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幸せの後
しおりを挟む夕方には王宮に帰ってきたアニースとタイタス。
店でケーキを食べ、ナターシャやラメイラ、アリシアにお土産を買った後、あちらこちらと露店を見ながら貴族街の入り口に戻ってくる。
その間も会話はあったが、お互いに意識するような会話は避けていた。
アニースにはそれは有難かったが、手を繋ぐ事はやめなかったので、常にタイタスの温もりを感じた。
「アニース、また誘っていいか?」
「………うん。」
「じゃあ、また……。」
「うん、また。」
皇女宮迄送ってくれたタイタスを見送り、自室に戻る前に、アリシアの部屋へ行くアニース。
「アニースお姉様、何処に行かれてたんですか?あ、可愛いその姿。」
「タイタス殿下と街にな。」
「え~!わたくしも行きたかった!」
「じゃあ、また今度な。これお土産、アリシア、チーズケーキ好きだろ?」
手提げ袋に入ったチーズケーキをアリシアに見せると、拗ねた顔が笑顔になった。
「チーズケーキ!!食べる!!」
「アリシア様!!食後になさいませ!」
「食後にな。着替えてくるからそれから食事を一緒に食べよう。街での事を話す。」
「はい!」
アニースはアリシアに街での事を話すと、アリシアも楽しそうに聞いている。
「わたくしも街に行きたいなぁ……行かせて欲しいなぁ……。」
「どうなんだろう、勝手には行けないだろうしな。」
「…………カイルに連れてって欲しい……。」
「頼んでみたらどうだ?」
「そうですね!言わないと分からないですよね!」
アニースが意気揚々とするアリシアを不思議そうに見ていたのだが、手元にあるチーズケーキを食べている事で、元気になったと思っていた。
(最近のアリシアは浮き沈みが激しかったが、チーズケーキで元気になったようで、良かった。)
✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧
タイタスと街に行ってから3週間あまり経ち、王城内の図書館で、リュカリオンを講師にアリシアと共に勉強をしていた。
「アリシア、そこ文字違ってるぞ。」
「……………あ、本当……リュカ殿下、ありがとうございます。」
「あと、ここ……個数が間違えてる。」
「え!…………すいません!」
「今日、上の空だな、アリシア。どうかしたか?」
リュカリオンが伝えた内容を書き留めた事を間違えて書いていた。
「アードラに帰国も近いからか?」
「アリシアはアードラに帰るのか?」
「…………はい………帰りたいような帰りたくないような………。」
「もう直ぐ1年か、アリシアが来て。」
しみじみしてしまいそう。
そう思っていたら、図書館に風が吹き込む。
その風が突風だった。
「わっ!凄い風!」
「窓締めるか………。」
バタバタバタバタ………。
「皇太子殿下!大変です!」
「どうした?何かあったのか?」
息切れをしながら図書館に入って来た、文官らしき若い男。
「す、直ぐ陛下の執務室へお願いします!アニース姫とご一緒に!」
「執務室に?」
「…………はい!只今、王城門にアニース姫の義姉、ボルゾイ国第一王女、ジャミーラ姫、第二王女、ヘルン姫が!」
「は?ヘルン姫は帰ってからまたジャミーラ姫を連れて来たというのか!」
「…………お、おそらく……只今、宰相のご子息、セシル様とカイル様が対応に行かれました。」
リュカリオンは顎に手を添えて考えている。
窓を締めながら、聞いていたアニースは顔を青ざめていく。
「アニース………。」
「はい。」
「俺と一緒に来てくれ。アリシアは悪いが今日は切り上げ皇女宮に戻っておいてくれ。」
「は、はい。」
アニースはリュカリオンに連れられ、図書館を出て行った。
「アニースお姉様!お気を確かに!」
「あぁ、ありがとう、アリシア。」
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