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プロローグ
しおりを挟むボルゾイの王都ボルテスの宮殿で、王女達が噂で聞いた話で持ち切りだった。
「絶対に私が行くわ!」
「いいえ!私よ!」
「何を言ってるの!一番美しい私よ!」
王女の数は5人、第一王女ジャミーラ、第二王女ヘルン、第四、第五王女が、見苦しい争いをしていた。
「よさないか、お前達。………アニースは何処に居る?」
父親であるサマーン王が第三王女を探す。
「知りませんわ。」
「私も~。」
「同じく。」
「どっかにまた家出したんじゃないかしら?」
「家出じゃなくて、脱出?」
「きゃはははは………!」
王女達の意地汚い言葉が煩かった。
隣国レングストンの建国500年の祝賀会があり、王の名代で誰が行くか、で揉めているのだ。
レングストンには18歳になったばかりの皇太子リュカリオン、16歳のトーマス、14歳のタイタス、11歳のコリンが居る。
まだ誰もが未婚で婚約者や許婚の話もなく、美男子の皇子の目に止まりあわよくば、妃にと狙う王女達。
第一王子と、宰相も行く事になってはいるものの、王女達が皇子を見たいと言う我儘なのだが、全員は連れては行けず2人なら、という話を提案したら、この言い争いだったのだ。
(アニースに行かせたいというのに……。)
サマーンは第三王女アニースを殊の外可愛がっているが、その妬みから他の兄姉弟妹からは酷い扱いをされていた。
それもその筈で、アニースの母は踊り子という異例の母。
他の兄弟達は、貴族や富豪の娘を持つ母であった為、アニースに対して冷たい仕打ちをしていたのだった。
その扱いが不憫で、国交のあるレングストンへ逃がす目的で嫁がせようと考えていたのである。
王女達が、誰が行く行かないかで揉めている頃、アニースは普段から宮殿内でも、冷遇の立場であるからか、召使いからの扱いも酷いものだった。
だからだろう、殺気立つ召使いが周辺に居ると逃げる術を覚えた。
「この気配………いつもと違う………。」
茂みに隠れ、様子を伺うアニース。
「居たか?」
「こっちには居ない。」
「早く見つけないとジャミーラ様に罰を受けるぞ。」
「見つけて、幽閉………もしくは事故に見せかけて……だな。」
「ああ…………恐ろしい兄弟姉妹だぜ。あんなに美しいアニース様を……。」
「しっ!誰が聞いてるか分かんないんだぜ?」
「すまん。」
(……………やはり、ジャミーラが……ジャミーラだけじゃない……あいつら…………もうここには居られない、お父様…………すまない。アニースは国を捨てます。)
そして、アニースは警護を掻い潜り、馬を宮殿から盗み出し闇夜に消えたのである。
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