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トーマスとカイルの帰国
しおりを挟むラメイラの双子懐妊を喜んでいたのも束の間、再び嬉しい朗報がアニースに届いた。
皇太子妃ナターシャ、第二子懐妊したと言う。
「何て喜ばしい事が立て続けで!」
リュカリオンはナターシャの懐妊が分かると直ぐに公表をした。
「あれ?ナターシャ、もう公表するのか?」
トーマス邸に、アリシアが編みぐるみを指南しに、アニースと来ていた時の事。
ラメイラが不思議そうに呟いた。
「嬉しい事ですから、公表したのではないです?」
「…………あ、そっか今は危険が無いからか。」
「危険?」
アニースとアリシアは知らないのだ。
ナターシャがヴィオレットを懐妊中、襲われた事を。
詳しくはラメイラも話をしていない。
「ナターシャは、ヴィオを妊娠中殺されかけたんだよ、王城内で。だから、解決する迄公表を控えてたんだ。」
「王城で!!安全な王城でですか?」
「相手は公爵令嬢だったからな、身分的に登城許可が緩いし。」
「でも、良かったな………無事で。」
「…………そうでもなかったよ、ナターシャを警護していた兵士が亡くなったから、ナターシャは落ち込んでた。」
「…………そうだろうな……ナターシャは責任感強そうな方だし。」
アニースとアリシアは手を止める事なく編みぐるみを作り続けながら、話をしているのだが、ラメイラは話しながら出来ず、苛々し始める。
「……………うっ……出来ない……アリシア……。」
「何処ですか?…………あ、ココ一目ズレてますわ。」
「…………う~~っ!!」
「ラメイラ様!苛々は駄目ですよ!!落ち着いて~、落ち着いて~……。」
部屋に控えていたマーニャがタイミング良くラメイラに声を掛ける。
「大変だな、ラメイラ……。」
「………双子だと、流産しやすいんだよ……細心の注意が必要で、歩くのも座るのも、ゆっくり落ち着いて……て言われた。」
「あら、ラメイラお姉様が一番苦手な事ですわね。」
「そうなんだよぉ!どうにかならないかな!」
「ラメイラ様!!落ち着いて下さい~!」
「…………ラメイラ、面白いな………見てると。」
「本当。」
お腹の子がもう少し成長する迄、大人しくしなければならないラメイラは、トーマス邸からも出れないでいる。
ナターシャに謝りに行きたいのに、ナターシャも懐妊で体調が悪かったら、尚更会うのも難しいのだ。
「仕方ないじゃないかぁ!ナターシャに会いたい!おめでとう!て言いたい………ごめんなさい、て………言いたい…………。」
「あぁ!ラメイラ様!落ち着いて下さい!」
苛々からナターシャに会えないもどかしさから涙を零すラメイラ。
アニースとアリシアは傍から見ているだけで面白いのだが、侍女達はそうではない。
一喜一憂する情緒不安定のラメイラを宥めるのに必死だったのだ。
バタバタバタバタ…………。
カチャ!
「失礼致します!ラメイラ様!トーマス殿下が帰国されるそうです!今国境を超えたと伝令が参りました!」
「!!トーマス!!帰ってくるの!?」
直ぐに涙を止めたラメイラは一気に嬉しそうに笑う。
「はい!側近のカイル様と共に!」
「カイル!!」
今度はアリシアが、ソファから立ち嬉しそうにはしゃいだ。
「アリシアもラメイラも良かったな。愛しい人ともう直ぐ会えるぞ?」
クスクスとアニースはそんな2人を見ると幸せを分かち合える気がして嬉しかった。
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