24 / 38
壊れた桜
しおりを挟む龍崎家の別荘は外壁の破損と、龍虎会の組員の重軽傷者、死者も出たが、警察の介入により籠城は終わりを迎えた。マスコミも多く駆け付け、SNSで写真も拡散されていた事により、高嶺家への非難も多数寄せられてしまった。勿論、櫻子の父の仕事にも影響を及ぼし、外務省と極道との関与等も問題に上げられてしまった。
SNSの拡散は直ぐに消されたが、暴力団同士の抗争に、外交官だった男と極道の娘のロマンスから産まれた娘が、抗争の火種になった事に、世間からの興味があらぬ方向に向いた。
外交官の男、極道の女の娘が誘拐され、26年振りに両親との再会時での襲撃がドラマにしたい、とまで囁かれ、高嶺家にはマスコミや野次馬も押し寄せる程になっていた。
「…………父さんが、雪と別れろ、て……」
「………うん、そう言われても仕方ないわね……だから、私は籍も入れてないんだもの………桜太の事もあったから心配したけど、蒼太は勘当はされなくて良かったわ」
「俺は別れないぞ?………櫻とやっと会えたんだ……前向きに捉えよう……な?」
「でも、責任取らされるんじゃない?仕事の方も…………私が居たら邪魔になるわ……私が龍崎家に戻れば、龍虎会が守ってくれるけど、貴方は違うでしょ?」
「俺達は何も悪い事はしていない」
「…………そうだけど……」
「お父さん、お母さん………本当にごめんなさい」
「………菫……もう謝るな…」
「でも………」
そんなやり取りが高嶺家で話される中、櫻子は桜也にマンションに閉じ込められていた。外に出ては世間に晒されてしまうのを危惧をしている桜也の考えだ。櫻子もそれが分かるから、マンションに篭っている。スマホもPCもテレビも見ず、ただただ桜也に求められていた。
「………はぁ………はぁ……はぁ……」
桜也はベッドに横たわる櫻子を見下ろし、腕で口元と汗ばむ額を拭う。寝室のカーテンは常に閉め光をシャットアウトし、ベッド脇にあるダウンライトだけの灯りだけが櫻子の裸体を照らす。
「あつ………櫻、そろそろピル飲まなきゃな……」
「…………う………あ……」
力無く、ぐったりし身体中、所有権を主張するキスマークが所狭しと着いている。桜也はピルをパウチから出すと水と共に口に含み、櫻子に飲ませる。
「少し眠れ……何も今は考えるな」
櫻子は考えれば考える程自傷行為を、別荘から帰った夜から始めた。
『…………櫻、何してる』
ベッドからの気配が無くなり、桜也は櫻子を追うと、キッチンから包丁を取り出すのを見つけ桜也は止めた。
『死なせて!!…………私が居るからこんな事になったの!!』
包丁を取り上げ、桜也に切り付けて、正気に戻った櫻子だが、桜也が見ていないと錠剤を多量摂取したり、と数日続けている。部下を配置する事もあったが、遠慮が出てしまい櫻子に怪我をさせてしまったのだ。
それにより、疲れて眠らせるという事にした桜也。櫻子が起きている間は抱き潰し、櫻子が寝ている間は横で眠るを桜也も繰り返している。
「これじゃ、既に人形じゃねぇか………」
.•*¨*•.¸¸♬.•*¨*•.¸¸♬
「…………はい………あぁ、先日はガサ入れして頂きありがとうございます」
獅子王組の事務所をガサ入れし、逮捕者も出た獅子王組。壊滅にはならなかったが、安心は出来なかった桜也。
『マスコミが、高嶺櫻子さんの事を躍起になって探してます。高嶺家からも高嶺家の周辺住民からも苦情が殺到してましてね………お嬢さんのご様子は如何ですか?』
「…………自傷行為が止みませんよ………獅子王大和が捕まらない限り無理かもしれませんね………」
『警察の方で保護する事も検討してますが………』
「保護なら高嶺家の家族にして下さい………マスコミや映画やドラマ化に、という話も上がってるとか、そんな話真っ平ごめんだ……そんな事は望んでないんです、高嶺家は」
『………しかし、一番の被害者は櫻子さん……』
「櫻子は私の方で保護します」
桜也は不安だった。消えて無くなりそうな櫻子が。側に居なかったら、桜也も壊れそうだった。
『何としても探しますよ、獅子王大和を………この件に関しては龍虎会は被害者ですからな………では、もし気が変わり保護を申し出るなら、準備しますので』
プッ。
「気は変わらない……」
パリンッ………。
「櫻!!」
眠っていた櫻子が居る寝室から何かが割れる。割れる物は全て撤去はしていなかった桜也。寝室の窓を割られたのかもしれない、と思い駆け付ける。
「櫻!!何して………止めろ!!」
「…………離して……下さ…………んんんんっ!!」
手には鏡を椅子で割ったのか鏡の欠片を握り締めていた櫻子。手首を掴み、櫻子にキスで、気を紛らわせ鏡の欠片を離させる。
「櫻…………頼む………俺を置いて逝くな……」
「……………ゔ………ゔっ………」
「…………櫻…………絶対に守る……信じろ……」
床に落ちる鏡の欠片。手に滲み出る血を桜也は舐めて、床に落ちるのを阻止する。
「…………駄目………鏡の欠片………」
「………それが如何した………櫻の血一滴でも無駄じゃない………必要な物だ………欠片が付いていようと………お前を守れるなら俺が怪我した所で大した事はない………」
「…………お………う……や………」
涙を流す櫻子にも、今自分の自傷行為を止められなくなる程、解決策が見つからないのだ。激動の日を繰り返し、その波に乗れず目まぐるしく動く現状に追い付かず、助けを求めていた。
「………お願い…………苦しい……助けて……」
「……あぁ、助ける」
その助けを桜也が見えない鎖で櫻子を絡め取るのは当然の事だった。
0
お気に入りに追加
77
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
俺様外科医の溺愛、俺の独占欲に火がついた、お前は俺が守る
ラヴ KAZU
恋愛
ある日、まゆは父親からお見合いを進められる。
義兄を慕ってきたまゆはお見合いを阻止すべく、車に引かれそうになったところを助けてくれた、祐志に恋人の振りを頼む。
そこではじめてを経験する。
まゆは三十六年間、男性経験がなかった。
実は祐志は父親から許嫁の存在を伝えられていた。
深海まゆ、一夜を共にした女性だった。
それからまゆの身が危険にさらされる。
「まゆ、お前は俺が守る」
偽りの恋人のはずが、まゆは祐志に惹かれていく。
祐志はまゆを守り切れるのか。
そして、まゆの目の前に現れた工藤飛鳥。
借金の取り立てをする工藤組若頭。
「俺の女になれ」
工藤の言葉に首を縦に振るも、過去のトラウマから身体を重ねることが出来ない。
そんなまゆに一目惚れをした工藤飛鳥。
そして、まゆも徐々に工藤の優しさに惹かれ始める。
果たして、この恋のトライアングルはどうなるのか。
マッサージ
えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。
背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。
僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
Home, Sweet Home
茜色
恋愛
OL生活7年目の庄野鞠子(しょうのまりこ)は、5つ年上の上司、藤堂達矢(とうどうたつや)に密かにあこがれている。あるアクシデントのせいで自宅マンションに戻れなくなった藤堂のために、鞠子は自分が暮らす一軒家に藤堂を泊まらせ、そのまま期間限定で同居することを提案する。
亡き祖母から受け継いだ古い家での共同生活は、かつて封印したはずの恋心を密かに蘇らせることになり・・・。
☆ 全19話です。オフィスラブと謳っていますが、オフィスのシーンは少なめです 。「ムーンライトノベルズ」様に投稿済のものを一部改稿しております。
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる