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結婚式前日③
しおりを挟む「レーチェ様!」
「レーチェ?………て子爵家の?」
「はい、お顔に擦り傷もありますが、レーチェ様ですわ、そうですわよね?」
「…………。」
女は頷く。
何故、彼女が侍女の格好迄して、罪を犯したのかは分からないが、恐らくロレイラが絡んでいると核心した。
「レーチェ嬢、何故侍女服迄着て、大聖堂に潜り込み、ドレスを引き裂いた?」
「……………。」
「答えよ!!」
リュカが質問を始める。
しかし、何も答えないレーチェ。
ナターシャが以前見た彼女は淑やかな落ち着いた印象で、横に立つロレイラを立てて控え目な女性だった。
今はそんな印象ではなく、目に力も入らず遠くを見ているようだった。
「レーチェ、答えよ!」
「…………言いたくありません。」
「!!」
重い口が開いたと思ったら、『言いたくない』の一言。
「言わないなら投獄する事になるぞ!」
「構いません。」
「何?構わないだと?」
「皇太子殿下。」
リュカの後ろに居る皇帝とウィンストン公爵が顔を近付け何かを話ていた後に、ウィンストン公爵がリュカに声を掛けた。
「何だ?宰相。」
「その娘はこちらにお任せ下さい。私の部下に吐かせます。得意とする者が居りますので。」
「私では無理だと言いたいのか?」
リュカは怒りが込み上げていて、ウィンストン公爵にもその怒りを見せる。
「いいえ、皇太子殿下は明日は大事な日が控えて居りますから、煩わしい事は私にお任せ下されば、と。分かりましたら、直ぐご報告致します。」
ウィンストン公爵はそんな怒りさえも受け流すような冷静沈着。
「本日はもうおやすみ下さい。怒りだけは明日に持ち込まぬ用お願い致します。娘も心配そうに殿下を見ておられますよ?」
確かにナターシャは心配そうにリュカを見ていた。
リュカはナターシャを振り返り抱き締める。
「大丈夫、心配するな。」
「ちょっと、怖かっただけですよ?」
「宰相、任せていいんだな?」
「はい、勿論でございます。娘の父のブホ子爵を呼ぶように、娘は投獄し顔の怪我の手当を。」
「はっ!」
ウィンストン公爵は衛兵達に指示を出す。
「陛下、必ず患いを取り除きますので。」
「頼むぞ、宰相。無事に結婚式を挙げさせてやりたい。」
「私もでございます。」
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