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結婚式①

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 ナターシャは王宮からウエディングドレスを着て大聖堂に行く事になった。
 リュカには見せれないので、リュカとは馬車も出る時間も別である。
 大聖堂へと向かう馬車もカーテンで内側を隠し、花嫁を隠す。

「ここ迄しなくてはいけないなんて思いませんでしたわ。」

 ナターシャは思わずボヤく。
 同行しているセリナとライアも話だけは聞いていたらしく、

「娘が産まれて一番最初に会う異性はお父様になります。その名残りで名が変わり嫁いで行く娘を見る最初の異性はまたお父様。そして、花婿の所にお連れする、と聞きました。」
「大聖堂の裏口から控え室に入り、ウィンストン公爵様と夫人に、ヴェールを下ろしてもらう事になっています。」

 馬車を走らせて、貴族街から平民街へ入ると、国民の歓声が湧く。

「どなただ?皇太子殿下か?皇太子妃か?」
「どちらでもいい!おめでとうございます!」
「おめでとうございます!!」

 次々と貴族街から馬車が来るのに、その都度言っているようで、リュカの結婚には国民の最大の興味ではあるようだ。
 この日だけは、貴族街と平民街の隔たりはない。
 その分警備が大変な事だと分かる。
 大聖堂に着き、馬車のドアから大聖堂の裏口迄兵士がナターシャに背を向け、隙間無く並ぶ。
 
「皇太子妃様、お手を。」

 セリナが先に馬車を降り、ナターシャが降りるのに合わせ、ライアがドレスの裾を持って降りた。
 
「…………。」

 兵士達には声は聞かせない。
 歩く音とナターシャの香水の残り香で気配を感じる兵士達から、唾を飲む音が聞こえる。
 かなり緊張をしているのだろう。
 兵士達がナターシャを目にするのは許されていないからだ。

「……………皇太子妃様……。」
「…………。」

 ウィンストン公爵家のナターシャ付侍女達も裏口で待っていた。
 手伝ってくれるようで、重いドレスの裾をライアと分けて持ってくれる。
 侍女達は涙ぐんでいる。
 お世話してきた令嬢が嫁ぐのだから。
 しかも、国の皇妃になるという誇らしさもある。
 裏口に入り案内された部屋に入ると、既に両親が待っていた。

「…………お父様………お母様……。」

 遠目からでも分かる。
 昨夜は泣いたであろう、充血した目の両親。

「…………うん、うん……ナターシャ、美しく育ってくれた。」
「ナターシャ、綺麗よ。おめでとう。」
「お父様、お母様………。」

 ナターシャも感極まり泣いてしまう。

「あらあら、お化粧落ちてしまうわよ?」
「だ、だって………仕方ない………ではないですか……。」

 両親も涙ぐむ。

「娘を持つものではないな………。」
「娘を持つ父親の気持ちが分かってくれたではないの。息子だけだと、味わえないのよ?」
「う……うむ。………ナターシャ、リュカ殿下と幸せにな。」
「は…………い……。」

 コンコン。

「失礼致します………大聖堂の教皇をしております、ミカエル・クリスティアルと申します。皇太子妃殿下、本日はおめでとうございます。」
「クリスティアル教皇、宜しくお願い申し上げます。」
「只今、皇太子殿下及び、皇帝陛下方がおみえになっております。準備ができ次第またお呼び致しますので、妃殿下もご準備をお願い致します。」
「分かりましたわ。」
「崩れたお化粧直してもらいなさい。」

 教皇が退室し、侍女達が崩れた化粧を直すと、エマがヴェールを下ろす。

「あんなに、お転婆で口が達者なウィンストン公爵家の天使が、レングストンの女神になって………皇太子殿下と幸せにね。」
「はい。」

 まだ涙が出そうになるナターシャは涙を堪えるのだった。


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