放浪の花嫁【完結】

Lynx🐈‍⬛

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アニース、皇子達と対面

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 アニースがレングストンに入って数日、侍女もボルゾイの知識がある者がアニースの身の回りを世話をする様になった。
 服もモルゾイで貴族が着る民族衣装を取り揃えてくれた。

「懐かしい……モルゾイの服だ。」
「アニース様はドレスよりそちらの方がお似合いですね。」
「しっくりするし、着慣れているからだろう。旅をしている時はコレは目立つしな、遊牧民風の服で旅をしていた。」
「今から、皇子方にお会いするんですから、アニース様がタイタス殿下やコリン殿下の目に止まるといいですね。」

 侍女が、寵愛を獲てもらえるように、と言った事が、アニースの表情を変える。

「私は寵愛を獲ようと思っていない。一夫一妻の国だ。例え王族は愛人を持てようが、既に妃が居る皇太子と、婚約者がいる第二皇子の寵も貰おうとも思ってもいない。ボルゾイに帰れないのなら、こちらで教育を受け、皇子達と縁が無ければ、臣下の方の伴侶になってもいいと思っている。」
「し、失礼致しました、アニース様。」
「あなた達も覚えておいて欲しい。私は争いは嫌いだ。皇太子妃や、ラメイラ、アリシアとは親しくなりたいと思っている。彼女達が傷付く事も傷付ける言葉を私の耳に届いたら、私の侍女を降りてもらうから。………皇帝陛下の配慮であなた達がここに居ると思うが、そんな人に私の周りをウロウロして欲しくないのだ。」

 冷遇されていたからこそ、侍女が付くのは有難かったが、モルゾイの王城内を思い出すような事はしたくなかったアニース。
 予定の時間になり、迎えに来たセシルと王城内を歩くと、レングストンとは違う出で立ちの衣装のアニースは目立っていた。

「そんなに物珍しいのだろうか……モルゾイの服は。」
「いえ、そうではありませんが、久々なので戸惑っているのでしょう。約3年前のレングストン建国500年の式典に、モルゾイからの来賓方が来られて以降、モルゾイの王族女性の来賓は断っていましたから。」
「………断っていた?」
「はい、アニース様の義姉上、ジャミーラ様、ヘルン様の行いにより女性はお断りを。」
「何かしたのか?ジャミーラとヘルンは。」
「……………それはここでは………ちょっと……。」

 何をやらかしたのか気になったアニースだが、教えてくれないという訳でもなさそうなので頷いた。

「後でも構わない。場所を変えていつか教えて欲しい。とんでもない失礼な事をしたんだろうな、とだけは思う事にする。」
「『いつか』でなくても直ぐに分かりますよ。殿下方にお会いになれば。」

 応接室らしき部屋にセシルに連れて来られたアニース。

「失礼致します。アニース様お連れ致しました。」

 皇太子には会っている。
 言葉は交していないが、噂通り美しい皇子だった。
 ジャミーラ、ヘルンが妃の座を狙っていたのも知っている。

「ボルゾイ国第三王女、アニースでございます。」

 室内に入ると、皇子達を見る事なく、頭を下げるアニース。
 見目が目立つから、謙虚で思慮深く居たいアニース。
 ボルゾイでもそうだった。
 争いが嫌だから、目立つ事はしなかったが、それが兄弟姉妹からは目立っていた。
 だが、レングストンにはアニースを虐める者は居ない。
 もまだない。

「アニース姫、顔をお上げ下さい。」

 以前、耳にしたリュカリオンの声で、礼を解くアニース。
 アニースの目の前に、美男子の皇子4人。

「先日、言葉を交わさず申し訳ない。アニース姫。私が皇太子リュカリオンです。あなたが弟のどちらかの妃になれるかどうか分かりませんが、ボルゾイでの事を糧に努力をされるなら、ご協力致します。」
「第二皇子、トーマスです。婚約者のラメイラからは話は伺っています。親しくして頂いているようで、今後も迷惑を掛けるかもしれないが、宜しく。」
「第三皇子タイタスです。長い間、旅をしてらっしゃったとか……機会があれば旅の話、聞かせて下さい。私は歴史や地理が好きなので。」
「第四皇子コリンです。アリシアから聞いたけど、本当に綺麗な人だね~。」
「こちらこそ、宜しくお願い致します。初めにお伝え致しますが、私は争いを好みません。なので、既に既婚者の皇太子、ラメイラと婚約されている第二皇子からの寵を頂く事はありません。勿論、第三皇子、第四皇子との縁が無ければ、妃を望む事はありません。………ですが、ボルゾイに帰す事は断固拒否させて下さい。……………私はっ!!」

 懇願するように皇子達に訴えたアニース。
 リュカリオンは、手の平をアニースに掲げ、言葉を止めた。

「帰りたくない理由は、ウィンストン公爵である宰相からは聞いている。あなたを無理にモルゾイに返そうとは思っていない。あの義姉達が嫌なのでしょう?あなたがモルゾイで冷遇されていたのも調べはついています。」
「まぁ、あの義姉ならなぁ~………本当にしつこい姫達だったよ。」

 タイタスが呟く。

「あの、透けた裸同然の衣装で、父上に挨拶した人達だよね?」
「モルゾイでは当たり前なのかもしれないが、流石に各国が来賓として来る式典に、アレはな……。」

 コリンとトーマスも続けた。

「その姿でリュカ兄上の妃に、て父上に願い出た時は笑い堪えるの必死だった。」
「ナターシャが式典に参加していなかったから早々に退出して正解だ、あれは。」

 タイタスとリュカリオンも思い出した様に話していく。
 ようは、盛装をするにも他国で装う姿ではない、モルゾイで男を誘う姿で夜会に出たという事…………。
 アニースの今の姿は透けるような服ではなく、露出は肩、腕、腰回りだけで、頭からヴェールを掛けている姿。
 アニースは絶句するしかなかった。
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