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賠償請求
しおりを挟むヘルンが帰国した事は、レングストン王宮内で平和が訪れた。
客間の調度品に関してはセシルからウィンストン公爵、ヘルンが使った客間を清掃した侍女の間での話に一旦留めるに至った。
セシルがヘルン達の使った部屋に行くと、皇帝とリュカリオンからの通達の手紙は開封もされず破られ床に捨てられていた。
「開封もせず……か……どうします?父上。」
「そのまま、陛下にお見せするだけだ。調度品は勿論その対価は請求する。余りにも王女としての品位も教養も無い娘には、サマーン王に伝えなければな。」
セシルがウィンストン公爵と、散らかされた客間にウンザリする程の溜息を漏らしながら会話をする。
王城は宿屋ではないのだ。
「しかし、サマーン王にヘルン姫を咎める事が出来るのでしょうか?」
「出来なかったら、賠償責任として国交をレングストン有利にするだけだ。陛下なら……いや、皇太子殿下ならご納得されるだろう。」
「…………リュカ殿下はかなりお怒りですからね。」
「しかし、セシル………。」
「はい。」
「良くやった。」
「ヘルン姫を帰した事ですか?」
「そうだ。あの姫はレングストンの未来に必要ないからな。」
レングストン皇国の宰相であるウィンストン公爵は、王族に害を及ぼす者は許さない。
愚かな王族でないレングストン皇国の皇帝や皇子達に忠義を示しているウィンストン公爵を見ている2人の息子もまた同様なのだ。
戦争も内乱も無く、国として成り立つレングストンを長く支えてきた自負により出来た、王族からの信頼されているからこそだった。
「リュカ殿下からボルゾイを探れ、と言われていますが、父上はご存知ですか?」
「勿論だ。セシルが行く迄もない、指示は出してある。」
「必要であれば私も探りに行きますが?」
「皇太子殿下はお忙しい方だ………補佐はお前でなければ務まらない。腕の良い者を行かせる。お前は指示をレングストンから出しなさい。」
「父上がそれで良いなら。」
ウィンストン公爵は溜息混じりで、セシルにぼやく。
「それとな………少し気になる事が連絡あったのでな……。」
「何です?」
「第一王女だった、ジャミーラ姫が未亡人になり、出戻ったらしい。」
「あの、ヘルン姫に負けず劣らずの我儘な第一王女が!?」
「かなり、歳の離れた夫だったらしい。財産だけ受け取り、今は王宮内に居るそうだ。」
「ヘルン姫が帰ったらまたボルゾイでひと悶着ありそうですね。」
「あるだろうな…………査定は終わったか?」
何が失くなっているかを調べさせていたウィンストン公爵は、リスト化したメモを、侍女達から手渡される。
「はい。こちらになります、宰相様。」
「………うむ…………また高級なものばかり……では、コレは陛下と皇太子殿下に意見を頂き、請求させてもらおうとしようか。セシルも仕事に戻りなさい。」
「はい。そうします。」
「お前達も掃除が残っていよう、ここは暫く使用禁止にするが、片付けを頼む。」
「畏まりました。」
ウィンストン公爵とセシルは客間に王宮で働く侍女達を残し、それぞれの執務室に戻った。
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