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引っ越ししていた桜
しおりを挟む朝というより昼前に起きた櫻子。
「…………腰……痛い……」
やっとの事で起きて、服を着た櫻子は寝室を出ると、部下にセックスの後始末をさせている高嶺が、坂本と話していたのを聞こえた。
「頭、ヤリ過ぎですよ、お嬢ですよ!?」
「…………いいじゃねぇか、親父許可だ」
「流石にヤリ過ぎ…………凄かったですけど?お嬢の声で、こいつら抜いてんですから………」
「覗いてなきゃいい…………コレ、獅子王に………いや東堂大和宛に、獅子王組事務所に送っといてくれ…………で、こっちは親父………可愛いだろ、この寝顔」
坂本の顔は呆れ気味だ。
「…………証拠写真送れ、て親父に言われたんじゃ………可愛いっすけど」
「…………親父にゃ、寝顔で充分喜ぶさ……雪お嬢の娘だ……セックス中の写真なんか見せてみろ………あの世に逝っちまう……雪お嬢の所在分かんねぇとな………」
「頭が、5歳ん時でしたっけ……雪お嬢が家出したの………」
「………ああ……」
「雪お嬢が、櫻子お嬢に名前付けたんすかね?」
「…………何が言いたい?」
「だって、同じさくらじゃないっすか」
出るに出にくくなった櫻子はそのままドア越しで聞いていた。その気配に気が付いたのか、高嶺が寝室の方を見る。坂本も目線を追った。
「意図は知らねぇ……だが、雪お嬢は俺の親父に惚れてたからな……親父もさくらだったし、字が違うから雪お嬢に聞かねぇとな………」
唇に人差し指を立て、坂本達に物音を立てるな、と合図すると、寝室に歩いていくと寝室のドアを開けた高嶺。
「おはようございます、お嬢」
「!!………お、おはようございます……」
「盗み聞きはいけませんよ」
「あ、あの…………本当に送るんですか、あの
写真」
「…………さぁ、てね」
「答えて下さい!」
「坂本………さっき渡したのを」
「へ、へぃ………」
高嶺に渡した坂本。封筒に入った写真を開封すると、祖父宛の方には櫻子の寝顔と、大和宛には寝顔とセックス後の残骸。ティッシュや、淫具、床の染み等、誰と誰がセックスしたかは一見分からないが、同封した櫻子の寝顔の写真だけ。
「あ………あんなに撮ったのに……」
「見せる訳ないでしょう、お嬢のエロい姿を………いくら獅子王とセックスしていたからって、俺からお嬢の寝顔撮った写真を送られたら、嫌でも想像しますよね、馬鹿じゃなきゃ」
「あの写真は如何するんですか!?」
「…………さて、出掛けてきますから、大人しくしといて下さいね」
「誤魔化さないで下さい!」
「処分しましたよ」
「嘘よ……」
「………………行ってきます」
櫻子の疑り深い言葉を無視し、高嶺は出掛けてしまった。既にリビングの残骸の掃除は終わっていて、部下達に謝る櫻子。
「ごめんなさい………片付けさせて……」
「い、いえ………お嬢のですから……」
「た、高嶺さんの命令だからじゃないんだ……」
「あ、いえ…………まぁ……頭はお嬢が大事ですから……」
「え?大事な訳ないじゃないですか……会ってまだ2週間ぐらいなのに」
「龍虎会がお嬢の存在を知ったのは、3ヶ月ぐらい前ですよ………保育園をいつ辞めさせても問題ない様に、下準備はしてましたから……ただ、獅子王組に知られない様に事を運んだので」
「……………そうですか……」
確かに、結婚式は保育園の夏休み中にし、退職申請するにしても冬休み前には伝えなければならないが、それをもうしているというのか。だが、櫻子の意見を聞かないのに腹が立っていった。
その日の夕方、櫻子のアパートを引き払ってきた、と言い、貴重品以外全て処分されてしまう。
「何で!アパート引き払ってきちゃうんですか!!思い出の物あったのに……子供達からのプレゼントとか手紙とか、貯めてあった………」
「訳分からない物とか、保育園関係の物は、親父の家に置いてきましたよ。アパートを引き払ってきましたしね」
「…………勝手にしないで下さい!」
「言ったでしょう?一般社会人として一旦リセットすると」
「…………私はいつになったら外に出れますか?」
「出せません」
「……………」
バタン。
櫻子は腹が立ち、寝室に入ってしまう。勝手に櫻子の物を処分するやら、退職手続き迄するやら、そこ迄自分の生活が変わったり、赤の他人が簡単に関与されるのが本当に嫌だった。
カチャ。
「たまには外食行きますか?」
「…………外に出られる?」
「そのかわり、ちょっと護衛増やしますが」
「ちょっと?」
「えぇ、ちょっと」
櫻子は軽くメイクをし直し、リビングに出ると、高嶺からダメ出しされる。
「ピンクとオフホワイトのワンピースあったでしょう、それに着替えて下さい」
「あれですか?…………分かりました」
何故か分からないが、着替え姿見で自分を確認する。
「桜………雪………」
巻スカートの様な重ねフレアが見事にピンクと白のグラデーションになっているワンピース。清楚な雰囲気のワンピースは櫻子がひと目で気に入った物だ。
「髪もアップにしようかな………ま、いっかアップじゃなくて、編み込みのアレンジしよっと」
髪もセットし直し、腹立だしさもすっかり忘れてしまう櫻子。外出がそれを忘れさせてくれた。
リビングに戻ると、高嶺も満足そうな顔をする。
「…………まぁ、いいでしょう……やはりお似合いです」
「このワンピース、お母さんをイメージしてました?桜と雪だから」
「まぁ、そうですね………貴女のお母さんは名前の通りな人でしたから………名前も雪月花が由来だそうですよ……」
「白い花でしたよね」
「えぇ……では行きますか」
高嶺が雪の話をする時は、まるで愛しい人を思う顔の様だった。
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