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ウィンストン公爵の手腕
しおりを挟む「何であんたがレングストンに居るのよ!!」
大聖堂で罵声が飛び、ヘルンに注目される。
「相変わらず、場を弁えない姿と言動だなヘルン。」
「お姉様ぐらい付けなさいよ!」
「妹として見ないあなた達に敬意を表す気はないな。」
「何ですって!」
「よさないかヘルン!ここはレングストンだと言ってるだろう!こいつの挑発に乗るな!お前も王宮から逃げてどれだけ探させたと思ってる!」
「…………逃げて当たり前だ。兵に命令した事を話していいなら?」
険悪なムードのボルゾイの来賓とボルゾイ出身者らしき女性との言い争いだと他の来賓者は思う筈。
だが、この状況を止めに入る者が居た。
「そこ迄になさいませ。」
「何ですって!誰が誰に対してモノを言うのかしら?」
「ここはレングストン、他国の王女様が代表していらっしゃるのに、騒ぎ立てるこの行為は、ご自分の国の恥だと思われないのであれば、ボルゾイへの印象も地に落ちますぞ?第二王女ヘルン様。」
「…………アレが王女?」
「ボルゾイの女は皆ああなのか?」
ウィンストン公爵が人混みを分けアニース達の前にやって来る。
すると、急に2人の腕を引っ張り、囲む様に連れ去ったセシルとカイル。
ウィンストン公爵はそれを確認すると、衛兵達に速やかに来賓達を誘導するように指示をする。
「皆様方、ココはレングストン皇国、ウィンストン公爵のわたくしが対処致します。今宵王城の夜会でココの事は話の笑いのネタになるよう、穏便に致しますので、お気になさらずに……。」
「そ、そうですな、本日はおめでたい日、楽しく過ごそうじゃありませんか、ねぇ皆様。」
ウィンストン公爵の一声と、ウィンストン公爵を知る貴族であろう1人の男が場の雰囲気を変えた。
「さて………アラム殿、ヘルン姫。本日の参列はアラム殿と宰相殿だけ、と伺っておりましたが………何故ヘルン姫もおみえなのでしょうか?」
「ウィンストン公爵……でしたね。この度、我が父とレングストン皇帝との約束を遂行しようと思いましてね。妹を連れて来たのですよ。勿論この約束は正式な物なので、ボルゾイから逃げ出し
どこぞの女と、という事は無いようにお願いしたいですね。」
「………それについては、わたくしが判断するものでもございません。皇帝陛下、皇妃、皇太子殿下夫妻、第二皇子夫妻の意見も、未婚の皇子殿下お2人の意思も伺わねばなりませんので。」
「私が、皇太子妃になり変われば、意見等必要はないわ!」
いつまでも高飛車な態度のヘルン。
「ヘルン!そういう話は、お前が妃になってからだ!」
「………それはそれは……なれるとよいですな…………なれないと思いますが。」
「…………失礼ね!」
ウィンストン公爵は珍しく感情を現す。
「こちらで話す内容でもありませんし、本日は夜会にご参加のご予定とも伺っております。王城の客間にお部屋をご用意しておりますので後程…………失礼致します。」
ウィンストン公爵はアラム達に会釈し、祭壇付近に待機していた、妻のエマと共に大聖堂を出発し、邸に戻る。
「ボルゾイ用の客間を一部屋増やすように、王城へ知らせよ。………本当に迷惑な……。」
「どうしたの?あなた。」
「…………ボルゾイの招かれざる客が、皇太子妃を狙っている。ナターシャを殿下が手放すとは思えんが、あの姫は何をする分からん。」
「………まぁ……大丈夫なの?」
「私はナターシャを守るだけだ。エマ、お前もナターシャの愚痴等聞いてやってくれ。」
「分かったわ、勿論よ。」
ウィンストン公爵は馬車の中で、愛妻のエマの手を握る。
(…………厄介な相手だ……。)
皇帝は、ボルゾイの国王からの話で、アニースを皇子の妃に、と求めていた。
しかし、約3年前我が身を守る為に、アニースは王城から逃げ出し、見つけて匿うつもりではあったのだが、タイミングが悪かった。
ボルゾイから、トーマスの結婚を祝う、と第一王子アラムが来たのは構わなかったのだが、王女を連れて来たのだ。
このまま居座るのでは、と不安に駆られたウィンストン公爵だった。
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