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罠
しおりを挟むナターシャとリュカの1週間の休みは終わった。
皇太子邸に帰って来たナターシャ達は、王城の慌ただしさに驚く。
「如何したんだ?」
「何かあったのでしょうか?わたくし達の帰宅時間は伝えてあったのに、この慌ただしさ……。」
ナターシャは翌日には熱が下がり、離宮でリュカと熱が出た日以来、昼はのんびりと夜は激しい日を過ごし、政や公務の事を考える事なく休め、この日から職場復帰をする事になっていた。
「こ、皇太子殿下!妃殿下!申し訳ありません!!」
「謝罪はいい、何があったか説明を!」
「それが、タイタス殿下が留学中の他国の公女殿下に怪我を負わした、と。」
「他国の公女、てラメイラ様!」
「………今、タイタスは?」
「タイタス殿下は、陛下から謹慎を命じられ皇子宮に、公女殿下は現在皇女宮で治療中、もう一人怪我をされた令嬢は別室で事情と治療を………。」
「もう一人居るのか?」
「ま、まさかロレイラ様では……。」
「は、はい。」
「何だって!ロレイラ!?」
怪我をした人物と負わした人物の名前に関係する人が居るなら、もう一人は自ずと見えてしまう。
ナターシャは、皇女宮の前で起きた三角関係を見ていたいから。
「今、ロレイラ様しか事情を聞いていないのでは?」
「それは分かりませんが、ロレイラ嬢は前皇帝の弟君のお孫にあたりますので、宰相のウィンストン公爵様が聞かれているとか。」
「…………。」
ナターシャとリュカは顔を見合わせ、リュカは指示を出した。
「トーマスとセシル、カイルを私の執務室に呼んでくれ。確認する。」
「はっ!」
「ナターシャはラメイラを見に行ってくれるかい?」
「勿論ですわ。」
✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧
ナターシャは皇女宮に、ラメイラの見舞いに来た。
事情を聞いていたのであろう、兵士も居る。
「妃殿下、こちらには何故?」
「ラメイラ様がお怪我されたとか、友人ですし、お見舞いを。」
「どうぞ。」
「物々しいですわね、警備兵もいつもより多くないです?」
「ラメイラ様を守る為です。」
「どなたから?タイタス殿下が怪我を負わせたと聞いていて、タイタス殿下は謹慎されているのに、この人数は何なのです?今迄以上だわ。」
「そ、それは………。」
「まるでラメイラ様が監禁されているみたい………。」
「!!」
今迄の皇女宮でも皇子宮でも、入り口は1つしかない建物で、四隅と入り口以外衛兵は立っていなかったのに、皇女宮をくまなく囲うように衛兵が立っているのだ。
疑りつつも、ラメイラに会わない事には始まらず、皇女宮に入るナターシャだった。
「ラメイラ様、大丈夫ですか!?」
「ナ、ナターシャ~っ!!どうしよう!!タイタスが悪く言われてないか?」
「じゅ、順序立てて聞かせて下さいませ!」
話を聞けば聞くだけ、挑発したのはロレイラだと分かるナターシャ。
皇女宮を取り囲む衛兵は、ロレイラの父、レングストン公爵だという。
何とか、ナターシャの父ウィンストン公爵の宰相が、ラメイラに聞き取りをしたいと申し出ても、ラメイラは何も言わず存ぜぬでナターシャの帰りを待っていたら、レングストン公爵が、否を認めず私的に衛兵を送りつけた、というらしい。
「挑発されて、先に手を出したのは私で悪いんだ!でも、それでタイタスが謹慎、て何でなんだ!」
「今、それはリュカ殿下が確認しておりますから。」
昨日、ラメイラは乗馬をしている所に、ロレイラがやってきて、ラメイラを挑発したらしく、それに対して軽く突き飛ばしたところで、タイタスがその場に来て、それ迄泣いてもいなかったロレイラが泣いて収まらなかったとの事。
タイタスがラメイラを詰り、突き飛ばしてしまい、転んだ拍子でラメイラが足首を骨折したのだ。
ロレイラは身体の怪我は無いが、その代わり心が傷ついて、とても怖く、ラメイラが自分の事が気に食わないので、また何かされるのでは、と父のレングストンに泣きついて、あの皇女宮の衛兵なのだとの事。
骨折をして、動くに動けないラメイラを出さないようにするレングストン公爵。
まるで監禁。
「分かりましたわ、宰相の父やリュカ殿下にご報告しますが、宜しいですね?」
「あぁ……どうしよう……トリスタンに戻れ、て言われたら………。」
「ラメイラ様…………。」
ロレイラを突き飛ばした事実がある以上、レングストン公爵は、ラメイラを帰せ、と言うだろう。
恐らく、ロレイラにはラメイラが邪魔なのだと思ったナターシャ。
だが、ロレイラがタイタスを好きなのかは不明で、ロレイラの友人、レーチェの事もあるのでどの角度から見ていけば丸くおさまるのだろう………。
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