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温度差
しおりを挟む大広間の玉座に居るリュカリオンは、手袋を嵌めてから、ヘルンの手を取り、中央に進むリュカリオン。
義務とはいえ、ヘルンの地肌に触れたくないようだが、レングストンの風習を知らないヘルンには手袋をするリュカリオンの意図は分からない。
嬉しそうにヘルンはリュカリオンの手に触れる。
温もり等感じない手袋の手だが嬉しそうにしている気の毒な王女、と周辺からは見られていた。
「ワルツですが、王女は踊れるのですか?」
「勿論です。」
中央をリュカリオンの為に空けた貴族やレングストンの風習を知る来賓達。
管弦楽のスタッフが曲を何にするかを聞きに来ると、リュカリオンは指示を出す。
「……………え?……わ、分かりました。」
🎼.•*¨*•.¸¸🎶.•*¨*•.¸¸🎶.•*¨*•.¸¸🎶
曲が鳴り、リュカリオンのリードでステップが始まると、ヘルンも踊りだす。
曲が始まり、ナターシャはリュカリオンを見ていたのだが、アラムがナターシャに声を掛けた。
「皇太子妃殿下、この後私と1曲どうですか?」
「…………やめておきますわ。この後、殿下と踊らなければならなくなりそうなので。」
ヘルンの踊りは、リュカリオンに付いていけず、時折失笑が湧き上がる。
リュカリオンが選んだ曲は、ステップの難易度が高いワルツ。
だが基礎さえ出来れば、一度流れに乗りさえすれば最後迄踊れるのに、ヘルンは最初から躓き踊れていない。
なんとか1曲終わると、リュカリオンはヘルンをアラムの方に帰す。
「で、殿下………もう1曲……。」
肩で息をするヘルンに対し、リュカリオンは平然としている。
それを見たリュカリオンは手袋を外し、近くに居た侍女から飲み物を取った後、言い放った言葉が冷たかった。
「お疲れでしょう。こちらを飲んで休憩なさって下さい。それではダンスは踊れない………君、この手袋を必ず捨てておいてくれないか。」
侍女にヘルンと繋がった手袋を捨てさせるリュカリオン。
『お前は眼中にない』とでも言うかの様に言い捨てたのだ。
リュカリオンは離れて行くと、ナターシャを誘う。
「ナターシャ、お待たせ。口直しいいかな?」
「…………意地悪な殿下………そうですわね、アレでは……わたくしで口直しになるなら。」
クスクスと笑いながら、ナターシャは素手のリュカリオンの手を取ると、ヘルンと踊ったワルツより難易度を上げたステップのワルツを流させる。
リュカリオンと踊り慣れているナターシャには簡単なワルツ。
息の会った滑らかな動きを見せつける。
それを見なければならないアラムとヘルンは悔しそうに話をする。
「ヘルン、皇太子は諦めるんだ。」
「嫌よ!!絶対に皇太子妃になってやるんだから!!」
「ヘルン様、無理ですよ。他に第三皇子が居るんですから……。」
宰相もヘルンを宥めるが、一度決めたら諦めないのが心情らしいヘルンは闘志を燃やしたのだった。
「素敵なお2人だわ。」
「本当に………皇太子殿下は数多くの令嬢が思いを寄せていらっしゃったのに、ナターシャ様一筋でらっしゃって。」
「ご存知かしら?ナターシャ様が皇太子妃殿下になる前の……。」
「数多くの令嬢がナターシャ様に詰め寄って、事件になった事?」
「そうそう、平民落ちになった令嬢が沢山みえた、て。」
「だから、今日若い令嬢が少ないんですのね。」
「お2人の仲睦まじいお姿は、見たくない方々ばかりで………タイタス殿下やコリン殿下もいらっしゃるのに、残念な事ですわね。」
淑女達の声がヘルンにも聞こえても、闘志が衰える事等なかった。
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