私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛

文字の大きさ
上 下
97 / 100

しおりを挟む

 ナターシャとリュカの1週間の休みは終わった。
 皇太子邸に帰って来たナターシャ達は、王城の慌ただしさに驚く。

「如何したんだ?」
「何かあったのでしょうか?わたくし達の帰宅時間は伝えてあったのに、この慌ただしさ……。」

 ナターシャは翌日には熱が下がり、離宮でリュカと熱が出た日以来、昼はのんびりと夜は激しい日を過ごし、政や公務の事を考える事なく休め、この日から職場復帰をする事になっていた。

「こ、皇太子殿下!妃殿下!申し訳ありません!!」
「謝罪はいい、何があったか説明を!」
「それが、タイタス殿下が留学中の他国の公女殿下に怪我を負わした、と。」
「他国の公女、てラメイラ様!」
「………今、タイタスは?」
「タイタス殿下は、陛下から謹慎を命じられ皇子宮に、公女殿下は現在皇女宮で治療中、もう一人怪我をされた令嬢は別室で事情と治療を………。」
「もう一人居るのか?」
「ま、まさかロレイラ様では……。」
「は、はい。」
「何だって!ロレイラ!?」

 怪我をした人物と負わした人物の名前に関係する人が居るなら、もう一人は自ずと見えてしまう。
 ナターシャは、皇女宮の前で起きた三角関係を見ていたいから。

「今、ロレイラ様しか事情を聞いていないのでは?」
「それは分かりませんが、ロレイラ嬢は前皇帝の弟君のお孫にあたりますので、宰相のウィンストン公爵様が聞かれているとか。」
「…………。」

 ナターシャとリュカは顔を見合わせ、リュカは指示を出した。

「トーマスとセシル、カイルを私の執務室に呼んでくれ。確認する。」
「はっ!」
「ナターシャはラメイラを見に行ってくれるかい?」
「勿論ですわ。」

✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧

 ナターシャは皇女宮に、ラメイラの見舞いに来た。
 事情を聞いていたのであろう、兵士も居る。

「妃殿下、こちらには何故?」
「ラメイラ様がお怪我されたとか、友人ですし、お見舞いを。」
「どうぞ。」
「物々しいですわね、警備兵もいつもより多くないです?」
「ラメイラ様を守る為です。」
「どなたから?タイタス殿下が怪我を負わせたと聞いていて、タイタス殿下は謹慎されているのに、この人数は何なのです?今迄以上だわ。」
「そ、それは………。」
「まるでラメイラ様が監禁されているみたい………。」
「!!」

 今迄の皇女宮でも皇子宮でも、入り口は1つしかない建物で、四隅と入り口以外衛兵は立っていなかったのに、皇女宮をくまなく囲うように衛兵が立っているのだ。
 疑りつつも、ラメイラに会わない事には始まらず、皇女宮に入るナターシャだった。

「ラメイラ様、大丈夫ですか!?」
「ナ、ナターシャ~っ!!どうしよう!!タイタスが悪く言われてないか?」
「じゅ、順序立てて聞かせて下さいませ!」

 話を聞けば聞くだけ、挑発したのはロレイラだと分かるナターシャ。
 皇女宮を取り囲む衛兵は、ロレイラの父、レングストン公爵だという。
 何とか、ナターシャの父ウィンストン公爵の宰相が、ラメイラに聞き取りをしたいと申し出ても、ラメイラは何も言わず存ぜぬでナターシャの帰りを待っていたら、レングストン公爵が、否を認めず私的に衛兵を送りつけた、というらしい。

「挑発されて、先に手を出したのは私で悪いんだ!でも、それでタイタスが謹慎、て何でなんだ!」
「今、それはリュカ殿下が確認しておりますから。」

 昨日、ラメイラは乗馬をしている所に、ロレイラがやってきて、ラメイラを挑発したらしく、それに対して軽く突き飛ばしたところで、タイタスがその場に来て、それ迄泣いてもいなかったロレイラが泣いて収まらなかったとの事。
 タイタスがラメイラを詰り、突き飛ばしてしまい、転んだ拍子でラメイラが足首を骨折したのだ。
 ロレイラは身体の怪我は無いが、その代わり心が傷ついて、とても怖く、ラメイラが自分の事が気に食わないので、また何かされるのでは、と父のレングストンに泣きついて、あの皇女宮の衛兵なのだとの事。
 骨折をして、動くに動けないラメイラを出さないようにするレングストン公爵。
 まるで監禁。

「分かりましたわ、宰相の父やリュカ殿下にご報告しますが、宜しいですね?」
「あぁ……どうしよう……トリスタンに戻れ、て言われたら………。」
「ラメイラ様…………。」

 ロレイラを突き飛ばした事実がある以上、レングストン公爵は、ラメイラを帰せ、と言うだろう。
 恐らく、ロレイラにはラメイラが邪魔なのだと思ったナターシャ。
 だが、ロレイラがタイタスを好きなのかは不明で、ロレイラの友人、レーチェの事もあるのでどの角度から見ていけば丸くおさまるのだろう………。

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

山に捨てられた元伯爵令嬢、隣国の王弟殿下に拾われる

しおの
恋愛
家族に虐げられてきた伯爵令嬢セリーヌは ある日勘当され、山に捨てられますが逞しく自給自足生活。前世の記憶やチートな能力でのんびりスローライフを満喫していたら、 王弟殿下と出会いました。 なんでわたしがこんな目に…… R18 性的描写あり。※マークつけてます。 38話完結 2/25日で終わる予定になっております。 たくさんの方に読んでいただいているようで驚いております。 この作品に限らず私は書きたいものを書きたいように書いておりますので、色々ご都合主義多めです。 バリバリの理系ですので文章は壊滅的ですが、雰囲気を楽しんでいただければ幸いです。 読んでいただきありがとうございます! 番外編5話 掲載開始 2/28

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

【R18】愛され総受け女王は、20歳の誕生日に夫である美麗な年下国王に甘く淫らにお祝いされる

奏音 美都
恋愛
シャルール公国のプリンセス、アンジェリーナの公務の際に出会い、恋に落ちたソノワール公爵であったルノー。 両親を船の沈没事故で失い、突如女王として戴冠することになった間も、彼女を支え続けた。 それから幾つもの困難を乗り越え、ルノーはアンジェリーナと婚姻を結び、単なる女王の夫、王配ではなく、自らも執政に取り組む国王として戴冠した。 夫婦となって初めて迎えるアンジェリーナの誕生日。ルノーは彼女を喜ばせようと、画策する。

一途なエリート騎士の指先はご多忙。もはや暴走は時間の問題か?

はなまる
恋愛
 シエルは20歳。父ルドルフはセルベーラ国の国王の弟だ。17歳の時に婚約するが誤解を受けて婚約破棄された。以来結婚になど目もくれず父の仕事を手伝って来た。 ところが2か月前国王が急死してしまう。国王の息子はまだ12歳でシエルの父が急きょ国王の代理をすることになる。ここ数年天候不順が続いてセルベーラ国の食糧事情は危うかった。 そこで隣国のオーランド国から作物を輸入する取り決めをする。だが、オーランド国の皇帝は無類の女好きで王族の女性を一人側妃に迎えたいと申し出た。 国王にも王女は3人ほどいたのだが、こちらもまだ一番上が14歳。とても側妃になど行かせられないとシエルに白羽の矢が立った。シエルは国のためならと思い腰を上げる。 そこに護衛兵として同行を申し出た騎士団に所属するボルク。彼は小さいころからの知り合いで仲のいい友達でもあった。互いに気心が知れた中でシエルは彼の事を好いていた。 彼には面白い癖があってイライラしたり怒ると親指と人差し指を擦り合わせる。うれしいと親指と中指を擦り合わせ、照れたり、言いにくい事があるときは親指と薬指を擦り合わせるのだ。だからボルクが怒っているとすぐにわかる。 そんな彼がシエルに同行したいと申し出た時彼は怒っていた。それはこんな話に怒っていたのだった。そして同行できる事になると喜んだ。シエルの心は一瞬にしてざわめく。 隣国の例え側妃といえども皇帝の妻となる身の自分がこんな気持ちになってはいけないと自分を叱咤するが道中色々なことが起こるうちにふたりは仲は急接近していく…  この話は全てフィクションです。

【R18】仲のいいバイト仲間だと思ってたら、いきなり襲われちゃいました!

奏音 美都
恋愛
ファミレスのバイト仲間の豪。 ノリがよくて、いい友達だと思ってたんだけど……いきなり、襲われちゃった。 ダメだって思うのに、なんで拒否れないのー!!

腹黒宰相との白い結婚

恋愛
大嫌いな腹黒宰相ロイドと結婚する羽目になったランメリアは、条件をつきつけた――これは白い結婚であること。代わりに側妻を娶るも愛人を作るも好きにすればいい。そう決めたはずだったのだが、なぜか、周囲が全力で溝を埋めてくる。

贖罪の花嫁はいつわりの婚姻に溺れる

マチバリ
恋愛
 貴族令嬢エステルは姉の婚約者を誘惑したという冤罪で修道院に行くことになっていたが、突然ある男の花嫁になり子供を産めと命令されてしまう。夫となる男は稀有な魔力と尊い血統を持ちながらも辺境の屋敷で孤独に暮らす魔法使いアンデリック。  数奇な運命で結婚する事になった二人が呪いをとくように幸せになる物語。 書籍化作業にあたり本編を非公開にしました。

処理中です...