは王城門に向かう。
その後ろ姿を見送り、大きなため息を付いた皇帝。
「………どうしたものか……。」
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