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久々の馬上
しおりを挟むアニースはサーシャ達と話に夢中になり、ナターシャやラメイラ、アリシア以外の女性貴族と話すのが久々で楽しんでいた。
「アニース姫。」
「………セシル。」
「どうされました?」
「キャー!セシル様よ!!」
アニース以外の女はどよめく。
「今日は休みになったから、馬に乗せてもらおうと、厩舎に来たのだが軍事訓練だと知らず、邪魔してはと思い見ていたら、彼女達と知り合い話をしていたんだ。話が盛り上がって、軍事訓練をみてなかったが……。」
「そうでしたか……もう終わりましたが、騎乗されますか?乗れる馬はあるかと。」
「……………彼女達と話もしたいし、馬にも乗りたいし………。」
「アニース様、馬に乗れるのですか?」
シエラが聞いてくる。
「ボルゾイは砂漠が多いから、移動手段は馬かラクダなんだ。女でも乗れるようには練習する。」
「ラクダ?」
「砂漠を歩くのに適した動物で、馬より大きいぞ。背中にコブがあって、面白い愛嬌ある顔をしている。力もあり荷物を運ぶのにいい働きをするんだ。」
「レングストンでは見ない動物ですわね。」
「アニース様の騎乗姿見てみたいです。」
「私も。さぞかし凛々しくてらっしゃると思います。」
ドルジェ伯爵令嬢達は、アニースに敵意を示さない。
むしろ好意的な令嬢達。
「では、乗らせてもらおうかな…………サーシャ様、シエラ様……他の方達もまたお会い出来るだろうか?また話が出来たらしたい。レングストンの友人はまだ私には少なく、もっとレングストンの事を教えて欲しい。」
「勿論です。私もボルゾイの事を知りたいので教えて下さい。」
「私も、ボルゾイの方の印象がアニース様で変わりましたし、アニース様がお嫌でなければ是非、場をまた設け、お話したいです。」
「サーシャ様、シエラ様………ありがとう、私からも是非。私は王宮内に滞在しているが、連絡方法が………。」
「それでしたら、手紙のやり取りをされたら良いかと。侍女に伝えれば届きますよ、ドルジェ伯爵サーシャ嬢、シエラ嬢宛に、と言えば。」
セシルの提案で、アニースも納得する。
「なるほど………では、そうさせてもらってもよいか?」
「はい。アニース様のお勉強の邪魔な時間でなければ、登城させて頂きます。」
「楽しみにしている。王宮の庭園でお茶会でも開かせてもらおう。ボルゾイの珈琲を振る舞わせてもらうよ。」
「珈琲?」
「飲み物だ。木の実の種を燻し焙煎し、粉にした物に注いで抽出して飲むんだ。ほろ苦さが癖になるぞ。甘い菓子と一緒に含むとまた美味しい。」
「是非頂きたいです。」
「気にいるといいが…………では、私は馬に乗せて貰うことにするよ。失礼する。」
アニースはサーシャ達と別れ、セシルと厩舎の方に向かった。
残されたサーシャ達はアニースを見送りながら呟く。
「ボルゾイのあの姉妹とは大分印象が違うわね。カッコイイし………。」
「トーマス殿下の妃、ラメイラ様もカッコイイ印象だったけど、アニース様は更に上ね。」
「ねぇ、どちらの皇子と結婚されるかしら?」
「タイタス殿下じゃない?だってコリン殿下は歳が離れてらっしゃるし。」
「でも、見て。セシル様と並んで歩く姿もお似合いよ?」
「どの方と結ばれるのかしら。」
令嬢達の妄想は尽きないまま、厩舎から馬に乗ったアニースが、馬を歩かせて相性を見ている。
近くには、タイタスが見守っていた。
「アニース姫、お上手だ。」
「ありがとう。馬は幼い頃から乗り慣れているからかな。」
「いや、ラメイラも馬に乗るが、彼女は雑に乗り回すから、アニース姫もそうだと見守らなければ、と思ってたんで、要らぬ心配だったようです。」
「タイタス殿下、あなたの馬の扱い方もお上手だと思う。」
会話は令嬢達には聞こえなかったが、アニースとタイタスのその雰囲気にも熱い視線を送っていた。
「麗しいわ。あのお二人。」
「美男美女!」
どうやら、他人の恋の行方を知りたがる腐女子のような令嬢達らしい。
「目の保養よね~。」
「皇太子殿下と妃殿下も麗しいけど、アニース様とタイタス殿下もお似合い………。」
「私達は、アニース様の恋路を応援しましょ!」
「いいわね、妄想しがいがあるわ!」
何やら、アニースが知らない所で、密かな結託が結ばれたようだった。
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